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●五話 平等で甘美な褒美

許し

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 次第に英正の目が泳ぎ出し、言葉もたどたどしくなっていく。

 そうか。戦が終わって褒美を与えるまでがワンセットなのか。
 だから中断できずにゲーム内へ戻されたのかと合点していると、英正は動揺しながら話を続ける。

「私は……本音を白状すれば、華候焔様たちと同じ褒美が欲しい、です。しかし褒美だから仕方がないと、諦めから心を殺して体を委ねて欲しくありません……領主様を追い詰めたくない」

 なんて正直なんだと、聞いていて別の恥ずかしさが生まれてくる。
 しかし同時に理解もする。俺に対して一番心を重く向けている英正を、しっかり受け止めてこそ活かすことができるのだろう、と。

 才明が教えてくれたことは戯れが入っていたのかもしれないが、ここで俺が勝ち続けていくために必要なことなの は確かだ。

 戦は一人でやるものではない。
 多くの兵士を従わせ、ともに戦う将たちと命運を背負いう合う。

 少しでも深く自軍の将を理解し、なんの疑いもなく背を預け合える関係を作るためには、情を交えてしまったほうが話は早い。特に英正のように、最初から俺に好意を持っているなら尚更だ。

 他の二人は自ら動いて、望むだけ褒美を貰った。何も知らない俺にとっては、そのほうがありがたかったのかもしれない。

 今から英正に伝えなければいけないのに、緊張して喉が張り付く。
 ゴクリ、と大きく唾を飲み込んでから、俺は口をまごつかせながら必死に告げる。

「……英、正……来てくれ。今から、望みの褒美を与える……お前の、望むままに……」

「よ、よろしいのですか? 私などが、領主様と――」

「英正も、大切な俺の将だ。命をかけて俺に尽くしてくれているんだ……だから、望みに応えたい。それに英正のことを、もっと知りたい……教えてくれないか?」

 諦めでも情けでもない。これが俺の望み。

 しっかりと伝わるよう、俺は英正の目を見据える。
 今度は英正の喉が大きく動き、俺に引き寄せられるように一歩、二歩、と寄ってきた。

「本当に……いいのですか? 私を、望んで下さるのですか?」

「ああ。だから、ここへ……」

 俺は隣に来るようにと褥を叩く。
 ぎこちなく英正は寝台に上がり、俺が促した通りに隣へ来ると顔を寄せてきた。

「ありがとうございます、領主様……」

「誠人、でいい。せめて褒美を貰う時は、名前で呼んでくれ」

「……光栄です。誠人、様……」

 どこか大切に、味わうように英正は俺の名を口にしてから、知る覚悟を決めた唇へキスをした。
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