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六話 将の育成は体を張って
謎を追う者
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才明の告白に俺は目を丸くする。
俺の緊張と警戒心を解くために華候焔と一緒に俺を抱こうと提案した、とは聞いていたが……他の思惑もあったのか。
やはり掴めない男だが、こうして歩み寄りを見せようとしている今、少しは才明の本心を知ることができるのだろうか?
しっかり俺自身の目で見定めようと糸目の狐顔を見つめていると、才明は笑みを薄くした。
「私が本気で誠人様を支えようとしていると華候焔殿には伝わったからこそ、誠人様との二人の時間を許された……そうでなければ、また二人でやるぞと言い出していましたよ。無頼漢を装いながら、そんなやり方で貴方を守っているのですよ。あの御仁は」
「分かっている……いや、分かってきたと言ったほうが正しいか」
普段なら容易に言わない本音を俺は声に出す。
裏切りの常習犯という悪名に振り回されず、華候焔という人間をいくらか理解しているのが才明だ。別に答え合わせをしたい訳ではないが、わずかな共感の空気が欲しくて、思わず口にしたのかもしれない。
俺の言葉に才明がわずかに頷く。
「なかなか本当の狙いを掴ませてくれなくて、読み取るのが大変ですよ。ひとつ確かなのは、華候焔殿は誠人様に期待を持たれている。そして私も同じく……」
ゆっくりと才明は上体を倒して俺に顔を近づけ――口付ける間際で動きを止め、俺の耳元へ唇を寄せて囁いた。
「私はですね、誠人様……この世界の謎を、仕組みを、解き明かしたいのですよ」
思わず俺は息を引いて動揺を見せる。
まさか才明はこのゲームの何かを掴んでいるのか?
なぜ知ろうとする? 知的探求心が強い性格だからこそ、自分の世界が気になるのだろうか?
あくまでゲーム内のキャラクター。所詮は虚構の中の存在に過ぎない。
頭の中ではそう理解しているのに、現実の不可解なこと――行方不明の坪田のことや、『至高英雄』の存在が世に出ていないことと、何か繋がりが見えてくるのではないか? という気がしてくる。
もしかすると才明が突破口になるかもしれない。
そんな予感がしていると、才明から息を詰まらせたり、低く唸ったりする声が聞こえてくる。
しばらくして才明から聞こえてきたのは、諦めのため息だった。
「ふぅ……そのものを口に出そうとすると言えなくなりますね。含みのある言葉しか使えないなんて……すみません」
「あ、ああ。言える範囲で構わない。回りくどくなってもいいから教えて欲しい」
「……やはり訳ありの領主様は理解力が違いますね。しかしお気持ちは嬉しいですが、下手に言えば誠人様を誤解させてしまう……どうか今は口説き文句に乗せながら訴えることだけをお許しください」
まるで監視を恐れるかのように、才明は俺の頬へ口付けを送り、情事の形を取りながら呟く。
「誠人様……私は貴方の、真の味方です」
俺の緊張と警戒心を解くために華候焔と一緒に俺を抱こうと提案した、とは聞いていたが……他の思惑もあったのか。
やはり掴めない男だが、こうして歩み寄りを見せようとしている今、少しは才明の本心を知ることができるのだろうか?
しっかり俺自身の目で見定めようと糸目の狐顔を見つめていると、才明は笑みを薄くした。
「私が本気で誠人様を支えようとしていると華候焔殿には伝わったからこそ、誠人様との二人の時間を許された……そうでなければ、また二人でやるぞと言い出していましたよ。無頼漢を装いながら、そんなやり方で貴方を守っているのですよ。あの御仁は」
「分かっている……いや、分かってきたと言ったほうが正しいか」
普段なら容易に言わない本音を俺は声に出す。
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俺の言葉に才明がわずかに頷く。
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「私はですね、誠人様……この世界の謎を、仕組みを、解き明かしたいのですよ」
思わず俺は息を引いて動揺を見せる。
まさか才明はこのゲームの何かを掴んでいるのか?
なぜ知ろうとする? 知的探求心が強い性格だからこそ、自分の世界が気になるのだろうか?
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頭の中ではそう理解しているのに、現実の不可解なこと――行方不明の坪田のことや、『至高英雄』の存在が世に出ていないことと、何か繋がりが見えてくるのではないか? という気がしてくる。
もしかすると才明が突破口になるかもしれない。
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しばらくして才明から聞こえてきたのは、諦めのため息だった。
「ふぅ……そのものを口に出そうとすると言えなくなりますね。含みのある言葉しか使えないなんて……すみません」
「あ、ああ。言える範囲で構わない。回りくどくなってもいいから教えて欲しい」
「……やはり訳ありの領主様は理解力が違いますね。しかしお気持ちは嬉しいですが、下手に言えば誠人様を誤解させてしまう……どうか今は口説き文句に乗せながら訴えることだけをお許しください」
まるで監視を恐れるかのように、才明は俺の頬へ口付けを送り、情事の形を取りながら呟く。
「誠人様……私は貴方の、真の味方です」
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