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六話 将の育成は体を張って
実感が湧かないランクアップ
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◇ ◇ ◇
「……え……?」
目覚めた瞬間、寝起きでぼやけた頭が一気に起床した。
ゲーム内の自室で横になって寝ていたはずなのに、視界に広がったのは就寝前よりも広々とした室内。シンプルだった調度品は金銀の飾りや螺鈿細工が豪勢に施され、明らかに城そのものがランクアップしたのが分かった。
執務は才明と白澤に任せたが……改築の指示でも出したのだろうか? それとも条件が揃えば自動的に改築されるのだろうか?
どちらにしても、大工などの工員が入らずとも改築が叶うのだ。ここはゲームらしいなと思う。
そして心の底から安心する。
やはりここはゲームの世界であって、現実ではないのだと。
複数の男と関係を持つことを体が受け入れ、喜ぶようになってしまったのは、ゲーム内だけのこと。現実は違うのだと――。
「おはよーございますー、誠人サマー! 凄いですねー。一気に中堅領主になっちゃいましたねー」
俺の起床をいち早く感知した白澤が、元気よく部屋へ飛び込んでくる。
「あ、ああ。やはり領主としてのランクアップの影響か、これは」
「はいー。登用武将が一気に二十人を超え、財も何人かの将が誠人サマに献上して下さったので、領主としての格が上がりましたー」
登用が二十人超え? 財を献上?
一晩で変わってしまった状況に目を見張っていると、白澤から苦笑が零れた。
「実は才明が、誠人サマに本気で仕える誠意を見せたいと、貯め込んでいた財をすべて献上したんですー。そしたら華候焔も張り合って献上して、他の将たちもつられてしまって、献上合戦になっちゃったんですー」
不意に才明が『真の味方』だと言ったことが頭をよぎる。
このゲームの謎と向き合っているという点では、確かに才明は俺の味方であり同志でもある。更なる裏がなければの話だが……。
華候焔は華候焔で、俺を早く強い領主に育て上げようとしている。
恐らく二人の方向性は別なのだろうが、俺を押し上げるという目的は同じなのだろう。だから互いに協力し、俺に有利な流れへ持っていったのだと想像がつく。
このまま彼らの急ごしらえなレールに乗り、突っ走ってもいいものだろうか?
順調にゲームを攻略しているように見えて、闇の中をただ弄っているかのような状況にしか思えない。
彼らの手引きだけが頼り――このゲームを始めた時と危うさは変わっていないことを痛感しながら、俺は手早く橙色の衣装に着替えた。
華候焔が選び、贈ってくれた服。才明から渡された托生の腕輪。
……彼らの色にどっぷりと染まり切った自分に、ため息をつくしかなかった。
「……え……?」
目覚めた瞬間、寝起きでぼやけた頭が一気に起床した。
ゲーム内の自室で横になって寝ていたはずなのに、視界に広がったのは就寝前よりも広々とした室内。シンプルだった調度品は金銀の飾りや螺鈿細工が豪勢に施され、明らかに城そのものがランクアップしたのが分かった。
執務は才明と白澤に任せたが……改築の指示でも出したのだろうか? それとも条件が揃えば自動的に改築されるのだろうか?
どちらにしても、大工などの工員が入らずとも改築が叶うのだ。ここはゲームらしいなと思う。
そして心の底から安心する。
やはりここはゲームの世界であって、現実ではないのだと。
複数の男と関係を持つことを体が受け入れ、喜ぶようになってしまったのは、ゲーム内だけのこと。現実は違うのだと――。
「おはよーございますー、誠人サマー! 凄いですねー。一気に中堅領主になっちゃいましたねー」
俺の起床をいち早く感知した白澤が、元気よく部屋へ飛び込んでくる。
「あ、ああ。やはり領主としてのランクアップの影響か、これは」
「はいー。登用武将が一気に二十人を超え、財も何人かの将が誠人サマに献上して下さったので、領主としての格が上がりましたー」
登用が二十人超え? 財を献上?
一晩で変わってしまった状況に目を見張っていると、白澤から苦笑が零れた。
「実は才明が、誠人サマに本気で仕える誠意を見せたいと、貯め込んでいた財をすべて献上したんですー。そしたら華候焔も張り合って献上して、他の将たちもつられてしまって、献上合戦になっちゃったんですー」
不意に才明が『真の味方』だと言ったことが頭をよぎる。
このゲームの謎と向き合っているという点では、確かに才明は俺の味方であり同志でもある。更なる裏がなければの話だが……。
華候焔は華候焔で、俺を早く強い領主に育て上げようとしている。
恐らく二人の方向性は別なのだろうが、俺を押し上げるという目的は同じなのだろう。だから互いに協力し、俺に有利な流れへ持っていったのだと想像がつく。
このまま彼らの急ごしらえなレールに乗り、突っ走ってもいいものだろうか?
順調にゲームを攻略しているように見えて、闇の中をただ弄っているかのような状況にしか思えない。
彼らの手引きだけが頼り――このゲームを始めた時と危うさは変わっていないことを痛感しながら、俺は手早く橙色の衣装に着替えた。
華候焔が選び、贈ってくれた服。才明から渡された托生の腕輪。
……彼らの色にどっぷりと染まり切った自分に、ため息をつくしかなかった。
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