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七話 現実が繋がる時

懇親会の始まり

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   ◇ ◇ ◇

 懇親会はホテルのレストランを貸し切って行われた。

 ブッフェ形式で好きな料理を取り、飲みたいドリンクを頼む。
 堅苦しいものではなくて個人的にはありがたい。料理も美味しいと思う。

 ただ、今の俺に料理を楽しむ余裕はなかった。
 仲林アナからの動画で動揺が続ていることもあるが――。

「手が止まっているようだが、口に合わないのか?」

 向かい合って座りながら料理を堪能していた東郷さんが、俺に声をかけてくる。

 各々に料理を皿に取った後、わざわざ個室になっている所へ俺を連れ込んで食事を始める。懇親会のはずなのに、他の関係者とのやり取りを拒絶するような行動で、俺は密かに困惑していた。

 しかも東郷さんは黑のジャケットとスラックスに白のシャツ、というカジュアルながらパーティー用の出で立ちで格好いいと思う。それに対して俺は普段着の上にグレーのニットを着て誤魔化すという手抜きぶり。

 もう少し服に気遣うべきだったという後悔と、東郷さんと個室で向き合って料理を食すという特殊な事態に緊張感が半端ない。

「い、いえ、こういう場は慣れていなくて……」

「確か、まだ二十歳だったな? 社会人になれば嫌でも慣れていく。世界選手権に出るなら尚更だ」

「は、はい」

 慣れていないのは東郷さんとの距離感なのだが……。

 微妙にズレを感じながら、俺は自分の皿をきれいに食すことに専念する。
 人が増えてきたようで、耳を澄ませるとレストランのホールの賑わいが聞こえてくる。

 ピリ……と、東郷さんの気配が鋭さを見せる。

「このまま何事もなければいいが……正代君。なるべく料理を取りに行く以外はここを出ないほうがいい。いっそ料理も俺を使って食べたい物を取って来させればいい」

「そんな、東郷さんを使うなんて……っ」

「遠慮するな。俺の頼みで正代君はここへ来たんだ。それぐらいのワガママは言ってくれ」

 気配を尖らせたかと思えば、俺に向けて柔らかな微笑を送ってくる。
 まるでデートで女性をエスコートしているかのような言動だ。試合中の東郷さんからはまったく想像できない姿で、俺の胸がずっと落ち着かない。

 どう答えればいいだろうかと困っていると、こちらへ近づく足音が聞こえてくる。
 途端に東郷さんは表情を消し、俺が知っている冷ややかで感情を感じさせない顔へと変わる。

 足音の主が俺たちの部屋を覗いた瞬間、「東郷選手」と声をかけられた。

「探しましたよ。柳生田社長がお呼びです」

 髪の毛をピッチリと七三に分けた秘書らしき男性が、淡々と東郷さんへ要件を告げる。
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