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七話 現実が繋がる時

激しい動揺

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 しばらく俺は、動かなくなったスマホの画面を呆然と見つめる。

 ……なんなんだ、これは。
 最近の技術は凄いから、素人でも動画を編集して映画のような映像を作ることができる。

 きっと今見たものも、そういう類なのだろう。まさかこれが見た目通り、現実に人が消えていました――なんて考えられない。

 これは作り物だ。真実から程遠いものだ。
 ――だが、じゃあ仲林アナはどうして俺にこれを見せた? わざわざ名刺に細工をしてまで俺に見せるなんて……。

 ドクン、ドクン、と。やけに鼓動が大きく胸に響く。

 俺はぎこちなく頭を上げ、開けっ放しにしたスポーツバッグに目を向ける。

 合宿中にやろうと思って持ってきた黒いVRゴーグル。
 今から『至高英雄』をプレイして、その姿をスマホで録画すれば真実が分かる。

 幸い、ゲーム内で何日も経過しても、中断して終えるまで数分しか経たない。今すぐプレイしても夕方の懇親会には間に合う。

 だが……怖い。
 もし動画の内容が俺にも起きていることならば、俺はゲームの世界へ体ごと行っているということになる。

 ゲームで経験したことは仮想ではなく、俺自身の体ですべてを体感したとなれば――三人の男に戦の褒美として体を許し、簡単に喘いで激しく体が悦んできたことが、俺の現実だったということに……。

「そんな、あり得ない」

 思わず動揺を呟き、小さく首を振って浮かんでしまった疑念を消そうとする。
 しかし一度気づいてしまったことは晴れることなく、俺の頭の中にベタリと張り付いてしまう。

 今すぐ確かめなければ――。
 ふらつきながらも俺はスポーツバッグへ手を伸ばす。

 華候焔にも、才明にも、英正にも、この体は抱かれてしまったなんて……。
 ゲームだから割り切れていた褒美の手段。もし現実の体でゲーム世界で行動していると知っていたなら、抱かれることを受け入れはしなかった。

 ……そうなっていたなら、俺はとっくにゲームで敗れて太史翔の奴隷になっていた。
 この現実の体で心身の尊厳を奪われて、敗者であり続けていた。

 彼らに抱かれなければ、今の俺はなかった。
 なぜ抱いたと恨むよりも、彼らのおかげで自由を守れたと喜ばなければいけない。

 なのに今、無性に責めたくてたまらない。
 体を褒美にすることを始めてしまった華候焔を――。

 ――コンコン。
 ノック音に俺はハッと我に返る。

 もしかしてコーチだろうかと、一旦深呼吸して心落ち着かせてから「はい」と返事をし、部屋のドアを開ける。

 前に立っていたのは東郷さんだった。

「そろそろ懇親会の時間だから呼びに来た。俺と一緒に行くぞ」

 もうそんな時間だったのか? いや、まだ始まるには時間が……。
 頭の中で情報の整理が追い付かず、俺はまごついてしまう。

 ガシッ、と東郷さんの雄々しい手が俺の手首を掴んだ。

「早めに行ったほうが良い場所を取れる。厄介な酒飲み連中の近くに座りたくはないだろ?」

 東郷さんなりの気遣いに、ほんの少しだけ俺に落ち着きが戻る。
 それでも喉が貼り付いて声が出しにくく、俺は頷いて意思を伝えた。

 懇親会が終わったら、すぐにゲームを立ち上げようと覚悟を決めながら――。
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