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九話 新たな繋がり
強く残ったままの余韻
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◇ ◇ ◇
ゲームを中断してゴーグルを外した後、俺はベッドの上でぐったりと横たわる。
体は回復している。もしケガをしても中断さえできれば、完全に回復して普通にVRゲームを楽しんだと錯覚させられるのだろう。
しかし、どうやら精神面の疲れは回復できないらしい。
あれだけ華候焔に深く愛されて、身も心も感じ入りながら気を失い、眠りについてしまった。そんな状態で中断したせいか、現実に戻っても頭の中がフワフワとしてしまい、情事の後の心地良さに身を委ねてしまう。
手加減してあの調子だ。
強化合宿を終えた後、遠慮しなくてもいいとなったらどうなってしまうんだ?
一瞬本気の華候焔と交わることを想像してしまい、俺は全身を熱くさせる。
そして慌てて首を振り、少しだけ理性と気力を取り戻す。
体を起こして枕元に置いておいたスマホで時間を確認すれば、部屋へ戻ってゲームを始めてから十分ほどしか経過していない。
これなら午前の練習開始までに、まだ時間がある――仲林アナの所へ行くことができる。
俺は気だるい体を起こし、両頬を軽く叩いて気合を入れる。
どれだけ華候焔に愛されたとしても、自分の目的を忘れてはいけない。
行方知れずになった坪田を探し出すこと。
この『至高英雄』の覇者となって、理不尽なゲームを終わらせること。
決して領主として認めてくれる男たちと、愛欲の日々を送るためにゲームを続けているのではない。
大きく深呼吸してから立ち上がり、部屋を出ようとする。
――不意に華候焔の囁きと、体の奥深くまで繋がった感触が俺の中によみがえる。
『また後で、な。あっちでも愛してやる――』
……現実でも華候焔に抱かれてしまったら、俺はどうなるんだ?
もう数多くの快楽を体は刻み、心は強く掴まれてしまっている。
手を伸ばされたなら避けられない。きっとそのまま受け入れ、悦んでしまう自分しか想像できない。
きっと現実の華候焔はそれを望むし喜ぶだろう。
だが――なぜだろうか。喜びながらも心が離れていきそうな気がするのは。
受け止めることと、流されることは違う。
華候焔は俺に受け止めてもらいたいのであって、愛されるまま溺れて欲しいとは望んでいない。
強くあることを忘れないようにしなければ……。
情事の余韻から自分を引き離し、俺はしっかりと地に足を着ける。
ドアを開けて廊下に出る頃には、快楽に浮ついていた自分は成りを潜め、試合に挑むような面持ちで仲林アナの所へ向かうことができた。
ゲームを中断してゴーグルを外した後、俺はベッドの上でぐったりと横たわる。
体は回復している。もしケガをしても中断さえできれば、完全に回復して普通にVRゲームを楽しんだと錯覚させられるのだろう。
しかし、どうやら精神面の疲れは回復できないらしい。
あれだけ華候焔に深く愛されて、身も心も感じ入りながら気を失い、眠りについてしまった。そんな状態で中断したせいか、現実に戻っても頭の中がフワフワとしてしまい、情事の後の心地良さに身を委ねてしまう。
手加減してあの調子だ。
強化合宿を終えた後、遠慮しなくてもいいとなったらどうなってしまうんだ?
一瞬本気の華候焔と交わることを想像してしまい、俺は全身を熱くさせる。
そして慌てて首を振り、少しだけ理性と気力を取り戻す。
体を起こして枕元に置いておいたスマホで時間を確認すれば、部屋へ戻ってゲームを始めてから十分ほどしか経過していない。
これなら午前の練習開始までに、まだ時間がある――仲林アナの所へ行くことができる。
俺は気だるい体を起こし、両頬を軽く叩いて気合を入れる。
どれだけ華候焔に愛されたとしても、自分の目的を忘れてはいけない。
行方知れずになった坪田を探し出すこと。
この『至高英雄』の覇者となって、理不尽なゲームを終わらせること。
決して領主として認めてくれる男たちと、愛欲の日々を送るためにゲームを続けているのではない。
大きく深呼吸してから立ち上がり、部屋を出ようとする。
――不意に華候焔の囁きと、体の奥深くまで繋がった感触が俺の中によみがえる。
『また後で、な。あっちでも愛してやる――』
……現実でも華候焔に抱かれてしまったら、俺はどうなるんだ?
もう数多くの快楽を体は刻み、心は強く掴まれてしまっている。
手を伸ばされたなら避けられない。きっとそのまま受け入れ、悦んでしまう自分しか想像できない。
きっと現実の華候焔はそれを望むし喜ぶだろう。
だが――なぜだろうか。喜びながらも心が離れていきそうな気がするのは。
受け止めることと、流されることは違う。
華候焔は俺に受け止めてもらいたいのであって、愛されるまま溺れて欲しいとは望んでいない。
強くあることを忘れないようにしなければ……。
情事の余韻から自分を引き離し、俺はしっかりと地に足を着ける。
ドアを開けて廊下に出る頃には、快楽に浮ついていた自分は成りを潜め、試合に挑むような面持ちで仲林アナの所へ向かうことができた。
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