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十話 至高への一歩

溢れる自信

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   ◇ ◇ ◇

 城の外へ出ると、いつの間にか活気あふれる姿に成長した城下町に俺は目を見張る。

 領主としての格がランクアップしたおかげなのだろう。
 明らかに澗宇と同盟を結ぶ前よりも華美な建物が造られ、行き交う人の数も多い。

 前回といい今回といい、こんなに急激に変わるものなのかと思っていると、白澤が俺の前に浮かびながら、誇らしそうに空を舞った。

「いやーすごいですよ、誠人サマー! 大量の資材と威力のある武器の生成で、ものすごく領土が発展しましたー。総合力の跳ね上がり方がすごいですよー。ちーと入ってますねー」

「当然ですよ、鉄工翁が張り切って例の弓を作っていますからね。伝説級の強武器が、一刻の間にいくつも武器庫へ増えていくような状況ですから」

 馬に乗った才明も白澤同様に誇らしげに笑う。心なしか胸を張る姿が、できたことを褒めてくれるのを待つ子供のように見えてくる。

「才明、これから色々と仕込むと言っていたが、どうするつもりなんだ?」

 俺が一回り大きな黒馬にまたがって才明に尋ねると、背後でフッという華候焔の笑いが聞こえてきた。

「まさか今から敵の領地に攻め込む、なんて言わんよな? もしそうなら喜んで暴れてやるがな」

 ……華候焔、なぜ俺と一緒に馬に乗るんだ? 背中が密着して落ち着かないんだが。

 非常事態でもないのだから、自分の馬に乗ればいいのでは?
 そう伝えたくて背後を見れば、華候焔と視線が合う。

 ニヤリと笑うと、華候焔は離れるどころか俺の腹部に腕を回して囁いてきた。

「これだけ急に力をつけたら、太史翔以外の領主もなりふり構わず誠人を狙ってくる。暗殺されないための厄除けと思ってくれ」

 しっかり考えてのことだったと知り、俺はハッとしてから短く頷く。
 どうやら才明と白澤はそのことを理解していたらしく、より密着した俺たちを見ても否定はしなかった。ただ、

「誠人サマに変な虫がつかなくなるのはいいですけれど、特大の変な虫が取りついちゃって大変ですー。外でいかがわしいことはしないで下さいー」

「安心しろ。さすがに外で見せつける趣味はないから」

「えー……信じられませんー」

「俺だけに見せてくれる顔を、他の奴らに見せるなんて面白くないだろ。まあ誠人様が我慢できなくなって俺を求めてくれるなら、その時は応じるしかないがな」

「いかがわしいこと仕掛ける気マンマンじゃないですかー! 誠人サマの名誉のために、それだけは止めさせてもらいますからねー!」

 俺を挟んで華候焔と白澤が恒例の言い合いを始める。至近距離でやめてくれ。耳が痛くなってくる。

 思わず顔を引きつらせていると、上機嫌なままの才明が肩をすくめて一笑した。

「戯れはそこまでにして行きますよ? あまり遊ばれていると、本日は私が誠人様の褒美を独占することになりますから」

 ピタッと華候焔と白澤が身を強張らせ、言い合いを収める。

「……そんなに自信があることを今からしでかしてくれるのか?」

 どこか挑発じみた華候焔の問いかけに、才明は大きく頷いた。

「はい。今からお見せしますから、どうか楽しみにして下さい」

 ぶれない才明の自信に、俺も目を見張るばかりだった。
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