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十一話 大きな前進

●だから強くなる

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 俺と自身の身体を軽く拭くと、東郷さんはベッドに向かう。
 これから続きをするのかと思っていたが、俺を横たわらせた後、頭を撫でながら東郷さんが問いかけてきた。

「正代君、VRのゴーグルはどこに?」

「スポーツバッグの中に……クローゼットを開けて、一番左側にある――」

「ああ、これか」

 淡い浮遊感に浸りながら答えると、東郷さんは俺のゴーグルを手にして戻ってくる。

 ベッドに腰かけ、俺を覗き込んでくる東郷さんの顔に笑みが浮かぶ。
 華侯焔に比べて東郷さんは表情が薄い。それでも滲み出る不敵さが同じで、俺の中で二人が重なる。

 一瞬見惚れてしまうが、いったい何をする気なのだろうかと首を傾げてしまう。
 そして二人が同じであると理解できたからこそ、嫌な予感がした。

「あの、東郷さん……何をするつもり、ですか?」

 自分の頬が引きつってしまうのが分かる。俺の心が読めたとばかりに、東郷さんは小さく吹き出す。

「せっかく同室なんだ。君を存分に堪能したいと思って」

 言いながら俺の頭にゴーグルを装着させ、視界を遮ってしまう。

 何も見えない中、東郷さんが俺の身体に覆い被さってくる気配を感じ、肌に疼きを覚える。

 視覚を奪われると全身が過敏になる。肌が触れ合っていない所でも、気配や熱を感じて鼓動が逸る。息遣いで耳は感じ、吐息に甘くざわめく。

 今からそういうことをしたいのだろうか? と考えて、ふと思う。華侯焔は俺を淫らにするために、執拗に身体を重ねてきた。嬉々として俺に快楽を与え、普通に生きていくだけでは知り得ないことを教え込んだ。

 そうだ。華侯焔がそうなら、東郷さんも――。

 気づいたその時、唇が柔らかく塞がれる。
 口内に差し込まれた舌が、クチュクチュと音を立てて俺の身体と意識を見出していく。

 ――ツゥン、という音がした気がした。

 身体が弄られ、堕ちながら意識が途絶えようとしていく。

 あっちですぐに会えると分かっている。
 それでも刹那も離れたくなくて、俺は東郷さんに抱きつく。

 誰も敵わないこの人が、俺をここまで求めてくれる。
 応えたい。俺にその価値も、力もあるか分からないが――いや、だから強くなるんだ。

 この人と対等になりたくて始めたゲーム。
 思い描いていた形とはあまりに違ったけれど――。
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