225 / 343
十一話 大きな前進
●だから強くなる
しおりを挟む俺と自身の身体を軽く拭くと、東郷さんはベッドに向かう。
これから続きをするのかと思っていたが、俺を横たわらせた後、頭を撫でながら東郷さんが問いかけてきた。
「正代君、VRのゴーグルはどこに?」
「スポーツバッグの中に……クローゼットを開けて、一番左側にある――」
「ああ、これか」
淡い浮遊感に浸りながら答えると、東郷さんは俺のゴーグルを手にして戻ってくる。
ベッドに腰かけ、俺を覗き込んでくる東郷さんの顔に笑みが浮かぶ。
華侯焔に比べて東郷さんは表情が薄い。それでも滲み出る不敵さが同じで、俺の中で二人が重なる。
一瞬見惚れてしまうが、いったい何をする気なのだろうかと首を傾げてしまう。
そして二人が同じであると理解できたからこそ、嫌な予感がした。
「あの、東郷さん……何をするつもり、ですか?」
自分の頬が引きつってしまうのが分かる。俺の心が読めたとばかりに、東郷さんは小さく吹き出す。
「せっかく同室なんだ。君を存分に堪能したいと思って」
言いながら俺の頭にゴーグルを装着させ、視界を遮ってしまう。
何も見えない中、東郷さんが俺の身体に覆い被さってくる気配を感じ、肌に疼きを覚える。
視覚を奪われると全身が過敏になる。肌が触れ合っていない所でも、気配や熱を感じて鼓動が逸る。息遣いで耳は感じ、吐息に甘くざわめく。
今からそういうことをしたいのだろうか? と考えて、ふと思う。華侯焔は俺を淫らにするために、執拗に身体を重ねてきた。嬉々として俺に快楽を与え、普通に生きていくだけでは知り得ないことを教え込んだ。
そうだ。華侯焔がそうなら、東郷さんも――。
気づいたその時、唇が柔らかく塞がれる。
口内に差し込まれた舌が、クチュクチュと音を立てて俺の身体と意識を見出していく。
――ツゥン、という音がした気がした。
身体が弄られ、堕ちながら意識が途絶えようとしていく。
あっちですぐに会えると分かっている。
それでも刹那も離れたくなくて、俺は東郷さんに抱きつく。
誰も敵わないこの人が、俺をここまで求めてくれる。
応えたい。俺にその価値も、力もあるか分からないが――いや、だから強くなるんだ。
この人と対等になりたくて始めたゲーム。
思い描いていた形とはあまりに違ったけれど――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
394
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる