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十二話 真実に近づく時

潤宇の元へ続く道

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   ◇ ◇ ◇

 翌日、俺たちは本城を出立した。

 兵は連れていかず、俺と華侯焔、才明、英正、白鐸のみの移動。
 一日でも早く潤宇の元に向かいたくて、俺たちは馬を駆けさせた。

 ――白鐸は巨大な毛玉になっても身体は軽いようで、俺たちに合わせて空を飛びながらついて来た。

「……目立つな、おい」

 華侯焔が馬を走らせながら空を見上げ、顔を引きつらせる。
 声色から、どうにかならないのか、と言いたい気持ちが伝わってくる。しかし敢えて言わないのは、低空飛行では木々にぶつかり余計に目立つのが想像できるからだろう。

 才明も同じ気持ちなのだろう。苦笑しながら白鐸に視線を向ける。

「良い目印になりますね。味方からも敵からも、すぐ見つけられてしまいますね。まあ味方陣営を繋ぐ街道を進みますから、敵襲の心配は少ないですが」

 俺たちが領土を広げたことで、いくつもの地点で潤宇の領土と隣り合うことになっている。

 現在『至高英雄』の舞台である大陸の南側を、潤宇と俺たちが領土を占め、北にある広大な地を格付け一位である志馬威が支配している。

 二位の尊朔は大陸の東側の地を有しているが、上位三人の中では領地の規模は小さい。大陸の中央や西側は現在も生き長らえている領主たちが陣取っているが、いずれも志馬威か尊朔と同盟を結び、実質属国化していると才明が教えてくれた。

 元々は上位三人が自分たちの領地を治め、互いに睨み合って膠着状態にあった。

 そんな中に俺は参加することになり、風穴を開けようとしている。
 生半可なことでは覆らないだろう現状に、己のすべてをかけて挑まなければ。

 心の中で俺が意気込んでいると、

「んー? 何かワタシのことを言いましたかー?」

 上から白鐸の声が降ってくる。なんという地獄耳。間延びした声に俺の肩から力が抜ける。

 馬を走らせながらの小さな変化。それでも華侯焔の目は気づいてしまう。

「別になんでもないが、お前の声で誠人様の気が楽になったみたいだ」

「そうなんですかー? お役に立てたなら良かったですー」

「役に立ってるから、歌でも歌って和ませて差し上げろ。俺たちも笑える何かが欲しいから」

「笑われるために歌えるワケないでしょー! まったく華侯焔、アナタときたら――」

 天と地で華侯焔と白鐸のいつものやり取りが始まってしまい、真面目な英正ですら苦笑が浮かび始めてしまう。

 俺をリラックスさせようとしてのことなのが分かり、こんなことでも胸の中が熱を帯びる。

 些細なことでも支えようとしてくれる華侯焔に、頼もしさを覚えてならない。
 何があっても華侯焔が――東郷さんが力になってくれる。才明、英正も。

 しかめていた顔を手で叩き、俺は心を切り替えた。

 ――この後、白鐸は本当に歌い出した。意外と美声で驚いたが、一帯に響き渡ってしまうほどの大声で俺を称える歌。恥ずかしくて仕方がなかった。
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