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十二話 真実に近づく時

変化

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 何も知らない芭張が顔を出して英正たちに攻撃されないよう、先に俺が壁から顔を出す。

 元の世界は夜のままで、俺が姿を表したことで待機していた三人が一様にハッとした顔になる。

「誠人様、いかがでしたか!?」

 真っ先に溢れ出る好奇心を抑えられない才明が尋ねてきた。

「詳細は後で話すが、実は話を聞かせてくれる者と出会って、今、俺の後ろにいるんだ」

 話を言い終わる前に、侶普から威圧感が漂い出す。
 目を向けてみれば、腰の剣を抜こうと鞘に手をかけていた。

「もっと慎重な方だとお見受けしていましたが……いったい誰を連れて来ようとしているのですか?」

 確かに警戒されてもおかしくはない。しかし何も知らないからこそ、偏見を持たずに向き合いたい。

 俺は臆することなく侶普に告げる。

「あちらの世界を望遠鏡で見てきた。『至高英雄』とは明らかに違う世界が広がっていたが、そこでトカゲの魔物らしき者と出会ったんだ。お互いに知りたいことがあるからと、情報交換の約束を交わした。領主として違える訳にはいかない」

 魔物と聞いた瞬間、侶普の耳がピクリと大きく動く。
 険しい表情を見せる中、俺を庇うように英正が前に立ち、侶普に向き合う。

「何かあれば私が必ず止めてみせます。侶普様、どうかお許しを」

 ジッと俺たちを見つめた後、侶普は不本意そうにしながらも頷いた。

「分かりました。魔物の事情もこちらである程度は把握しています。ここを訪れる魔物が、いずれも知能の高い者だということも……話は砦にてうかがいましょう」

 侶普の許可が出て、内心ホッと胸を撫で下ろす。
 これで姿を現した途端に、芭張が瞬殺される未来は免れた。俺は後ろを振り向き、手を振って壁を通るように促す。

 俺が全身を『至高英雄』の世界に戻した後、芭張もやってくる。

 身体が壁を通り抜け、こちらの世界に移動した途端、俺は大きく目を見張った。

 二メートルは超えているだろう長身に、面長の顔。細く吊り上がった目。異様に長い手足。中華の民のような革服に、肩まであるさらりとした深緑の髪。

 トカゲ人間だったはずの芭張の姿が、人の姿へと変化していた。

 芭張は周りを見渡して侶普の姿に気づくと、身体の大きさの割に小さな口をキュッと引き上げた。

「おおっ、このような所で高名なる侶普殿に出会えるとは! なんと幸先の良いことか……誠人殿、そんなに驚いた顔をしてどうした?」

「いや、その、まさか人の姿に変わるとは思わず……」

「この異界に入ると、勝手に人の形になってしまうのだ。人間が入れば容姿が変わる。まるで異邦を隠すように」

 さも当然という口調で芭張が教えてくれる中、侶普が短く頷く。

「彼の言う通りです。この世界に入る者は、『至高英雄』の世界観に沿った姿になります。どうやらそのような力が働いているようなのです」
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