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十二話 真実に近づく時

魔物の事情

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「俺の独断で連れて来てしまい、申し訳ない。彼は芭張。向こう側の世界で出会った魔物なんだ」

 澗宇は小さく頷くと、柔和な笑みを浮かべながら芭張に顔を向けた。

「芭張、我が領土によくお出で下さいました。私が領主の澗宇です。類稀な来訪者を、心から歓迎致します」

 おもむろに芭張が一歩進み出ると、その場に膝をついて拝手する。

「お会いできて光栄です。我が同胞たちがとても世話になっていると言っておりました。どうか我らが悲願のため、しばしの滞在を許して頂きたく……」

「喜んで。よろしければ食客として迎えさせて頂ければと思いますが、いかがでしょうか?」

「なんと! 願ったり叶ったりですな。ぜひお言葉に甘えさせて頂きたい」

 詳しい事情も芭張の人柄も、何も知らぬまま澗宇はあっさりと芭張を中に取り込んでしまう。

 なんという迷いのなさ。俺が内心驚いていると、華侯焔が澗宇に尋ねる。

「そんなにすぐ決めていいのか? とんでもない悪漢だったらどうするんだ?」

「問題ありません。もし悪しき者でしたら、誠人様も侶普も彼を連れては来ないでしょうから。それに、彼らには切実な目的がありますから、問題を起こしてこの世界に居られなくなる訳にはいかない……違いますか、芭張?」

 話を振られて芭張の表情が引き締まり、重い頷きを見せてくる。

「ご存知でしたか。我らが主がこの異界のどこかに捕らわれ、行方知れずとなっております。だから我らはこの異界に入り、主を探しているのです」

「魔物の主ということは、魔王と考えていいのだろうか?」

 俺が零した質問に、芭張はしっかりと頷いた。

「厳しくも情け深い、我らの王……この異界が生まれた四年前に、別世界から来た勇者と魔導士にやられ、姿を消してしまわれたのです。主の魔力は感じるので、異界でまだ生きているのは確かなのですが――」

 魔王の次は、勇者と魔導士。中華風戦闘シミュレーションの前は、異世界ファンタジーのロールプレイングゲームだったのか?

 話だけを聞けば完全にゲームの話。だが、俺たちにとっては厄介な現実だ。
 創作だと思いたくなる理性を押さえ、俺は努めて情報を落ち着いて受け止める。

 魔王を倒した後に生まれた『至高英雄』の世界。
 未だに行方知れずのままな魔王。

 まったく関係がないとは思えない。むしろ――。

「そうなると、この世界を維持するために魔王が捕らわれている可能性がありますね」

 俺が考えていたことを、才明も口にする。
 鈍いながらもはっきりと澗宇は頷き、さらなる答えを伝えてくれた。

「ええ、間違いないと思います。そして居場所は大陸の北方のいずれか……志馬威が治める地の可能性が高いと睨んでいます」
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