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十三話 裏切りの常習犯

羽勳の正体

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 大きな扉がゆっくりと閉まり、部屋に静寂が訪れる。
 こちらを見上げる羽勳と目を合わせながら、俺は尋ねた。

「羽勳、俺は澗宇の元でこの世界の真実の一端を知った。外の世界から魔物がこちらの世界に来て、魔王を探していると聞いたのだが……羽勳は魔物ではないか?」

 魔物。この単語を聞いた瞬間、羽勳の瞳が丸くなって動揺を見せる。

 強張ってしまった表情と身体。一気に緊張と警戒が羽勳から放たれる中、表涼が声を上ずらせながら訴えてきた。

「彼は人ならざる者ですが、誠人様を仇なす者ではありません! 比類なき力を振るいながら、味方を傷つけまいとする優しさも持ち合わせております。ですから、どうか――」

「安心してくれ、羽勳、表涼。俺は確認したかっただけで、魔物を排除したい訳じゃない。むしろ配下にいてくれたらと思っていたほどなんだ」

 俺の話を聞いて、羽勳と表涼から力みが消える。正体を暴かれて排除される不安がなくなり、羽勳の口元に笑みが浮かぶ。

「それでしたら良かったです。本当は目立たないために力を抑えていたのですが、表涼が他の者に奪われると思ったら我慢できず、つい本気を出してしまいました」

「まったく……一度タカが外れてしまったら、閨でも本性を見せるようになって大変でした。一人を相手にするだけで手一杯だなんて不覚です」

 不満げに表涼がぼやくが、そもそも複数人を相手にするのは当たり前じゃない、と言いたくてたまらない。だが、それを口にすれば俺のしていることはどうなんだ、という話になる。

 この世界でやっていくには必要なことなんだと自分に言い聞かせてから、俺は羽勳に尋ねた。

「羽勳は魔王の居場所は掴めているのか?」

「いえ、残念ながら……私たちの仲間が大陸全土に散らばり、探しているのですが、未だに見つけられていません」

 悔しげに唸る羽勳に、才明が「憶測ですが」と話を切り出した。

「今回私たちは、この世界を作った魔導士を捕らえました。志馬威の手の者です。もしかすると彼が結界を張り、魔王の気配を隠しているかもしれません」

「つまり、その者を尋問して居場所を吐かせれば――」

「それは難しそうですね、なかなかの曲者ですから。しかし、ここまで存在を隠しているならば、それだけ奪い返されては困るのでしょう。ですがら守りが非常に手厚い所を探れば、もしかすると……」

「なるほど。ならば、これから志馬威の領土を攻めていけば、魔王様の元に辿りつけそうですね」

 羽勳の目がギラリと光る。必ずやり遂げるという気概を溢れさせると、俺を見上げたまま拝手した。

「これから志馬威と戦うのであれば、我が同胞たちを呼び寄せ、誠人様を援護させます。ぜひ共闘させて頂くことをお許し頂きたい」

 格付けニ位を捻じ伏せた羽勳のような力を持った者たちとの共闘――願ってもないことだった。

「もちろんだ。準備が整い次第、俺は志馬威に挑む。それまでの間に呼び寄せて欲しい」

 俺が大きく頷いて歓迎を示すと、羽勳は歓喜に表情を輝かせながら頭を下げた。

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