俺はVR中華風戦闘SLGで、体を褒美に覇者を目指す

天岸 あおい

文字の大きさ
296 / 345
十三話 裏切りの常習犯

城外の光景

しおりを挟む



 才明とともに城門へ向かうと、次第に戦いの声が聞こえてきた。
 数多の怒号に叫び、悲鳴――心なしか悲鳴が目立っているような気がする。

 そして城門を出た瞬間、俺は目前の光景に息を飲む。
 城下町が戦場にでもなった後のようにボロボロだ。人の気配もなく、通りを風が虚しく吹き抜けていく。

「これは……っ」

 俺が愕然としていると、馬をこちらに引きながら教えてくれた。

「華侯焔が一人で城を落とした名残りです。目撃した者の話では、誠人様を肩に担いで無双していたそうですよ」

「片手で城を陥落、か……」

 現実離れした強さが味方ではなく、敵になると考えるだけで背筋が凍りつく。

 それでも俺は馬に乗り、手綱を握って覚悟を見せる。
 少し遅れて才明も別の馬に乗り、俺に向けて頷いた。

「本気を出さずして、コレですからね。技をいくつも取得していますし、知恵も回る……まともに戦って勝てる相手ではありません。どうかくれぐれも忘れないで下さい」

「ああ。英正がいるなら、俺との合わせ技で攻めて撹乱してみようと思う。その間に羽勳と才明で隙を突いて欲しい」

 言いながら、これでも厳しいだろうという気はする。だが、今できるすべてで対峙するしかない。

 俺が馬を走らせようとした時、才明が「誠人様!」と呼びかけてきた。

「私の力は……必要ですか?」

 言葉通りに捉えるなら、その通りだという答えだ。
 だが才明が言いたいのは普通の力ではなく、領主と心を通わせることで生み出せる合わせ技のことだろう。

 俺は才明に振り返り、笑ってみせた。

「無理はしなくていい。才明ができることをして欲しい」

 少しでも力は欲しいが、想いを無理強いさせたくはない。
 才明は軍師だ。技などなくとも、兵たちに指示を出したり、戦略を練ったりしてくれるだけでも頼もしい。才明がいなければ、ここまで残り続けることはできなかった。

 目が合った瞬間、才明が目を開く。糸目を開いた奥の瞳は揺れながらも、俺を真っ直ぐに見据えようとしている。

 そうして俺が「行くぞ、戦場へ」と声をかけると、才明はぎこちないながらも「はいっ!」と馬を走らせて先行する。その後ろを俺は追いかけ、戦場へと向かった。

 きっと激戦になるだろう。もしかすると全滅するかもしれない。

 考えたくはないが、覚悟するしかなかった。
 俺は手綱を握り込みながら、手の平に爪喰い込ませる。その鋭い痛みが自分を奮い立たせてくれた。

 次第に目の前に開けた場所と、土煙が見えてくる。

 胸が逸る。早く会いたいとも、怖いとも思いながら、俺は才明とともに駆けていった。
 
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? 夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)は、見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良ワーウルフの悪友(同級生)まで……なぜかイケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、異世界学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

処理中です...