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十三話 裏切りの常習犯
城外の光景
しおりを挟む才明とともに城門へ向かうと、次第に戦いの声が聞こえてきた。
数多の怒号に叫び、悲鳴――心なしか悲鳴が目立っているような気がする。
そして城門を出た瞬間、俺は目前の光景に息を飲む。
城下町が戦場にでもなった後のようにボロボロだ。人の気配もなく、通りを風が虚しく吹き抜けていく。
「これは……っ」
俺が愕然としていると、馬をこちらに引きながら教えてくれた。
「華侯焔が一人で城を落とした名残りです。目撃した者の話では、誠人様を肩に担いで無双していたそうですよ」
「片手で城を陥落、か……」
現実離れした強さが味方ではなく、敵になると考えるだけで背筋が凍りつく。
それでも俺は馬に乗り、手綱を握って覚悟を見せる。
少し遅れて才明も別の馬に乗り、俺に向けて頷いた。
「本気を出さずして、コレですからね。技をいくつも取得していますし、知恵も回る……まともに戦って勝てる相手ではありません。どうかくれぐれも忘れないで下さい」
「ああ。英正がいるなら、俺との合わせ技で攻めて撹乱してみようと思う。その間に羽勳と才明で隙を突いて欲しい」
言いながら、これでも厳しいだろうという気はする。だが、今できるすべてで対峙するしかない。
俺が馬を走らせようとした時、才明が「誠人様!」と呼びかけてきた。
「私の力は……必要ですか?」
言葉通りに捉えるなら、その通りだという答えだ。
だが才明が言いたいのは普通の力ではなく、領主と心を通わせることで生み出せる合わせ技のことだろう。
俺は才明に振り返り、笑ってみせた。
「無理はしなくていい。才明ができることをして欲しい」
少しでも力は欲しいが、想いを無理強いさせたくはない。
才明は軍師だ。技などなくとも、兵たちに指示を出したり、戦略を練ったりしてくれるだけでも頼もしい。才明がいなければ、ここまで残り続けることはできなかった。
目が合った瞬間、才明が目を開く。糸目を開いた奥の瞳は揺れながらも、俺を真っ直ぐに見据えようとしている。
そうして俺が「行くぞ、戦場へ」と声をかけると、才明はぎこちないながらも「はいっ!」と馬を走らせて先行する。その後ろを俺は追いかけ、戦場へと向かった。
きっと激戦になるだろう。もしかすると全滅するかもしれない。
考えたくはないが、覚悟するしかなかった。
俺は手綱を握り込みながら、手の平に爪喰い込ませる。その鋭い痛みが自分を奮い立たせてくれた。
次第に目の前に開けた場所と、土煙が見えてくる。
胸が逸る。早く会いたいとも、怖いとも思いながら、俺は才明とともに駆けていった。
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