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十三話 裏切りの常習犯

死地へ向かう

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 城下町を出てすぐに広がったのは、草ひとつ生えない荒野。
 その先に立ち込める土煙の中、槍や剣を持った人影たちがぶつかり合っている。

 しかし、どちらの陣営もどこか腰が引けているように見える。
 通常の戦場とは様子が違うことを肌で感じ取っていると、上空から声が降ってきた。

「誠人サマー! ご無事で良かったですー! 今、すごく大変なことになってて――」

「白鐸、戦況は?」

「華侯焔が大暴れして、手がつけられないんですー! 英正と羽勳が頑張ってるんですけど、傷ひとつ付けられなくて……ちーとすぎるんですよ、あの情け知らずの裏切り常習犯はー! 今まであれだけ偉そうなこと言っておきながら信じられないですー! 大体あの裏切り者はいつも――」

 悲鳴とも嘆きとも取れるような大声で白鐸がわめく。華侯焔が完全に敵に回ったせいで、本音の悪態が次々と出てきてしまう。

 白鐸の苛立ちをすべて聞く時間はない。俺は才明に向けて声を放つ。

「このまま俺は英正たちと合流する! 才明は後方に回って、味方の立て直しを!」

「いえ、私もともに向かいます! あの御仁に本気を出されては、戦場にいる限り、どこにいても危ういかと……それならば領主である誠人様の近くで、お役に立ちたく存じます」

「……感謝する」

 軍師である才明は、個の武力は期待できない。コンパウンドボウを得物としているから、遠距離攻撃で援護はできるか、それは通常の武将の時だ。華侯焔には通じない。

 それでも俺とともに死地へ向かうのは、ここで俺が討たれれば、逃げても無駄だと判断したからだろう。

 一蓮托生。領主である俺が倒れても、軍師の才明を失っても、先はない。
 俺のために作られた英正や表涼も、俺が負ければ存在する意義を失う。

 絶対に負けられない。
 覚悟をより強く持ちながら、俺は戰場へ飛び込んでいく。

 人影の顔が見えるほどに近づいた時、俺は声を張り上げた。

「皆、助けに来てくれて感謝する! よくここまで粘ってくれた。今から敵将を討つ。もう少しだけ耐え忍んでくれ!」

 兵たちが疎らにこちらを見て、俺に気づいて表情を変えていく。

 味方陣営は明らかに表情を輝かせ、戦意を一気に回復させる。
 そして志馬威側の兵たちも、なぜか安堵の表情を見せる。

 敵兵たちが武器をぶつけ合うのをやめて、引き下がっていく。
 そうして生まれていく道の先は、特に土煙がひどく、時折バチィッ、と青白い稲妻のようなものが走っていた。

「誠人サマー、これをどうぞー」

 白鐸が空から竹砕棍を落としてくる。
 俺はそれをしっかりと受け取り、前を睨む。

 あれは英正の獣神化だ。つまり、今あの場所で華侯焔と戦っている。

 俺は息を飲み込んだ後、馬を疾走させ、彼らの元に向かった。
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