不信の獣王は囚われの吟遊姫に愛を乞う

天岸 あおい

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●そして私は奪われる

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「私はな、呪いを受けたのだ。夜にしか大人になれぬ呪いを……聞いているかサティア?」

「ぁ……ぁ、ぁぁ……ッ……」

「よがるのに夢中か。まあいい……王の私と、誰とも分からぬ獣人の子の私……誰もが態度を面白いほどに変え、時には王である私の悪口を並べた。利用価値があるから私に愛を捧げるなんて言われて、信用などできるか?」

「へ、いか……ッ、おくは、もう……ふぁぁ……っ」

「また達しているではないか。遠慮するとは、相変わらず欲のないヤツめ。体は貪欲に私を欲しているぞ?……愛など利己の塊だと思っていたというのに、お前は私に愛を歌った。極上の愛を……どれだけお前が輝かしく見えたことか。そして恨めしく思ったことか。お前が意外にも何も知らぬ体だったから情けをかけたが――もう逃がさん」

 何度も精を注いだ私の中へ、ベルゼム陛下は腰を押し込んで執拗に繋がる。

 グチュッ、グチュッ、と捻じ込まれる度に濃厚な疼きが私を壊し、どこまでも深い快楽に誘われる。

 歌だけがすべての私はいなくなるというのに。
 押し潰されて、淫らな液とともに掻き混ぜられて、濃密な陛下の精を宿して。なんとも芯のない柔らかなものへと作り替えられていく。

 体の奥深くまで陛下を知ってしまった私は、もう感じるままに悦ぶしかなかった。

「はぁ、ぁ……へいかぁ……へいか……ぁぁ……」

「さあ、啼き歌え……お前の愛を私に……ひと声聴いただけで私の心をさらった、その愛しき声を――」

 歌は私のすべて。
 その歌で私を丸ごと求めてしまった陛下は、一瞬で私のすべてを愛してしまったなんて。

 ――それだけで私はどこまでも満たされる。
 歌の中で息づく誰かの面影に惹かれたのではなく、歌の世界を生み出す間際の私を求めてくれたのだから。

 陛下からの確かな愛を受け取りながら、私は力を無くした腕を伸ばして陛下にしがみつく。

 淫らになるばかりの声で喘ぐしかできないけれど、少しでも陛下に応えたくて必死に言葉を紡ぐ。

「へいかぁ……ぁぃ、して――あぁぁァ……ッッ」

「そうだ。それでいい。欲張れサティア……っ……私にそなたを捧げろ。そして私に捧げさせろ……サティア……」

 ああ。やっぱり陛下は愛されたかった人で、愛したかった人。

 よがるだけの人形に成り果てた私の腰を陛下は掴み、貫き、揺らし、終わりない快感を与え続けていく。

 そして私へ愛を乞う。
 私たちの愛を歌う声がか細くなり、愛に啼き、沈み堕ちてもずっと――。
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