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第二話 変人の烙印は絶対阻止!

不意に寄られて

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 昼食を終えて「ちょっとトイレ」と席を立った俺は、ようやくケイロの気配がない場所へ行けて心からホッと胸を撫で下ろした。
 教室から敢えて遠い所にある、人気のない三階の視聴覚室近くのトイレ。辺りの静けさに癒しを覚えるのは初めてかもしれない。

 ああ、トイレっていいな……解放感がハンパない。
 出すもの出して体もスッキリした後、いつになく爽快な気分で手を洗っていると、

「……太智」

「ふわぁぁぁぁ……ッ!」

 突然耳元でケイロの声がして、俺は思わず腑抜けた声で叫びながら耳を押さえ、慌てて振り向く。
 すると視界一面にケイロの顔が広がって、俺の体から一気に力が抜けた。危うく尻もちをつきそうになったが、グッと抱きかかえられて無様な転倒は回避できた――その代償は余計にひどかった。

「ば、バカ……っ、学校で、近づくなってぇ……ン……ッ」

「離れる前に一言伝えておこうと思ってな……午後の授業、抜けさせてもらうぞ」

 こ、声が耳に響いて……ヤバい。これだけで腰が砕けて、体の中がイカれていく。
 どうにかしてくれ、と泣いて縋りそうになるのを堪えながら、オレはケイロに尋ねる。

「……っ……なに、か……あったのか……?」

「ここしばらく裏切り者からの動きがない。だから俺が陽動してやろうと思ってな」

「そっか……ッ……まあ、気をつけろよ……」

「心配してくれるのか? 俺の妻が板についてきたんじゃないか?」

 ……は?
 体の疼きを必死に堪えている中、耳を疑うことを言われて俺は思わず体を強張らせた。

「自惚れんな……っ……そんなんじゃあ――」

「精の補充は二日後だが、太智が望むならいつでも歓迎するぞ。今も我慢できないようなら、保健室で待っていろ」

「お前なぁ……俺を、変態の道にそそのかそうとするな……っ」

「夫婦の営みは正常なことだろ? ……まあいい。じゃあな」

 やっと離れてくれる……よかった、これで体が落ち着く。
 ケイロの腕が離れかけて息をついていると――俺の気が緩んだ隙を突くように、ケイロが俺の唇を奪う。

「――……ッッ」

 刺激に飢えていた体に不意打ちのキスが響いて、頭の中が真っ白に弾ける。
 そしてフッと意識が途切れて、取り戻した頃にはケイロの姿はなく、俺は廊下の壁に背を預けて座らされていた。

 ……学校なのに……キスだけでイかされた……。
 節操がなくなっていく体が、一度近づかれるとケイロに抗えない自分があまりに情けなくて、俺は盛大なため息を廊下に響かせた。
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