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第5章 第3節 南の塔 ~発芽~

122.甘噛みされるみたいです。

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「旦那様、スケルトンはグールなどと一緒だと説明させていただきましたが、異なることがございます。彼らは魔力が骨の中に存在しておりますので、同じ魔法では倒すことは出来ません。ですので骨を破壊する必要がございます。彼らの骨は火の魔法に負の耐性がございますので、炎の踊りダンシングブレイズ

ひかりを包んでいた魔力が激しい炎ブレイズに変換されていき、ひかりが突き出した腕の周囲を這って骨たちに襲い掛かる。容赦なく広がっている炎は草木はもちろん大地でさえも朱く染め上げ、そこにあるものを全て灰へと帰した。その姿は地獄絵図である。熱せられた骨からはピキピキという骨に罅が入る音がし始めたので、ハジメが白光の魔法を打ち出すと伽藍堂がらんどうになった骨を残して動かない只のむくろとなっていった。そして周囲に静寂が戻った時、

【スケルトンたちの殲滅を確認。ステージ2-2クリア。続けてステージ3-1を開始します】

アナウンスが流れると共にバサッバサッという大きな音が空気を震わせ始め、ぐぉぉぉぉぉという鳴き声も聞こえてくる。

2人が上を見上げると吹き抜けである上から小型のドラゴン5羽が先導して30匹ほどの群れが降りてくるのが見える。

「今度はワイバーンですね。雷鳴ブロンテース雷光ステロペース

ひかりが一気に練り上げた魔力を放つ。迫ってくるワイバーンの上からゴロゴロという雷鳴が聞こえ始め、小型竜の集団に幾つもの雷光を浴びせ、次々に元墓場である焼け野原に落ちてくる。ハジメはそれを眺めつつ

「・・・・なんか作業だよね・・・・」

思わず呟いてしまった。

「えぇそうですね。しかしこれが最も効率的ですので」

ひかりは微笑みながらそう言う。

水流弾ウォーターブレッド追尾リモート

まだ飛んでいるワイバーンにハジメの放った水流弾が当たり、そこへひかりの雷が轟くとその下を飛翔していたもう1匹に伝染していく。魔法で生み出した水は純水だが、ワイバーンの体表の不純物を取り込み電気が流れやすい環境に簡単に変わる。一気に素早く電気が体内を流れるため体内組織は壊れるが皮は割と使えることが多い。

そうこうしているうちにすべてのワイバーンは地上に落ちていた。ハジメはアイテムボックスにそれを仕舞っていく。使えるものは使うつもりだ。その時上から大きな羽ばたく音がする。2人が見上げるとそこには1頭のドラゴンが居る。

『・・・人と精霊か・・・。おぬしたちが卒塔婆そとばたる場所を解放せし者たちか?なんと愚かな・・・』

「卒塔婆?」

ハジメが呟く。

『それすら知らずここへ? なんとも浅はかな・・・。人はやはり滅びるべき・・・・』

ドラゴンが大きく息を吸い込む。その瞬間ひかりの右膝がドラゴンの下顎に突き刺さる。

「旦那様への侮辱は万死に値しますよ?」

そこからはずっとひかりのターンが続く。彼がハジメの横に降り立った時竜はぼこぼこにされていた。ひかりは冷静沈着に思われているが割と武闘派でありハジメに対して超が付くほど過保護である。にも拘わらずドラゴンは『浅はかで滅びるべき』とハジメに対して『鹿』と禁句を2個も言ったから致し方ない。ハジメは成仏を祈らずにはいられなかった。『素材は無駄にしません』と。

「・・・にしても、ここは卒塔婆だったんだなぁ。』なんだね」

「えぇ。そうです。滅びた者たちの卒塔婆が4つの塔でございます。最初の塔は高度に発達した魔法都市、2つ目の塔は猫族と豚族の村。この卒塔婆はエルダードワーフとエルフの村、そしてこの後わたると行く最後の塔はこの世界で一番初めに滅びた街の塔でございます」

「エルダードワーフ?」

ハジメは初めて聞く単語に反応する。

「えぇ。今国家を作っているドワーフは建築や鍛冶、細工などオールラウンドに適正を持っていますが、エルダードワーフは建築なら建築だけ、鍛冶だけ、と言うように今のドワーフよりも専門性が高くなった存在でした」

ハジメの問いにひかりが答えると、

【ワイバーン、ドラゴンの殲滅を確認。ステージ3-1、ステージ3-2クリア】

というアナウンスが流れ宝箱が出現した。開けると2枚の設計図を手に入れた。どうやらこれで炉の設計図は完成のようだった。

「さて、それでは火口へとまいりましょう旦那様」

ひかりは冷静にそういいながらその瞳には悲しさが浮かんでいる。勿論ハジメも同様である。これでひかりとも別れなければならないからだった。

壁沿いに螺旋状に上る階段を進んでいく。徐々にハジメの口は重く言葉数は減っていく。そして遂に火山の頂上である火口へと辿りついた。登り切った場所は1m幅の道がくるりと火口を1周しており、その中は煮えたぎっているマグマがぼこぼこと気泡を作っていた。その真上に全身鎧を身に纏い、兜を右脇に抱えた真っ赤な髪の毛を揺蕩たゆたえた中年の渋い男性が立っていた。

「よくぞこの火の塔を攻略してくださった。それがしは火の属性王、サラマンダーと申す。ハジメ殿、我らが罪申し訳なく御座候ござそうろふ。伏してお詫びいたす」

そう言いながら頭を深々と下げる。

「ハジメ殿、ひかりは、いや、属性王は全てを見ておりまする。故に、ハジメ殿の事は忘れていようとも、彼らの目には貴殿の姿、行い、言葉は届きまする、努々ゆめゆめ忘れませぬよう」

彼には精一杯であろう優しい口調でハジメに語り掛ける。

わたくしたちは必ずや旦那様を見つけ出し、思い出します。貴方様は私たちの大切ななのでございますから。その時まで申し訳ありませんがお待ち頂けますか?」

ひかりはハジメに微笑みながら告げる。ハジメは

「・・・・そう言われてしまうと頷くしかできないよね。大丈夫。空を見ればまいが、水を見ればあいが、ともしびを見ればひかりが、大地を踏みしめればわたるが居るからね。俺はいつも君たち精霊ズを感じることが出来るんだから・・・」

そう言って頷き笑顔で送ることしか出来ない。

「旦那様・・・」

ひかりは初めてハジメを抱きしめる。

「そう言っていただけると私共も頑張れると思います」

「すまぬ・・・・」

ひかりとの別れを見守っていたサラマンダーの顔は暗く曇っている。火の精霊は猛々しいイメージがあるが、人々の生活を豊かにしたり、明かりで不安を取り除いたりという人に寄り添って存在していることからも優しい一面もあるのだろう。

「ハジメ殿。これは火喰鳥ひくいどりの火の妖精。貴殿の傍に仕えさせていただけたらと思う」

いつの間にかサラマンダーの右肩に止まっていた真っ赤な鳥が「きゅー」と鳴いた。

「よろしくね。くれない

そう言うと鳥はサラマンダーの肩からハジメの右肩へと飛んできた。ハジメは優しく彼女の頬を右人差し指で撫でると彼女は眼を細めて気持ち良さそうにしていた。

「では、始めよう」

ひかりとサラマンダーが対峙すると下の溶岩が二人を薄い膜で包み込む。

「・・・我が力、知識、種となりて新たなる世代の芽とならん。受け継ぐ者よ、汝が得たを土壌とし、育てよ、いつくしめ。汝は世界の礎の1つとなる」

サラマンダーの前に1粒の真っ赤な種が現れ始めると共に彼の姿は年老いていく。種がその存在を固定させたとき彼は息も絶え絶えの老人と化す。そしてその種はひかりへと向かって進み彼の体内へと入っていく。ひかりが目を見開くと同時に一瞬紅蓮の炎に包まれる。炎が収まった時、彼の赤かった髪は炎となり、瞳はさらに赤みを増した。そして新たな属性王の誕生を喜ぶかのように下にあったマグマはプロミネンスを描き、ハジメの全身を赤く熱く照らしていた。

「さぁ、行かれよ。新たな火の属性王ひかりよ。もう間もなく世界は再生の時を迎える」

元火の属性王がそう言うとひかりはハジメに目もくれずマグマの中へとその姿を消して行った。

「ハジメ殿。我らが罪を許し給え・・・・・・・・」

そう言ってサラマンダーは姿を赤い光の粒子に変え。彼の最後を見送ったハジメの右耳をくれないが静かに噛んだ。彼の頬には堪えていた雫が1つ2つと伝って地面へと落ちていた。


ハンドブック 10項目目

10-8.火妖精と契約しよう:上書きClear!

ハンドブック 14項目目

14-1.南の塔の攻略:Clear!
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