絆 ~家族として一緒に生きますかね~(仮)

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序章

3.スタンピード

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戦っていた者たちが街へと引き返した後、草陰からグリが目をキラキラさせて現れる。

「凄いね。恰好良かったねーー」

「当たり前。我らの親だ」

少年の言葉に白虎が答える。

「・・・流石父上・・・。効率の良い魔法でした」

くれないがそう感嘆する。今の戦いでハジメが使った魔法を彼ら4個体は全て覚えてしまっていたようであった。

「もうこれカラス処理してもいいですぞー?」

突っ込み役のはずのくれないまでも呆けているのでたっつんが皆に告げ、尻尾を巻き付けられた戦士風の男が気を失っている。

「そうだね。出力アウトプット

少年が王都の冒険者として活動していたカラスデリックの首元に手を当てると、カードがずずずっと抜けてくる。そこに描かれているのはカラスの絵だった。

「・・・ねぇ、って記憶ってあるの?」

不意に疑問に思ったことを少年が告げる。

「えぇ。ありますよ。あくまで『望み』を増幅させるだけですから」

くれないが答える。

「そっかー。じゃぁ罪は償わないとね。たっつん。授与ギブ

青龍の体にカラスのカードが入っていく。

「ありがとうですぞー。情報収集の効率が上がったようですぞー」

たっつんが首を少し持ち上げ耳を澄ませているような仕草をしている。

「主、あとは『集めるもの』だけですね……」

くれないが言う。

「……うん。でもなんでハジメ様の話がなんなことになってたんだろう……」

少年は馬に乗って自分の領地に急いで帰っているハジメの後ろ姿を見ながら呟く。その言葉に4個体は悲しい目をする。

「・・・人は恐れるモノや。自分の理解が追い付かないモノは迫害するのが道理っちゅーことや」

「えぇ。そして人間は自分の罪を認めたくはないものなのですよ、主・・・」

亀が静かに呟き、鳥が切なげに鳴いた。龍と虎は少年の体にそっと寄り添った。龍は用済みになったカードの持ち主たちに『私たちは襲撃犯の一味です』と張り紙をし、ポイ捨てしてからだったが。

一方成金趣味の中年の男、『集めるもの』が投獄されたのは町役場の1室だった。そこの窓は鉄格子となっており、耐物理・耐魔法の結界と遮音の結界も貼られていて、自然災害やその他の緊急事態時に指令室として、極秘の話合いなどで活用出来るようになっていた。また扉は外からのみ鍵が掛けられるようになっているため、高地位の人物の牢としてもつかわれることもある場所である。

「さて、貴方のスキルカード貰いますね」

誰も居なくなった部屋で不意に声がして首筋に手が触れる感触がした『集めるもの』が振り返るとそこにはキツネの尻尾を揺らしている少年が居た。

「大体ハジメ様に勝とうなんて無理なことだよ……。出力アウトプット

そう初年が呆れたように言うと体中にみなぎっていた力が抜けていく感じがし、体を固くした。そして次の瞬間一気に弛緩すると、意識が遠くなった。消えていく視界の隅で少年がカードを1枚手にしていた……。

「これで最後かな・・・。入力インプット

持っていたカードは少年の中に溶けて行く。

「・・・それで終わりだ。に帰す」

不思議な声と共にグリと4匹はその姿を闇に溶けていく。2度目の『時渡ときわたり』ではあるが、自分の体が闇と混ざるような変な感触には慣れることはないだろうなとグリはそう思っていたのは内緒である。そんな闇の中で光を感じ、そちらにあるはずのない体が引っ張られる感じがする。

”もう着いたのかな……”

そう思っているとすぐに視界に瞼の裏の血管が透けて見えるようになった。少年はゆっくりと目を開けると、そこには15歳くらいの女性がウッドチェアに座り読書をしている姿があった。彼女の背後には大きく聳え立つ大樹がある。

「アルマ師匠帰りましたー。後時間はどれくらいあります?」

彼は笑顔で帰還の挨拶をした。

「あぁ、お帰り。そうだな。ノーマルまで・・・・・・後1時間くらいだろうな」

本から視線を上げず彼女は答える。人形・・のような端正な顔立ちで、さらさらに伸びた黒い髪は幼いながらもうれいを帯びているかのようである。スラリとした手足は色白でしなやかさを感じられる。しかしグリは知っている。本当の彼女の姿を。漆黒色の髪は対峙するものに恐怖を与え、手足は絶望を与える。まして魔力ちからは化け物であり、知識は底なし沼で口喧嘩では絶対に勝てない。その存在が実は魔王だと言われても少年は納得してしまうだろう。

『すぱーーーーん』

とそんな恐怖の対象でしかない彼女の頭にハリセンが落とされる。

「痛いじゃないか、兄さん!セカンドインパクト症候群になったらどうしてくれるんですか!」

彼女の顔面にハリセンをかましたのは彼女の兄、オーダ。彼も人外の美貌を持っている。身長はアルマよりも10cmほど低く、外見的には12-13歳くらいに見える。

「……アルマ…。君の体は紛い物なんだから、そんなことにはならないし…。そもそも今まで一度も脳震盪のうしんとうなんて起こしたことないだろう…」

彼は溜息を吐いた。

「本当にすまないねぇ、グリ君……」

「いえ、世界樹様。お気になさらないでください」

グリは頭を下げてほほ笑む。

「うちの妹が毎度毎度迷惑をかけてすまないね…。それで君がここに帰ってきているということはカード集めは終わったんだね?」

世界樹オーダがそう言うと、グリは

「はい。お陰様で…。ハジメ様にも会えましたし!」

そう言う。その言葉にオーダは悲しそうな表情になった。

「…そうか、元気だった父上に会ったのか…」

既にハジメが死んで500年ほどの年月が経っていた。

「ふむ…。グリ君。申し訳ないが、我ら兄妹の予想よりも早く反乱スタンピードが起こりそうなんだ。行ってくれるかい?」

オーダはそう告げると大樹の前に立つ。

ゲート

世界樹であるオーダが言葉を発すると白いもやの塊が出来る。

「はいっ。行ってきます。皆頑張っていこー」

少年はそう言って4体の妖精と共にその靄に包まれ消えて行った。

「父上…」

思わずオーダはそう呟き、空を見上げた。青く澄み渡ったそれは自分がこの地へ来た時と同じ景色だった……。
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