大いなる神秘の鍵

第4部 大いなる実践的な秘密、または、知の実現

第4部 第3章 死の大いなる秘密

第4部 第3章 死の大いなる秘密

　人は、よく、最も美しい命でも必ず終わる事を考えて悲しく成る。
　人が死と呼んでいる畏敬するべき未知の物が近づく事は、人に、命の全ての喜びを考えさせる事によって、嫌悪の感情を引き起こす。
　もし人の命が必ず少ししか無いのであれば、なぜ、人は生まれるのか？
　幼子は必ず死ぬのに、なぜ、思いやり深く幼子を育てるのか？
　「なぜ、人は生まれるのか？」といった常にある悲しい疑問は、人の無知による物である。
　「なぜ、人は生まれるのか？」といった疑問を、保護膜である羊膜を破って脱いで、未知の「この世」に投げ出される、誕生が近づいている、人の胎児は、漠然と自身に問いかけているかもしれない。
　誕生の神秘を学ぼう！
　そうすれば、死の大いなる秘密の鍵をつかめるであろう！
　自然の法が女性の胎内に投じた、肉体をまとった霊は、ゆっくりと目覚める。
　霊は、後で絶対に必要と成る諸器官の創造に取り組む事に成る。
　しかし、胎児の状態では、諸器官が育つにつれて、諸器官が霊にもたらす不快感は増大して行く。
　胎児という命の最高に幸福な時期は、蝶のさなぎの時期に似ている。
　胎児は、胎児の保護に役立つ羊膜を周囲に張る。
　胎児は、糧を与えてくれる、衝撃から保護してくれる羊水という流体の中を泳ぐ事に成る。
　胎児の時期、胎児は、自由であり、苦しみを感じない。
　胎児は、普遍の命の中にいる。
　胎児は、自然が記憶している印象を受け取る。
　胎児が自然から受け取る印象は、後に、胎児の肉体の形成や、胎児の顔の造形を決定する。
　胎児の時期という幸福な時期は、胎児の幼子の時期である、と言えるかもしれない。
　胎児の幼子の時期の後に、胎児の青春期が続く。
　人の形は、明確に成り、性別が決定される。
　母の羊膜という卵の中で、幼子の時期の後に続く青春期の漠然とした夢想に似ている、心の動きが起こる。
　胎盤は、胎児の外形であり、胎児の実質的な肉体である。
　胎盤は、胎盤内に、すでに胎盤を断ち切って胎盤を脱け出そうとする傾向が有る未知の者である胎児を感じる。
　その時、胎児は、より明確に、夢の命へ入る。
　胎児の脳は、母の脳の鏡として働いて、母の想像力を、多大な力で再現するため、胎児の脳は母が想像している形を胎児の手足に伝える。
　その時、胎児にとっての母は、人にとっての神と成り、未知の目に見えない神意と成る。
　胎児は、母が敬礼する全てのものと、自身を同一にするくらい、神の様な母を望む。
　胎児は、母に固執する。
　胎児は、母によって生きる。
　胎児は、母を見た事は無いが。
　また、胎児は、母を理解する方法すら知らないが。
　もし胎児が哲学的に思索できたら、多分、胎児は、母の個人的な存在性と知性を否定するであろう。
　なぜなら、胎児にとって、母は、未だ、運命的な牢獄であり、胎児の生命を保護し保持する器官に過ぎない。
　しかし、少しずつ、母による奴隷状態は、胎児を苦しめる。
　胎児は、身をよじらせて、苦しみ、胎児としての人生が終わろうとしているのを感じる。
　それから、けいれんと苦しみの時が来る。
　胎児を束縛していた物が断ち切られる。
　胎児は、未知という底無しの淵に堕ちようとしているのを感じる。
　成就された。
　胎児は、堕ちて、痛みで精神的に粉々に成り、不思議な冷たさにとらわれる。
　胎児が吐き出した、最後の溜め息は、最初の泣き声に変わる。
　胎児としての命は死んだ！
　胎児は、人の命へと生まれた！
　胎児としての人生の間、胎児は、胎盤が肉体であると思っていたが、実際は、胎盤は胎児のための特別な肉体であった。
　胎児の肉体としての胎盤は、胎児にとっての来世である誕生後は無用である。
　誕生した時に、胎児の肉体としての胎盤を、汚れた物として脱ぎ捨てる必要が有る。
　人としての人生のための肉体は、第2の人生の外皮の様な物であり、肉体の死後の来世の第3の人生では無用である。
　そのため、肉体の死後の第2の誕生の時に、人は、肉体を脱ぎ捨てる。
　天での人生と比較した、この世での人生は、正に、この世での人生と比較した胎児としての人生である。
　人の邪悪な肉欲が人を精神的に殺すと、自然は人を流産して、人は早産で魂の永遠の人生に生まれてしまい、ヨハネの黙示録2章11節で使徒ヨハネが「第2の死」と呼んでいる畏敬するべき分解に人はさらされてしまう。
　忘我状態の者達の不断の口伝によると、人生の失敗作である悪人は、地上の大気中を超越できずに泳ぎ続けて、少しずつ地上の大気に吸収されて消滅してしまう。
　死んだ悪人は、人の形を有してはいるが、常に、切り取られていたり、不完全である。
　ある死んだ悪人には片手が無く、ある死んだ悪人には片腕が無く、ある死んだ悪人には胴体しか無く、ある死んだ悪人には青白い転がる頭部しか無い。
　生前に負った精神的な損傷が、死んだ悪人の昇天を妨げている。
　精神的な損傷が、奇形を、死んだ悪人の星の体にもたらしている。
　精神的な損傷によって、少しずつ、死んだ悪人の存在性が全て漏れ出て行く。
　やがて、死んだ悪人の魂は裸に成ってしまう。
　死んだ悪人は、どんな犠牲を払ってでも、魂の新しいヴェールを作って、精神的な恥部を隠すために、マタイによる福音22章13節の「外の闇」に自ら引きずり込まれる事を余儀無くされ、古代の混沌の眠れる海、死んだ悪人達の海の中をゆっくりと通過する。
　精神的に損傷している悪人の魂は、胎児の第2の形である、ラルヴァに成る。
　精神的に損傷している悪人の魂ラルヴァは、気体の様な星の体を、生きている他人の肉体からの流血の蒸気で(霊化したり物質化したりして)養う。
　そのため、精神的に損傷している悪人の魂ラルヴァは、剣先を恐れる。
　度々、精神的に損傷している悪人の魂ラルヴァは、不道徳な人にとりついて、不道徳な人の命によって生きる。
　胎児が母の胎内で生きる、様に。
　その状況において、精神的に損傷している悪人の魂ラルヴァは、不道徳な人の狂った欲望を表す、恐るべき奇形を取る事ができる。
　黒魔術の言語道断の儀式で、劣悪な魔術師の前に悪魔の姿で現れる者は、精神的に損傷している悪人の魂ラルヴァである。
　精神的に損傷している悪人の魂ラルヴァは、光を恐れる。
　特に、精神的に損傷している悪人の魂ラルヴァは、知の光を恐れる。
　知の光は、雷の様に、精神的に損傷している悪人の魂ラルヴァの星の体を十分に破壊できて、死んだ悪人達の海に投げ入れる。
　(「死んだ悪人達の海」、「Dead Sea」をパレスチナの塩湖「死海」、「Dead Sea」と混同しない様に。)
　「大いなる神秘の鍵 第4部 第3章」でエリファス レヴィが啓示した物は全て、予見者の口伝による物であり、「大天文学または直感哲学」でパラケルススが「直感哲学」と呼んでいる超常的な哲学の名前においてのみ学問の前に立てる事ができる。