20 / 89
20 小さな桜と太陽
しおりを挟む
朝、ランドセルを背負って家を出るとき、胸の中が少しドキドキする。
それは学校に行くのがこわいからじゃない。
学校にはゆずちゃんがいるからだ。
ゆずちゃんは、わたしの隣の席の女の子。
髪がふわふわしていて、いつもお花の形のピンをつけている。
笑うとね、ほっぺが少し赤くなって、太陽みたいに明るい。
その顔を見ると、胸がきゅんとなって、ことばが出て来なくなっちゃう。
授業の途中、ゆずちゃんの消しゴムが転がってきた。
「ゆずちゃん、落としたよ」
わたしはすぐに手を伸ばして拾い上げて渡した。
ゆずちゃんが小さく笑って「ありがとう」と言ってくれた。
その声を聞いた瞬間、胸の奥がじんわり熱くなっちゃった。
どうしてだろう。たったそれだけなのに、
心の中が春みたいにふわ~~って暖かくて、明るくなっていくの。
休み時間、ゆずちゃんが走ってきた。
「綾ちゃん、一緒に遊ぼう」
その声を聞くだけで、体の中がぱっと元気になる。
いつも元気だけど、もっともっと元気になる。
ゆずちゃんが、わたしの手をぎゅっと握ってきた。
その手はあたたかくて、やわらかくて、ずっとつないでいたくなる。
つながってる? っていうのかな。
もうね、ぐわ~って感じになっちゃうの。
二人で校庭のブランコに行った。
ぎい、ぎいと音をたてながら、ゆずちゃんがこいで、わたしもとなりでこぐ。
風がスカートをふくらませて、空がどこまでも青い。
ゆずちゃんの髪が光に透けて、花びらみたいにきらきらしていた。
「綾ちゃんの髪、さくらみたいだね」
そう言われて、顔が熱くなった。
さくらとは、四月に咲くピンクのきれいな木なんだよ。
かわいい木で私も大好き。
でもすぐになくなっちゃうのが少し残念。
「ゆずちゃんのほうが、太陽みたいだよ」
小さな声で言ったら、ゆずちゃんが目をまんまるにして笑った。
「じゃあ、わたしたち、花とたいようだね」
その言葉が嬉しくて、わたしも笑った。
その時の風の匂い、今でも覚えている。
放課後。
「綾ちゃん、うちで遊ぼう」
うれしくて、思わず大きくうなずいた。
手をつないで歩くと、ゆずちゃんの手がぽかぽかして、心まであたたかくなる。
玄関を開けた瞬間、甘いお菓子のにおいがふわっと広がった。
お母さんが笑って「いらっしゃい」と迎えてくれる。
その声がやさしくて、胸がくすぐったくなった。
ゆずちゃんの部屋は、ぬいぐるみがいっぱい。
くまさんもうさぎさんも、まるでおしゃべりしているみたいだった。
二人でお人形あそびをしていたら、「この子ね、綾ちゃんのこと大好きなんだって」ゆずちゃんが、ふいに言ってきた。
わたしは笑って、「ほんとに?」と聞き返した。
すると、ゆずちゃんは自分の人形を、わたしの人形にそっと近づけた。
人形のくちびるが、ちゅって小さな音を立てる。
「ほら、ちゅーだよ」
その言葉と同時に、胸がどきんと跳ねた。
ゆずちゃんが小さな声で言った。
「わたしね、綾ちゃんがいると、毎日がたのしいの」
その言葉がやさしく胸の中に入ってきた。
勇気を出して、わたしも言った。
「わたしも、ゆずちゃんがいないと、さびしいよ」
ゆずちゃんが笑って、わたしをぎゅっと抱きしめた。
お花のにおいがして、胸がじんわり温かくなる。
涙が出そうだったけど、こらえた。
うれしくて、胸がいっぱいだった。
それから毎日、わたしたちは手をつないで登校した。
休み時間はブランコ。帰り道は、ランドセルをぶつけあいながら笑った。
雨の日は、一つの傘をさして帰った。
ゆずちゃんが「ぬれちゃうよ」って、傘をわたしのほうに寄せてくれる。
そのたびに、胸の奥がくすぐったくてうれしかった。
わたしは思う。
ゆずちゃんの笑顔は、わたしのいちばんの宝物だ。
いつか大人になっても、この気持ちはきっと変わらない。
ゆずちゃん、ありがとう。だいすき。
それは学校に行くのがこわいからじゃない。
学校にはゆずちゃんがいるからだ。
ゆずちゃんは、わたしの隣の席の女の子。
髪がふわふわしていて、いつもお花の形のピンをつけている。
笑うとね、ほっぺが少し赤くなって、太陽みたいに明るい。
その顔を見ると、胸がきゅんとなって、ことばが出て来なくなっちゃう。
授業の途中、ゆずちゃんの消しゴムが転がってきた。
「ゆずちゃん、落としたよ」
わたしはすぐに手を伸ばして拾い上げて渡した。
ゆずちゃんが小さく笑って「ありがとう」と言ってくれた。
その声を聞いた瞬間、胸の奥がじんわり熱くなっちゃった。
どうしてだろう。たったそれだけなのに、
心の中が春みたいにふわ~~って暖かくて、明るくなっていくの。
休み時間、ゆずちゃんが走ってきた。
「綾ちゃん、一緒に遊ぼう」
その声を聞くだけで、体の中がぱっと元気になる。
いつも元気だけど、もっともっと元気になる。
ゆずちゃんが、わたしの手をぎゅっと握ってきた。
その手はあたたかくて、やわらかくて、ずっとつないでいたくなる。
つながってる? っていうのかな。
もうね、ぐわ~って感じになっちゃうの。
二人で校庭のブランコに行った。
ぎい、ぎいと音をたてながら、ゆずちゃんがこいで、わたしもとなりでこぐ。
風がスカートをふくらませて、空がどこまでも青い。
ゆずちゃんの髪が光に透けて、花びらみたいにきらきらしていた。
「綾ちゃんの髪、さくらみたいだね」
そう言われて、顔が熱くなった。
さくらとは、四月に咲くピンクのきれいな木なんだよ。
かわいい木で私も大好き。
でもすぐになくなっちゃうのが少し残念。
「ゆずちゃんのほうが、太陽みたいだよ」
小さな声で言ったら、ゆずちゃんが目をまんまるにして笑った。
「じゃあ、わたしたち、花とたいようだね」
その言葉が嬉しくて、わたしも笑った。
その時の風の匂い、今でも覚えている。
放課後。
「綾ちゃん、うちで遊ぼう」
うれしくて、思わず大きくうなずいた。
手をつないで歩くと、ゆずちゃんの手がぽかぽかして、心まであたたかくなる。
玄関を開けた瞬間、甘いお菓子のにおいがふわっと広がった。
お母さんが笑って「いらっしゃい」と迎えてくれる。
その声がやさしくて、胸がくすぐったくなった。
ゆずちゃんの部屋は、ぬいぐるみがいっぱい。
くまさんもうさぎさんも、まるでおしゃべりしているみたいだった。
二人でお人形あそびをしていたら、「この子ね、綾ちゃんのこと大好きなんだって」ゆずちゃんが、ふいに言ってきた。
わたしは笑って、「ほんとに?」と聞き返した。
すると、ゆずちゃんは自分の人形を、わたしの人形にそっと近づけた。
人形のくちびるが、ちゅって小さな音を立てる。
「ほら、ちゅーだよ」
その言葉と同時に、胸がどきんと跳ねた。
ゆずちゃんが小さな声で言った。
「わたしね、綾ちゃんがいると、毎日がたのしいの」
その言葉がやさしく胸の中に入ってきた。
勇気を出して、わたしも言った。
「わたしも、ゆずちゃんがいないと、さびしいよ」
ゆずちゃんが笑って、わたしをぎゅっと抱きしめた。
お花のにおいがして、胸がじんわり温かくなる。
涙が出そうだったけど、こらえた。
うれしくて、胸がいっぱいだった。
それから毎日、わたしたちは手をつないで登校した。
休み時間はブランコ。帰り道は、ランドセルをぶつけあいながら笑った。
雨の日は、一つの傘をさして帰った。
ゆずちゃんが「ぬれちゃうよ」って、傘をわたしのほうに寄せてくれる。
そのたびに、胸の奥がくすぐったくてうれしかった。
わたしは思う。
ゆずちゃんの笑顔は、わたしのいちばんの宝物だ。
いつか大人になっても、この気持ちはきっと変わらない。
ゆずちゃん、ありがとう。だいすき。
0
あなたにおすすめの小説
白雪様とふたりぐらし
南條 綾
恋愛
高校1年生の紫微綾は、生きることに疲れ、雪の山で自らの命を終えようとしたその瞬間――
美しい御小女郎姿の少女・白雪が現れ、優しく彼女を救う。
白雪は実は古の仏神・ダキニ天の化身。暇つぶしに人間界に降りた彼女は、綾に「一緒に暮らそう」と提案し……?
銀髪の少女と神様の、甘く温かなふたりぐらしが始まる。
【注意事項】
本作はフィクションです。
実在の人物・団体・宗教・儀礼・場所・出来事とは一切関係ありません。 作中で登場する神仏や信仰に関する表現は、物語の雰囲気づくりを目的とした創作によるものであり、特定の宗教や思想を推進・否定する意図は一切ございません。
純粋なエンターテイメントとしてお楽しみいただければ幸いです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる