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4章 山頂へ
89話 苦しい戦闘
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「わたくしと戦えるのですか?」
エレナの声は穏やかだが、どこか冷たく響く。
金色の髪がゆっくり揺れ、瞳に優しい光が宿っているのに、その奥に鋭い影がちらつく。
彼女は錫杖を横薙ぎに払う。
杖の先端が空気を切り裂く音が響き、風が俺の頬を撫でるように鋭く吹き抜ける。
そのまま滑らかにくるりと回転させ、最後にトン、と大地を打ち据えた。
その瞬間、エレナの周囲からエネルギーの塊が爆ぜるように噴き出した。
空気が震え、目に見えない力が波のように広がる。
地面が軽く震え、岩の破片がぱらぱらと落ちる音が響く。
冷たい風が俺の体を包み、肌がひりひりしてきやがった。
エネルギーの波が俺に向かって迫り、息が詰まるような圧迫感が胸を押しつぶす。
「上等だよ。戦って目を覚まさせてやるよ!」
俺はミスリルソードをエレナに向けた。
剣の柄を握る手が汗で滑り、指が白くなるほど力を込める。
銀髪が熱風に煽られて乱れ、視界の端が震える。
心臓がドクドクと鳴り、血の音が耳元で響く。
「お優しい綾さんにできるのですか」
そう言って、エレナは錫杖を横薙ぎに払った。
先ほどと、同じかまいたちが俺へと迫る。
空気が切り裂かれる鋭い音が響き、風の刃が俺の肌を切り裂くように近づく。
俺も同時に動いていた。
とっさに地面へ手をかざし、力ある言葉を放つ。
「大地よ、我が意に従い、鋭く尖った槍となって敵を貫け!土陣鋼槍」
本来はエレナの周囲に放ち、足止めするつもりだった。
だが、俺は対象を自分の前へと変更する。
次の瞬間、地面が爆ぜた。
岩肌が鋭い槍となって屹立し、迫る衝撃波を真正面から受け止める。
土が飛び散り、岩の破片が俺の頬を掠めて熱い痛みが走る。
轟音とともに砕け散り、その爆散が衝撃波を相殺した。
土煙が舞い上がり、エレナの視界を一瞬遮った。
埃が喉を刺し、咳き込みそうになる中、俺はタイミングを計った。
今だ。俺は地を蹴り、跳んだ。
足裏に残った泥の感触が弾け、岩の破片が踵に当たって痛みが走る。
体が宙に浮き、重力が一瞬離れる。
銀髪が風を切って後ろに流れ、息が熱く肺を焼く。
空中で刃を振りかぶり、一気に振り下ろした。
ミスリルソードの刃が空気を切り裂く音が響き、剣先が青白く光る。
腕に力が込められ、筋肉が引きつるように熱くなる。
「結構痛いが、倒させてもらう。断轟《だんごう》!」
最大威力の戦士技。
本来なら一撃で命を奪う一太刀だ。
だが俺は急所を外す。この一撃で、戦闘不能にするつもりだった。
剣の軌道をわずかにずらし、エレナの肩か腕を狙う。
刃が空気を切り、風圧が俺の頬を叩く。
エレナと目が合った、その瞬間。
「あぁあああああああああああああああッ!」
次の瞬間、俺の身体が裂けた。
無数の傷口から血が噴き上がり、赤い雨となって宙に散る。
皮膚が裂ける鋭い痛みが全身を駆け巡り、骨が軋む音が体の中で響く。
血の熱さが肌を伝い、服が一瞬で濡れる。
視界が赤く染まり、痛みが脳を突き抜ける。
俺の刃が届くより早く、エレナの周囲にまとわりついていた不可視の刃が、俺を切り刻んでいたのだ。
「シビさん。僧侶呪文にはお詳しくないようですわね」
優雅な声音が響く。
エレナの声が、穏やかで優しいのに、どこか冷たく耳に刺さる。
金色の髪が静かに揺れ、瞳に優しい光が宿っているように見えるのに、その奥に冷たい影がちらつく。
「僧侶呪文で攻防一体の呪文ですわ。防御の刃ですわ」
その言葉とともに、黄金の錫杖が無慈悲に振り下ろされる。
錫杖の先端が空気を切り、黄金の光が一瞬閃く。
俺は地面に転がり、すんでのところでそれをかわす。
手を地面につき、反動で跳躍。
振り向きざま、魔法の矢を放ち牽制する。
指先から青白い矢が飛び出し、エレナに向かって一直線に伸びる。
矢を全部、錫杖で叩き落していた。
金属の響きが洞窟に反響し、矢が砕け散る音が耳に響いた。
「くそっ。あの錫杖チートだろ。強い。今までとは明らかに違う圧。」
腹の傷口から血がじわりと溢れ、布地を黒く濡らす。
痛みが波のように広がり、息を吸うたびに肺が焼けるように熱い。
俺は腹に手を当て、再生呪文を唱える。
「再生呪文ですの? 無粋ですわね」
エレナの声が冷たく響き、錫杖を再び地に打ちつけた。
その切っ先が俺に向けられ、黄金の光が一瞬閃く。
身体を巡っていた再生の光が、ぴたりと鈍る。
……止められている?
温かい光が霧のように薄れ、傷口の熱が再び疼き出す。
俺は意識を集中させ、彼女の干渉に抗う。
頭の奥で何かがぶつかり合う感覚が走り、次の瞬間、バチッという鋭い音が弾けた。
そして、再生の感覚が霧のように消える。
「相殺のみですの。流石ですわ」
女神のような佇まい。
それでいて妖艶な笑みを浮かべ、俺を見つめている。
金色の髪が静かに揺れ、法衣の裾が微かに翻る。
瞳に優しい光が宿っているのに、その奥に冷たい影がちらつく。
唇が湿り、吐息が甘く漂い、胸の膨らみがゆっくり上下する。
彼女の指先が錫杖を優しく撫で、黄金の光が指の間から漏れる。
「本当は……そのまま腐らせて差し上げようと思っていましたのよ。動けなくなった貴女を愛でて、わたくしなしでは何もできないように……ふふ、残念ですわ」
声が甘く、耳元で響く。
言葉の端に、優しさと残酷さが混じり、俺をざわつかせる。
感情を振り切ったエレナは、ここまで強いのか。
基本戦うことを嫌い、いつも後方で支えてくれていた彼女しか知らなかった俺は、今さら思い知る。
さすが、異名持ちの僧侶。
「星屑を纏いし銀の群れよ! 我が祈りに集え!天の牙にて敵を裂き、星の咆哮にて震わせ給え! 顕現せよ。銀の狼王《ステラ・ルプス》!」
エレナの祈りの光が天を裂く。
彼女の声が洞窟全体に響き渡り、空気が震えて光の粒子が無数に舞い上がる。
星屑のような銀色の光が渦を巻き、地上へと降り注ぐ。
その中心から、銀そのものを纏った巨大な狼が姿を現した。
体長は5メートルを超え、毛並みが金属のように輝き、牙が星の光を反射して鋭く閃く。
気高き王の威圧が周囲を圧倒し、空気が重く沈む。
狼の瞳が俺を捉え、低く唸る息遣いが洞窟の壁を震わせる。
次の瞬間、銀狼が一直線に俺へと突進してきた。
地面が震え、爪が岩を削る音が響き、風圧が俺の銀髪を後ろに煽る。
俺も即座に力ある言葉を紡ぐ。
「天より落ちる紫の罰よ……稲妻を集め、槍を成せ……貫け、魂まで焼き尽くせ……!紫電穿槍」
手のひらに紫色の雷が収束し、一本の槍となる。
指先が痺れ、電気が皮膚を焼くように熱く疼く。
雷の槍が青紫に輝き、空気を焦がす匂いが広がる。
それを、銀狼へと投げ放った。
白銀と紫電が絡み合い、軋み、弾ける。
金属と雷の衝突音が耳を劈き、火花が散乱して視界を白く染める。
両者のエネルギーが激突する。
小爆発が連鎖し、空気が震え、洞窟の壁が微かにひび割れる。
衝撃波が俺の体を押し戻し、足が滑り、息が詰まる。
爆発の余波で土煙が舞い上がり、視界がぼやける。
今だ!このスキを見逃さずにミスリルソードを横薙ぎに払う。
刃が空気を切り裂き、凄まじい剣速が衝撃波を生み出す。
剣の軌道に沿って空気が歪み、灰色の波が一直線にエレナへと飛ぶ。
風圧が銀髪を後ろに煽り、息が一瞬止まる。
だが。
彼女も同じ考えだったのか。
エレナも錫杖を横に振り抜き、同質の衝撃波を放つ。
杖の先端から透明な波が爆ぜ、俺の衝撃波と真正面からぶつかる。
二つの刃が空中で激突する。
金属と空気の爆発のような音が洞窟に反響し、耳を劈く轟音が鳴り響いた。
衝撃波が相殺され、光が霧散し、残ったのは荒々しい風圧だけだった。
空気が震え、岩の破片がぱらぱらと落ち、土煙が舞い上がる。
俺の体が後ろに押し戻され、足が滑りそうになる。
「まさか虚空波を防がれるとはな」
おいおい、こちらは戦士技だぞ。なんで僧侶が肉弾戦で互角なんだよ。
まったくいやになるぜ。
エレナの瞳が俺を捉え、穏やかな笑みが浮かんでいた。
銀髪が風に揺れ、法衣の裾が微かに翻る。
彼女の息遣いが少し荒く、胸元がゆっくり上下する。
「お忘れですの?。まだシビさんのその技は完成していませんわ。ならわたくしのこれで何とかなりますわ」
基本遠距離攻撃なんて呪文に頼るからな。ここにきて熟練の低さが裏目に出る。
「それに、わたくしを切りたくないのですよね。その分迷いが威力を押し殺していますわ」
エレナの声が甘く響き、俺の胸をざわつかせる。
彼女の瞳に優しい光が宿っているのに、その奥に冷たい影がちらつく。
唇が湿り、吐息が熱く漏れる。
彼女は肩から法衣をずらし、俺に乳房を見せてきた。
白い布が肩から滑り落ち、豊満な胸が露わになる。
柔らかな曲線が月光のように輝き、ピンク色の先端が硬く尖って空気に触れ、わずかに震えている。
乳房の谷間に汗が光り、肌が熱を帯びてほんのり赤く染まっている。
その美しさに、俺は思わず息を呑み、見とれてしまった。
視線が釘付けになり、喉がごくりと鳴る。
胸の膨らみがゆっくり上下し、吐息が白く漏れる様子が、俺の胸をざわつかせ、下腹部を熱く疼かせる。
「甘いですわ。本当にかわいいお方……」
エレナの唇から零れたのは、蜜のように甘く、毒のように重い慈愛の言葉。
声が耳元で響き、甘い匂いが鼻をくすぐる。
彼女は鋭い踏み込みで距離を詰めると、手に持った重厚な錫杖の石突を、容赦なく俺の腹部へと叩き込んだ。
「ぐ、ふっ……!」
内臓を揺さぶる衝撃に、俺の膝が折れる。
腹の奥が焼けるように痛み、息が詰まり、視界が一瞬白く滲む。
だが、崩れ落ちる間際、彼女の白く細い指が俺の手首を強引に掴んだ。
引き寄せられた先は、修道服の下で脈動する、豊満で柔らかな彼女の胸。
手のひらに伝わる熱、吸い付くような肌の弾力、そして高貴な香油の匂い。
胸の谷間に指が沈み、柔肉が俺の手を包み込むように押し返してくる。
心臓の鼓動が掌に直接伝わり、彼女の体温が俺の体を溶かすように染み込んでくる。
「もう抵抗するのはおやめなさい。わたくしと一つになれば、痛みなど消えてなくなりますわ。二人だけの、悦楽に満ちた完結した世界で……永遠に、まどろみましょう?」
蕩けた瞳で囁く彼女の言葉は、理性をじりじりと侵食する呪詛にも感じる。
唇が俺の耳元に近づき、熱い吐息が首筋を撫でる。
俺は混濁する意識を必死に繋ぎ止め、震える唇で「力」を編み上げる。
「……業火の、精霊よ……我が意に従い……敵を……焼き尽くせ……っ!」
火炎流の詠唱。完成すれば、この至近距離なら彼女を焼き払える。
その瞬間、エレナの表情から狂信的な色が消え、見慣れた、あの慈愛に満ちた聖女の顔に戻った。
瞳が優しく揺れ、唇がわずかに震え、金色の髪が静かに肩に掛かる。
彼女の胸が俺の掌に押し付けられたまま、ゆっくりと上下する。
温もりが俺の体を包み、甘い香油の匂いが鼻をくすぐる。
「シビさん……、……シビさん……っ、ごめんなさい……」
悲痛な、震える声。正気に戻ったのか?
そう希望を抱いた刹那、俺の唇は彼女の熱い吐息によって強引に塞がれた。
エレナの声は穏やかだが、どこか冷たく響く。
金色の髪がゆっくり揺れ、瞳に優しい光が宿っているのに、その奥に鋭い影がちらつく。
彼女は錫杖を横薙ぎに払う。
杖の先端が空気を切り裂く音が響き、風が俺の頬を撫でるように鋭く吹き抜ける。
そのまま滑らかにくるりと回転させ、最後にトン、と大地を打ち据えた。
その瞬間、エレナの周囲からエネルギーの塊が爆ぜるように噴き出した。
空気が震え、目に見えない力が波のように広がる。
地面が軽く震え、岩の破片がぱらぱらと落ちる音が響く。
冷たい風が俺の体を包み、肌がひりひりしてきやがった。
エネルギーの波が俺に向かって迫り、息が詰まるような圧迫感が胸を押しつぶす。
「上等だよ。戦って目を覚まさせてやるよ!」
俺はミスリルソードをエレナに向けた。
剣の柄を握る手が汗で滑り、指が白くなるほど力を込める。
銀髪が熱風に煽られて乱れ、視界の端が震える。
心臓がドクドクと鳴り、血の音が耳元で響く。
「お優しい綾さんにできるのですか」
そう言って、エレナは錫杖を横薙ぎに払った。
先ほどと、同じかまいたちが俺へと迫る。
空気が切り裂かれる鋭い音が響き、風の刃が俺の肌を切り裂くように近づく。
俺も同時に動いていた。
とっさに地面へ手をかざし、力ある言葉を放つ。
「大地よ、我が意に従い、鋭く尖った槍となって敵を貫け!土陣鋼槍」
本来はエレナの周囲に放ち、足止めするつもりだった。
だが、俺は対象を自分の前へと変更する。
次の瞬間、地面が爆ぜた。
岩肌が鋭い槍となって屹立し、迫る衝撃波を真正面から受け止める。
土が飛び散り、岩の破片が俺の頬を掠めて熱い痛みが走る。
轟音とともに砕け散り、その爆散が衝撃波を相殺した。
土煙が舞い上がり、エレナの視界を一瞬遮った。
埃が喉を刺し、咳き込みそうになる中、俺はタイミングを計った。
今だ。俺は地を蹴り、跳んだ。
足裏に残った泥の感触が弾け、岩の破片が踵に当たって痛みが走る。
体が宙に浮き、重力が一瞬離れる。
銀髪が風を切って後ろに流れ、息が熱く肺を焼く。
空中で刃を振りかぶり、一気に振り下ろした。
ミスリルソードの刃が空気を切り裂く音が響き、剣先が青白く光る。
腕に力が込められ、筋肉が引きつるように熱くなる。
「結構痛いが、倒させてもらう。断轟《だんごう》!」
最大威力の戦士技。
本来なら一撃で命を奪う一太刀だ。
だが俺は急所を外す。この一撃で、戦闘不能にするつもりだった。
剣の軌道をわずかにずらし、エレナの肩か腕を狙う。
刃が空気を切り、風圧が俺の頬を叩く。
エレナと目が合った、その瞬間。
「あぁあああああああああああああああッ!」
次の瞬間、俺の身体が裂けた。
無数の傷口から血が噴き上がり、赤い雨となって宙に散る。
皮膚が裂ける鋭い痛みが全身を駆け巡り、骨が軋む音が体の中で響く。
血の熱さが肌を伝い、服が一瞬で濡れる。
視界が赤く染まり、痛みが脳を突き抜ける。
俺の刃が届くより早く、エレナの周囲にまとわりついていた不可視の刃が、俺を切り刻んでいたのだ。
「シビさん。僧侶呪文にはお詳しくないようですわね」
優雅な声音が響く。
エレナの声が、穏やかで優しいのに、どこか冷たく耳に刺さる。
金色の髪が静かに揺れ、瞳に優しい光が宿っているように見えるのに、その奥に冷たい影がちらつく。
「僧侶呪文で攻防一体の呪文ですわ。防御の刃ですわ」
その言葉とともに、黄金の錫杖が無慈悲に振り下ろされる。
錫杖の先端が空気を切り、黄金の光が一瞬閃く。
俺は地面に転がり、すんでのところでそれをかわす。
手を地面につき、反動で跳躍。
振り向きざま、魔法の矢を放ち牽制する。
指先から青白い矢が飛び出し、エレナに向かって一直線に伸びる。
矢を全部、錫杖で叩き落していた。
金属の響きが洞窟に反響し、矢が砕け散る音が耳に響いた。
「くそっ。あの錫杖チートだろ。強い。今までとは明らかに違う圧。」
腹の傷口から血がじわりと溢れ、布地を黒く濡らす。
痛みが波のように広がり、息を吸うたびに肺が焼けるように熱い。
俺は腹に手を当て、再生呪文を唱える。
「再生呪文ですの? 無粋ですわね」
エレナの声が冷たく響き、錫杖を再び地に打ちつけた。
その切っ先が俺に向けられ、黄金の光が一瞬閃く。
身体を巡っていた再生の光が、ぴたりと鈍る。
……止められている?
温かい光が霧のように薄れ、傷口の熱が再び疼き出す。
俺は意識を集中させ、彼女の干渉に抗う。
頭の奥で何かがぶつかり合う感覚が走り、次の瞬間、バチッという鋭い音が弾けた。
そして、再生の感覚が霧のように消える。
「相殺のみですの。流石ですわ」
女神のような佇まい。
それでいて妖艶な笑みを浮かべ、俺を見つめている。
金色の髪が静かに揺れ、法衣の裾が微かに翻る。
瞳に優しい光が宿っているのに、その奥に冷たい影がちらつく。
唇が湿り、吐息が甘く漂い、胸の膨らみがゆっくり上下する。
彼女の指先が錫杖を優しく撫で、黄金の光が指の間から漏れる。
「本当は……そのまま腐らせて差し上げようと思っていましたのよ。動けなくなった貴女を愛でて、わたくしなしでは何もできないように……ふふ、残念ですわ」
声が甘く、耳元で響く。
言葉の端に、優しさと残酷さが混じり、俺をざわつかせる。
感情を振り切ったエレナは、ここまで強いのか。
基本戦うことを嫌い、いつも後方で支えてくれていた彼女しか知らなかった俺は、今さら思い知る。
さすが、異名持ちの僧侶。
「星屑を纏いし銀の群れよ! 我が祈りに集え!天の牙にて敵を裂き、星の咆哮にて震わせ給え! 顕現せよ。銀の狼王《ステラ・ルプス》!」
エレナの祈りの光が天を裂く。
彼女の声が洞窟全体に響き渡り、空気が震えて光の粒子が無数に舞い上がる。
星屑のような銀色の光が渦を巻き、地上へと降り注ぐ。
その中心から、銀そのものを纏った巨大な狼が姿を現した。
体長は5メートルを超え、毛並みが金属のように輝き、牙が星の光を反射して鋭く閃く。
気高き王の威圧が周囲を圧倒し、空気が重く沈む。
狼の瞳が俺を捉え、低く唸る息遣いが洞窟の壁を震わせる。
次の瞬間、銀狼が一直線に俺へと突進してきた。
地面が震え、爪が岩を削る音が響き、風圧が俺の銀髪を後ろに煽る。
俺も即座に力ある言葉を紡ぐ。
「天より落ちる紫の罰よ……稲妻を集め、槍を成せ……貫け、魂まで焼き尽くせ……!紫電穿槍」
手のひらに紫色の雷が収束し、一本の槍となる。
指先が痺れ、電気が皮膚を焼くように熱く疼く。
雷の槍が青紫に輝き、空気を焦がす匂いが広がる。
それを、銀狼へと投げ放った。
白銀と紫電が絡み合い、軋み、弾ける。
金属と雷の衝突音が耳を劈き、火花が散乱して視界を白く染める。
両者のエネルギーが激突する。
小爆発が連鎖し、空気が震え、洞窟の壁が微かにひび割れる。
衝撃波が俺の体を押し戻し、足が滑り、息が詰まる。
爆発の余波で土煙が舞い上がり、視界がぼやける。
今だ!このスキを見逃さずにミスリルソードを横薙ぎに払う。
刃が空気を切り裂き、凄まじい剣速が衝撃波を生み出す。
剣の軌道に沿って空気が歪み、灰色の波が一直線にエレナへと飛ぶ。
風圧が銀髪を後ろに煽り、息が一瞬止まる。
だが。
彼女も同じ考えだったのか。
エレナも錫杖を横に振り抜き、同質の衝撃波を放つ。
杖の先端から透明な波が爆ぜ、俺の衝撃波と真正面からぶつかる。
二つの刃が空中で激突する。
金属と空気の爆発のような音が洞窟に反響し、耳を劈く轟音が鳴り響いた。
衝撃波が相殺され、光が霧散し、残ったのは荒々しい風圧だけだった。
空気が震え、岩の破片がぱらぱらと落ち、土煙が舞い上がる。
俺の体が後ろに押し戻され、足が滑りそうになる。
「まさか虚空波を防がれるとはな」
おいおい、こちらは戦士技だぞ。なんで僧侶が肉弾戦で互角なんだよ。
まったくいやになるぜ。
エレナの瞳が俺を捉え、穏やかな笑みが浮かんでいた。
銀髪が風に揺れ、法衣の裾が微かに翻る。
彼女の息遣いが少し荒く、胸元がゆっくり上下する。
「お忘れですの?。まだシビさんのその技は完成していませんわ。ならわたくしのこれで何とかなりますわ」
基本遠距離攻撃なんて呪文に頼るからな。ここにきて熟練の低さが裏目に出る。
「それに、わたくしを切りたくないのですよね。その分迷いが威力を押し殺していますわ」
エレナの声が甘く響き、俺の胸をざわつかせる。
彼女の瞳に優しい光が宿っているのに、その奥に冷たい影がちらつく。
唇が湿り、吐息が熱く漏れる。
彼女は肩から法衣をずらし、俺に乳房を見せてきた。
白い布が肩から滑り落ち、豊満な胸が露わになる。
柔らかな曲線が月光のように輝き、ピンク色の先端が硬く尖って空気に触れ、わずかに震えている。
乳房の谷間に汗が光り、肌が熱を帯びてほんのり赤く染まっている。
その美しさに、俺は思わず息を呑み、見とれてしまった。
視線が釘付けになり、喉がごくりと鳴る。
胸の膨らみがゆっくり上下し、吐息が白く漏れる様子が、俺の胸をざわつかせ、下腹部を熱く疼かせる。
「甘いですわ。本当にかわいいお方……」
エレナの唇から零れたのは、蜜のように甘く、毒のように重い慈愛の言葉。
声が耳元で響き、甘い匂いが鼻をくすぐる。
彼女は鋭い踏み込みで距離を詰めると、手に持った重厚な錫杖の石突を、容赦なく俺の腹部へと叩き込んだ。
「ぐ、ふっ……!」
内臓を揺さぶる衝撃に、俺の膝が折れる。
腹の奥が焼けるように痛み、息が詰まり、視界が一瞬白く滲む。
だが、崩れ落ちる間際、彼女の白く細い指が俺の手首を強引に掴んだ。
引き寄せられた先は、修道服の下で脈動する、豊満で柔らかな彼女の胸。
手のひらに伝わる熱、吸い付くような肌の弾力、そして高貴な香油の匂い。
胸の谷間に指が沈み、柔肉が俺の手を包み込むように押し返してくる。
心臓の鼓動が掌に直接伝わり、彼女の体温が俺の体を溶かすように染み込んでくる。
「もう抵抗するのはおやめなさい。わたくしと一つになれば、痛みなど消えてなくなりますわ。二人だけの、悦楽に満ちた完結した世界で……永遠に、まどろみましょう?」
蕩けた瞳で囁く彼女の言葉は、理性をじりじりと侵食する呪詛にも感じる。
唇が俺の耳元に近づき、熱い吐息が首筋を撫でる。
俺は混濁する意識を必死に繋ぎ止め、震える唇で「力」を編み上げる。
「……業火の、精霊よ……我が意に従い……敵を……焼き尽くせ……っ!」
火炎流の詠唱。完成すれば、この至近距離なら彼女を焼き払える。
その瞬間、エレナの表情から狂信的な色が消え、見慣れた、あの慈愛に満ちた聖女の顔に戻った。
瞳が優しく揺れ、唇がわずかに震え、金色の髪が静かに肩に掛かる。
彼女の胸が俺の掌に押し付けられたまま、ゆっくりと上下する。
温もりが俺の体を包み、甘い香油の匂いが鼻をくすぐる。
「シビさん……、……シビさん……っ、ごめんなさい……」
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