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【本編】三章 nuisance (2年次4月)
nuisance -1-
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久我と姫坂は各々週に2、3度は寮の地下で体力筋力等の調整を図っている。
仕事上、あまり使うことは無いが射撃も腕のなまらない程度に続けている。
動体視力を鍛えることも、特殊な脳トレも必要だった。
梟の雛鳥たちは、1年に1度全てにおいての測定を行う。
組織独自の基準値に満たしていない場合は1ヶ月間メニューをこなす必要がある。
病気が分かれば治療も必要だ。
久我も姫坂も基準値を軽く上回り健康体そのものだからそれらの心配はいらないのだが。
測定日には、普段会わない連中も多い。
なんせ金持ちのマンモス学園だ。
1学年だけでも10クラスもある。
姫坂は去年の入学の際に1度測定を受けているが、久我はこの2年の春が初めてだ。
リーダーの立川から用紙を受け取り、空いていそうなものから手をつけていけばいいとのことだった。
測定日は1週間という期間があるが、パートナーと同日に決められた日に行う必要があった。
そろって回る必要は無いが、仕事の関係上同日に済ませる必要があるからだ。
測定が全て終了した時点で測定用紙を立川へと渡すことになっている。
面倒だから2人いっぺんに渡してくれというのが、リーダーからの頼みであった。
そんなわけで久我と姫坂は今日揃って学校を休んでいるが、実際いるのは寮の地下室だ。
因みに綾瀬と鷹司は明後日と日にちがずれていた。
「それじゃ、終わったら中央ロビーで」
「あぁ」
久我は姫坂と分かれ、神経を使いそうなものから片付けていくことにした。
聴力、動体視力、パソコンを使ってのパスワード取得問題。
これらは普段の仕事で鍛えられている。
評価は7段階で、上からS、A、B、C、D、E、ランク外(基準値に満たず)となる。
久我の場合、聴力、動体視力、パスワード取得問題等ほぼAランクであった。
体力面に関して言えば、Sランクである。
通常、仕事を始めて1年目に属するものは、ほとんどの者がC、もしくはそれ以下が多い。
久我は希に優れた人材なのである。
「すげぇ、久我か……Sランク出したぜ?」
「久我ってどこの班だっけ?」
結果が電子掲示板に出ると周囲がざわりと騒がしくなった。
よく分かっていないのは久我1人である。
(そんなに凄いことなのか?)
「おっす!うっわ、マジ?!すげーじゃん、流っ石!」
「…秋元か。そんなに驚くことなのか?」
独特の高音で少し掠れた声は耳にしただけですぐに分かる。Aグループ救護班の一人、秋元倫だ。
秋元はその見た目に反して、組織の仕事について既に2年が経過していた。
久我よりも仕事上では先輩となる。
「大抵の奴は最初の測定でほぼCランクなんだぜ?
Sランクは中々――…去年、パスワード取得と情報収集処理能力測定をパーフェクトでクリアした姫坂にもびっくりしたけどなー」
前代未聞らしいぜ、という秋元に、あいつも只者では無いな、と久我は妙に納得する。
しかし、秋元がここに来ているということは、その相方春名も今日この場に来ていることになる。
…姫坂とかち合わないようにしてもらいたい。
見つけたところで姫坂は無視するだろうが、春名の性格からして知ってて話しかけるだろう。
揉め事はさけたいところだ。
「お前が来ているということは、春名もきているんだな?」
「っそ。…まー、大丈夫だって。
桜介の奴には見かけても絡むなって念を押してあるし。
それより今日でよかったと思うぜ?
明日から俺ら、内診に借り出されるから明日以降の測定だと桜介の内診で姫坂がかち合う可能性が高いもんな」
2分の1の確率だぜーと笑いながら口にする向日に、久我は心から今日で良かったと思わざるを得ない。
「それより問題はさ…」
言いにくそうに口にする向日に、どうしたものかと久我は視線を下に向けた。
なにか、他にもあるのだろうか。
「なんだ?」
「うん―――あんな?
さっき見かけたんだけど、仁村と鬼塚も今日で。
それぞれ姫坂の、前のパートナーだった奴でさ……」
「……」
前のパートナー。
関係を迫った上に、断られ、挙句、心神喪失となりパートナーも解消となった者たちだ。
(名前を知らないということは、クラスが遠いかそもそも学年が違うか……)
久我は知らない相手であるが複雑な思いである。
「まだ、姫坂と問題あるのか?」
「仁村はまだ姫坂のこと恨んでるし、鬼塚は未だに諦めついてないみたいでさ。
二人ともグループ自体を移行したんだけどなー、でも、ほら、なんせ学園が同じだから。
姫坂どこ行っても目立つだろ?それに、あの2人は性格は違っても、どっちもイっちゃってんの。
仁村はプライドだけは高いから悪いのは姫坂だと思い込んでるし、 鬼塚なんて姫坂も自分のことを本当は好きなはずだとか思い込んでるみたいだし。
―――だから…出来れば一緒に回った方がいいぜ?今からでも姫坂探してさ」
何か問題を起こしてとめられるのはこの男、久我正治しかいないと秋元は思っている。
あの姫坂愛良という男は、綺麗な見た目に反して口が悪く勝てる者はそうそういない。
プライドも高いようだし、やられたら倍以上にして返すような性格をしていることを秋元は知っているのだ。
数々の、昔のパートナーはそれに耐えられなかった。
精神鑑定に何度かりだされたことか。
「わかった」
「うん、じゃぁなー、俺もまだ回るところあるし」
「あぁ、忠告ありがとな」
「気にすんなって」
まるで子供のような見た目の秋元に久我は感謝する。親切で教えてくれたのだろう。
(問題を起こされる前に、探すか―――)
性格から言って、姫坂は得意なものや好きなものから攻めていくだろう。
久我は自分の測定用紙を目にする。
体力や知力の測定は終え、あとは身体測定や内診、問診、血液検査等の健診を残すのみである。
健診自体の順路は決まっている為、姫坂も健診を後回しにするはずだ。
(それにあいつは身長もコンプレックスの1つだし、なんせ血液検査は苦手だろうからな…)
だとするとそろそろ測定の方は終えているはずだ。
どちらにしろ、つったっていてもしょうがない。
久我は健診の受付へと足を運ぶことにした。
仕事上、あまり使うことは無いが射撃も腕のなまらない程度に続けている。
動体視力を鍛えることも、特殊な脳トレも必要だった。
梟の雛鳥たちは、1年に1度全てにおいての測定を行う。
組織独自の基準値に満たしていない場合は1ヶ月間メニューをこなす必要がある。
病気が分かれば治療も必要だ。
久我も姫坂も基準値を軽く上回り健康体そのものだからそれらの心配はいらないのだが。
測定日には、普段会わない連中も多い。
なんせ金持ちのマンモス学園だ。
1学年だけでも10クラスもある。
姫坂は去年の入学の際に1度測定を受けているが、久我はこの2年の春が初めてだ。
リーダーの立川から用紙を受け取り、空いていそうなものから手をつけていけばいいとのことだった。
測定日は1週間という期間があるが、パートナーと同日に決められた日に行う必要があった。
そろって回る必要は無いが、仕事の関係上同日に済ませる必要があるからだ。
測定が全て終了した時点で測定用紙を立川へと渡すことになっている。
面倒だから2人いっぺんに渡してくれというのが、リーダーからの頼みであった。
そんなわけで久我と姫坂は今日揃って学校を休んでいるが、実際いるのは寮の地下室だ。
因みに綾瀬と鷹司は明後日と日にちがずれていた。
「それじゃ、終わったら中央ロビーで」
「あぁ」
久我は姫坂と分かれ、神経を使いそうなものから片付けていくことにした。
聴力、動体視力、パソコンを使ってのパスワード取得問題。
これらは普段の仕事で鍛えられている。
評価は7段階で、上からS、A、B、C、D、E、ランク外(基準値に満たず)となる。
久我の場合、聴力、動体視力、パスワード取得問題等ほぼAランクであった。
体力面に関して言えば、Sランクである。
通常、仕事を始めて1年目に属するものは、ほとんどの者がC、もしくはそれ以下が多い。
久我は希に優れた人材なのである。
「すげぇ、久我か……Sランク出したぜ?」
「久我ってどこの班だっけ?」
結果が電子掲示板に出ると周囲がざわりと騒がしくなった。
よく分かっていないのは久我1人である。
(そんなに凄いことなのか?)
「おっす!うっわ、マジ?!すげーじゃん、流っ石!」
「…秋元か。そんなに驚くことなのか?」
独特の高音で少し掠れた声は耳にしただけですぐに分かる。Aグループ救護班の一人、秋元倫だ。
秋元はその見た目に反して、組織の仕事について既に2年が経過していた。
久我よりも仕事上では先輩となる。
「大抵の奴は最初の測定でほぼCランクなんだぜ?
Sランクは中々――…去年、パスワード取得と情報収集処理能力測定をパーフェクトでクリアした姫坂にもびっくりしたけどなー」
前代未聞らしいぜ、という秋元に、あいつも只者では無いな、と久我は妙に納得する。
しかし、秋元がここに来ているということは、その相方春名も今日この場に来ていることになる。
…姫坂とかち合わないようにしてもらいたい。
見つけたところで姫坂は無視するだろうが、春名の性格からして知ってて話しかけるだろう。
揉め事はさけたいところだ。
「お前が来ているということは、春名もきているんだな?」
「っそ。…まー、大丈夫だって。
桜介の奴には見かけても絡むなって念を押してあるし。
それより今日でよかったと思うぜ?
明日から俺ら、内診に借り出されるから明日以降の測定だと桜介の内診で姫坂がかち合う可能性が高いもんな」
2分の1の確率だぜーと笑いながら口にする向日に、久我は心から今日で良かったと思わざるを得ない。
「それより問題はさ…」
言いにくそうに口にする向日に、どうしたものかと久我は視線を下に向けた。
なにか、他にもあるのだろうか。
「なんだ?」
「うん―――あんな?
さっき見かけたんだけど、仁村と鬼塚も今日で。
それぞれ姫坂の、前のパートナーだった奴でさ……」
「……」
前のパートナー。
関係を迫った上に、断られ、挙句、心神喪失となりパートナーも解消となった者たちだ。
(名前を知らないということは、クラスが遠いかそもそも学年が違うか……)
久我は知らない相手であるが複雑な思いである。
「まだ、姫坂と問題あるのか?」
「仁村はまだ姫坂のこと恨んでるし、鬼塚は未だに諦めついてないみたいでさ。
二人ともグループ自体を移行したんだけどなー、でも、ほら、なんせ学園が同じだから。
姫坂どこ行っても目立つだろ?それに、あの2人は性格は違っても、どっちもイっちゃってんの。
仁村はプライドだけは高いから悪いのは姫坂だと思い込んでるし、 鬼塚なんて姫坂も自分のことを本当は好きなはずだとか思い込んでるみたいだし。
―――だから…出来れば一緒に回った方がいいぜ?今からでも姫坂探してさ」
何か問題を起こしてとめられるのはこの男、久我正治しかいないと秋元は思っている。
あの姫坂愛良という男は、綺麗な見た目に反して口が悪く勝てる者はそうそういない。
プライドも高いようだし、やられたら倍以上にして返すような性格をしていることを秋元は知っているのだ。
数々の、昔のパートナーはそれに耐えられなかった。
精神鑑定に何度かりだされたことか。
「わかった」
「うん、じゃぁなー、俺もまだ回るところあるし」
「あぁ、忠告ありがとな」
「気にすんなって」
まるで子供のような見た目の秋元に久我は感謝する。親切で教えてくれたのだろう。
(問題を起こされる前に、探すか―――)
性格から言って、姫坂は得意なものや好きなものから攻めていくだろう。
久我は自分の測定用紙を目にする。
体力や知力の測定は終え、あとは身体測定や内診、問診、血液検査等の健診を残すのみである。
健診自体の順路は決まっている為、姫坂も健診を後回しにするはずだ。
(それにあいつは身長もコンプレックスの1つだし、なんせ血液検査は苦手だろうからな…)
だとするとそろそろ測定の方は終えているはずだ。
どちらにしろ、つったっていてもしょうがない。
久我は健診の受付へと足を運ぶことにした。
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