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【本編】五章 examination (2年次11月・the pastより1週間後)
examination -6-
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春名と秋元のワークルームに集まったのはみな同じくらいの時間だった。
鷹司が足を踏み入れると、相方綾瀬が出迎えた。
「お疲れー真ー」
「伊織、来てたのか?」
「だってさぁ……うっわ、澤邑だけボロボロじゃん!
にししっ、随分やられたな!」
「うるせぇっての」
にぎやかなのは良いが、と久我は眉を顰めた。
「綾瀬、姫坂はどうした」
「あー、それがさぁ、ばれそうになちゃったから眠らせちゃったんだよねー」
「眠らせた?」
「スプレーでしゅっと!
そろそろ起きてもいいころかな?
もう起きたら怒られる覚悟で―――」
「どこにいる」
「へ?」
「どこにいるんだ!?」
鷹司、綾瀬、王寺、澤邑があっけに取られている中、久我は綾瀬に詰め寄った。
状況を飲み込めているのは、救護班の秋元と春名だけだった。
「な、なんだよぉ?
救護室にいるよ、姫坂はー。
いっちゃん右端の部屋っ!
ベットん中!」
「っ……」
久我はそれを聞くと言われたその部屋に足を運んだ。
ノックもせず扉を開く。
他のものは、リビングから久我が部屋に入っていく様子だけを眺めた。
「な、なんだよ、久我の奴ぅ、こっわー」
びびったぁと言いながらへなりとしゃがみこむ綾瀬を、まぁまぁと鷹司が宥めた。
「くくっ、そんなに大事なのか?」
王寺が面白そうに笑うと、秋元が口を開いた。
「姫坂さ、睡眠薬とか痛み止めとか眠りが深くなるの駄目なんだよ」
「へ?」
綾瀬がはっとして顔を上げた。
「絶対使わないんよ、傷塞ぐ時すら痛み止めなしでするくらいに……」
「え?嘘?そ、そうなの?
ど、どうしよう、真~!?
姫が、姫がっ!」
おろおろと騒ぎ出した綾瀬に、鷹司は落ち着くよう両肩を握る。
「でも、久我がいったから大丈夫だよな?」
秋元に同意を求められて、春名は頷いた。
自分たち救護班よりも、相方の久我に任せるのが一番良いだろう。
「姫ちゃんのことは久我に任せて、とりあえず腹減ったんとちゃう?」
「あ、0時回ってる!今日は桜介の当番だぜ?な?な?」
「阿呆、夕飯や、倫ちゃん、自分やれ」
「えー!?」
「あ、じゃ、じゃぁ、俺が作るっ!」
何かしてないと気になってしょうがないと、綾瀬は立ち上がった。
仕事の出来はいまいちでも、料理の腕はプロなみなのである。
「…お前出来るのかよ?」
澤邑が驚いたように口にすると、答えは鷹司から返ってきた。
「澤邑、伊織は料理だけは得意なんだよ」
「真っ!だけってなんだよ、だけって!」
「あ、えっと…、ごめん、伊織」
やがて綾瀬の手によりチキンオムライスとコンソメスープが運ばれる。
「出来たのか?」
「おぉ、すげー!」
「やった、うまそうーっ!」
秋元のテンションがあがるのはわかるが、王寺と澤邑までかなりテンションが上がってるのを見て綾瀬はあっけにとられた。
喜んでくれるのは、嬉しいにかわりないが。
その疑問の答えが秋元から返ってくる。
「俺と桜介はともかくさ、澤邑と優成は飯かなりやばいもんなー?」
「うるせぇぞ、倫!」
「1度行ったらさ、台所すげーの!」
「最近はまともなもん食ってるっての」
スプーンの先を突き出すように秋元に述べるも、更なる打撃が澤邑を襲う。
「自信満々だけど、それって桜介が作ったり、立川がこっそり差し入れしてるからだろー?
電子レンジでチンするだけなら、優成と澤邑にも出来るもんなー?」
「くっ……」
何も言えない澤邑は、やけ食いとばかりにオムライスを口に運んでいった。
鷹司が足を踏み入れると、相方綾瀬が出迎えた。
「お疲れー真ー」
「伊織、来てたのか?」
「だってさぁ……うっわ、澤邑だけボロボロじゃん!
にししっ、随分やられたな!」
「うるせぇっての」
にぎやかなのは良いが、と久我は眉を顰めた。
「綾瀬、姫坂はどうした」
「あー、それがさぁ、ばれそうになちゃったから眠らせちゃったんだよねー」
「眠らせた?」
「スプレーでしゅっと!
そろそろ起きてもいいころかな?
もう起きたら怒られる覚悟で―――」
「どこにいる」
「へ?」
「どこにいるんだ!?」
鷹司、綾瀬、王寺、澤邑があっけに取られている中、久我は綾瀬に詰め寄った。
状況を飲み込めているのは、救護班の秋元と春名だけだった。
「な、なんだよぉ?
救護室にいるよ、姫坂はー。
いっちゃん右端の部屋っ!
ベットん中!」
「っ……」
久我はそれを聞くと言われたその部屋に足を運んだ。
ノックもせず扉を開く。
他のものは、リビングから久我が部屋に入っていく様子だけを眺めた。
「な、なんだよ、久我の奴ぅ、こっわー」
びびったぁと言いながらへなりとしゃがみこむ綾瀬を、まぁまぁと鷹司が宥めた。
「くくっ、そんなに大事なのか?」
王寺が面白そうに笑うと、秋元が口を開いた。
「姫坂さ、睡眠薬とか痛み止めとか眠りが深くなるの駄目なんだよ」
「へ?」
綾瀬がはっとして顔を上げた。
「絶対使わないんよ、傷塞ぐ時すら痛み止めなしでするくらいに……」
「え?嘘?そ、そうなの?
ど、どうしよう、真~!?
姫が、姫がっ!」
おろおろと騒ぎ出した綾瀬に、鷹司は落ち着くよう両肩を握る。
「でも、久我がいったから大丈夫だよな?」
秋元に同意を求められて、春名は頷いた。
自分たち救護班よりも、相方の久我に任せるのが一番良いだろう。
「姫ちゃんのことは久我に任せて、とりあえず腹減ったんとちゃう?」
「あ、0時回ってる!今日は桜介の当番だぜ?な?な?」
「阿呆、夕飯や、倫ちゃん、自分やれ」
「えー!?」
「あ、じゃ、じゃぁ、俺が作るっ!」
何かしてないと気になってしょうがないと、綾瀬は立ち上がった。
仕事の出来はいまいちでも、料理の腕はプロなみなのである。
「…お前出来るのかよ?」
澤邑が驚いたように口にすると、答えは鷹司から返ってきた。
「澤邑、伊織は料理だけは得意なんだよ」
「真っ!だけってなんだよ、だけって!」
「あ、えっと…、ごめん、伊織」
やがて綾瀬の手によりチキンオムライスとコンソメスープが運ばれる。
「出来たのか?」
「おぉ、すげー!」
「やった、うまそうーっ!」
秋元のテンションがあがるのはわかるが、王寺と澤邑までかなりテンションが上がってるのを見て綾瀬はあっけにとられた。
喜んでくれるのは、嬉しいにかわりないが。
その疑問の答えが秋元から返ってくる。
「俺と桜介はともかくさ、澤邑と優成は飯かなりやばいもんなー?」
「うるせぇぞ、倫!」
「1度行ったらさ、台所すげーの!」
「最近はまともなもん食ってるっての」
スプーンの先を突き出すように秋元に述べるも、更なる打撃が澤邑を襲う。
「自信満々だけど、それって桜介が作ったり、立川がこっそり差し入れしてるからだろー?
電子レンジでチンするだけなら、優成と澤邑にも出来るもんなー?」
「くっ……」
何も言えない澤邑は、やけ食いとばかりにオムライスを口に運んでいった。
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