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【本編】五章 examination (2年次11月・the pastより1週間後)
examination -8-
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『はい、Aグループ救護班!』
久我がスマホから電話をすると、取ったのは運よく秋元であった。
ワークルームにいけばいいのだが、それが出来ないから久我は動くことなくスマホを手にしたのである。
電話の最中にも右手で姫坂の背を支え、安心させるようにトントンと叩く。
「秋元か?」
『あれ?久我?―――どうかしたのか?』
動けないことを察したのだろう。
そういうのを見抜くのが早い。
秋元の長所の1つだった。
「悪いけど、タオルと着替えあるか?」
『タオルならベッドの下の棚に入ってるから好きなだけ使っていいぜ?
姫坂の着替えならタオルと同じにベッドの下の引き出しにパジャマが入ってる。
シャワー使うんなら、引き戸の、洗面台の右横が、ユニットバス。
風呂は洗ってあるからお湯はれば浸かれるし。
―――…久我も着替え必要なのか?』
一緒に泊まる気でいる久我だが、パジャマではいざというときに動けない。
秋元が言うのは、今必要かということだ。
「あぁ、上だけ貸してくれ」
『わかった、とりあえあず桜介のもってく。
飯もいる?綾瀬がオムライスとスープ作ってくれたんだぜ?結構美味いけど』
腹は減っているが今は無理だろう。
久我の優先するものは自分よりも相方、姫坂である。
「後でもらう」
『わかった』
「助かる」
『いーって、じゃ、着替えだけもってくな?―――すぐでいいのか?』
「30分後に頼む」
『了ー解』
電話を切り、携帯はズボンのポケットへと押し込まれた。
便器に突っ伏していた姫坂の肩を支える。
「…ごめん」
「大丈夫か?
もしよくなったんなら、シャワーを浴びたほうがいい」
その方がさっぱりするだろうと伝えれば、姫坂はこくりと頷いた。
汗も酷くかいているし、顔も涙で濡れている。
今はすっきりしたようだが、最初に嘔吐したときは間に合わずカッターシャツは汚れたのだ。
そのままでは気持ちが悪いだろう。
姫坂をその場に残したまま、久我はバスダブに湯をはる。
汚れたシャツを脱ぎ洗面台の横にあったかごへと入れる。
それからスマホを机の上に置くと、姫坂のタオルとパジャマを用意した。
姫坂の背をささえるように、洗面台へと促す。
「脱いでいる間に湯がはれるはずだけど。1人で大丈夫か?」
「だ、大丈夫っ」
1人で大丈夫か、との言葉に姫坂はその先の言葉を想像してしまい答えた声が裏返ってしまった。
久我はそうかとだけ口にし、洗面所の扉を閉めた。
「なら、何かあったら呼んでくれ、呼べば聞こえる」
「わかった」
扉越しに答えた後、姫坂は風呂の扉を開けた。
丁度湯がはれたころだった。
1度シャワーを浴びて、湯船に浸かる。
思わずため息が出てしまう。
状況がまだよくつかめていないが、とりあえず心配することは無いのだろう。
久我のことは何よりも信頼できる姫坂であった。
久我がスマホから電話をすると、取ったのは運よく秋元であった。
ワークルームにいけばいいのだが、それが出来ないから久我は動くことなくスマホを手にしたのである。
電話の最中にも右手で姫坂の背を支え、安心させるようにトントンと叩く。
「秋元か?」
『あれ?久我?―――どうかしたのか?』
動けないことを察したのだろう。
そういうのを見抜くのが早い。
秋元の長所の1つだった。
「悪いけど、タオルと着替えあるか?」
『タオルならベッドの下の棚に入ってるから好きなだけ使っていいぜ?
姫坂の着替えならタオルと同じにベッドの下の引き出しにパジャマが入ってる。
シャワー使うんなら、引き戸の、洗面台の右横が、ユニットバス。
風呂は洗ってあるからお湯はれば浸かれるし。
―――…久我も着替え必要なのか?』
一緒に泊まる気でいる久我だが、パジャマではいざというときに動けない。
秋元が言うのは、今必要かということだ。
「あぁ、上だけ貸してくれ」
『わかった、とりあえあず桜介のもってく。
飯もいる?綾瀬がオムライスとスープ作ってくれたんだぜ?結構美味いけど』
腹は減っているが今は無理だろう。
久我の優先するものは自分よりも相方、姫坂である。
「後でもらう」
『わかった』
「助かる」
『いーって、じゃ、着替えだけもってくな?―――すぐでいいのか?』
「30分後に頼む」
『了ー解』
電話を切り、携帯はズボンのポケットへと押し込まれた。
便器に突っ伏していた姫坂の肩を支える。
「…ごめん」
「大丈夫か?
もしよくなったんなら、シャワーを浴びたほうがいい」
その方がさっぱりするだろうと伝えれば、姫坂はこくりと頷いた。
汗も酷くかいているし、顔も涙で濡れている。
今はすっきりしたようだが、最初に嘔吐したときは間に合わずカッターシャツは汚れたのだ。
そのままでは気持ちが悪いだろう。
姫坂をその場に残したまま、久我はバスダブに湯をはる。
汚れたシャツを脱ぎ洗面台の横にあったかごへと入れる。
それからスマホを机の上に置くと、姫坂のタオルとパジャマを用意した。
姫坂の背をささえるように、洗面台へと促す。
「脱いでいる間に湯がはれるはずだけど。1人で大丈夫か?」
「だ、大丈夫っ」
1人で大丈夫か、との言葉に姫坂はその先の言葉を想像してしまい答えた声が裏返ってしまった。
久我はそうかとだけ口にし、洗面所の扉を閉めた。
「なら、何かあったら呼んでくれ、呼べば聞こえる」
「わかった」
扉越しに答えた後、姫坂は風呂の扉を開けた。
丁度湯がはれたころだった。
1度シャワーを浴びて、湯船に浸かる。
思わずため息が出てしまう。
状況がまだよくつかめていないが、とりあえず心配することは無いのだろう。
久我のことは何よりも信頼できる姫坂であった。
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