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本編
-158- イチャイチャはふたりきりの時に*
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「───っなんで話ながらイチャイチャすんだよ、勘弁してくれよ」
「ごめんなさい。アサヒが可愛らしくて、つい」
「………」
アレックス様からの通信を切って、開口一番に文句を言うと、抱きしめられると同時にすぐに謝罪が降ってくる。
理由が理由だけにこれ以上怒れない。
怒ったっていいけど、不本意に怒るのは怒る方が疲れるんだ。
あったかくも頼もしい腕に抱きしめられて、怒りも凪いでいく。
恋愛において、こんなふわふわした感情になるのは、本当に久しい。
それもそうだ。
相当昔、片思いで友人のまま終えた中学時代まで遡っちまう。
まあ、向こうは気が付いてなかっただろうな。
俺はずっと猫を被り続けて、いい子ちゃんで、優等生な自分だけを見せていたし、我が儘も一切見せなかった。
それに、自分の恋心に気が付かれるのを恐れて、こっちからのボディタッチは絶対にしなかった。
まあ、あいつは距離が近かったから、良く肩を回してきたり、ヘッドロックかけてきたりしたっけ。
疎遠になったのは、俺の気持ちがバレたわけじゃないだろう。
クラス替えが一番の理由で、更に俺が生徒会なんぞに入ったから、自然と距離ができた。
裏番長な噂がちょうど裏で回り始めた頃でもあるが。
噂は本当だったわけで、あえて否定も肯定もしなかった。
成績優秀で授業態度も良く、細身で色白で、生徒会役員。
教師たちが本気にするはずもなく、真相すら聞かれたことはなかった。
馬鹿げた話だと思われていただろう。
まあ、ともかく。
初恋だろうそれは、甘酸っぱい思い出として心の底に残ってるからいい。
それ以外はろくな恋愛してなかったからな。
「何を考えているんですか?」
「え?」
「私の腕の中で私以外のことを考えないでください」
そう言って首筋に顔を埋めてくるオリバーは鋭い。
本当に、こういう時だけ鋭いんだ。
いつも重要なとこでへっぽこかましてくる癖に、こういう時だけ。
そして、いつも俺は、そのたびにときめいちまう。
毎日こんなときめいてばかりでいいのか?
それとも俺に経験がなかっただけで、普通は、毎日の日常をこうやって何度もときめいて暮らしてるのか?
「や、なんか、恋人……まあ、もう夫夫なわけだけどさ。付き合ってこんなふわふわした感情になってんのオリバーだけだなって思っただけ」
「私もこんなに心惹かれたのはアサヒだけです」
言い訳がましくも本心を述べると、すぐさま甘い言葉が返ってきた。
拘束が緩むのを合図に、肩越しに振り替えるとすぐに口づけが落ちてくる。
一度触れるだけの口づけ。
唇が離れた後に、鼻先をちょんとつけるのは、オリバーの癖だ。
口付けの時にはぶつからないのに、時折こうやって俺の出方を待つ。
出方っつーか、気持ちを確かめてるっつーか。
たぶん俺が離れたらそのまま終わるんだろうけど。
それはちょっと寂しい。
鼻先を少し離し、オリバーの肩に手をかけてそのままくるりと反転する。
後ろからのキスも好きだけれど、やっぱキスは向き合ってする方がいい。
腕を回すだけで、俺の意図をわかって、すぐに口づけに応じてくれる。
触れるだけの口づけが、啄むような口づけに変わる。
あー……ヤバい、すげー気持ちいい。
こういうキスは、胸がいっぱいになる。
ダイレクトに下半身に来るような、官能的な深い口づけもそれはそれで好きだ。
でも、こうやって気持ちを確かめ合うような、甘い口づけもすげー好き。
俺の腰を支えてくれていたあたたかい腕に促されて、ローサイドボードに乗り上げる。
頑丈なサイドボードは俺が座っても悲鳴をあげはしなかったが、片手をついた拍子に、梟の足に触れて、梟がカタリと音を立てた。
すぐに意識が梟へと移る。
あっぶね。
違う意味でドキドキしちまった。
こんな理由で壊しちまったら、阿呆過ぎるし悲惨過ぎる。
俺等、もういい大人だろうが。
「ふふっ……ごめんなさい」
「すげーびっくりした」
オリバーは笑いながら謝ってきた。
俺のその手を取って、指を絡めて掌を合わせてくる。
梟に当たったことを謝ってるのか、俺の気をそらしちまったことに謝ってるのか。
どっちもか?
「降ろしてくんね?」
俺の足の間にオリバーの身体があるから降りられない。
ってか、こんなふうに言ったって、はい、とすぐに降ろしてはくれねーだろうな。
言葉と気持ちがちぐはぐで、本当は離れたくないってのが、バレバレだ。
案の定、オリバーは楽しそうに綺麗な笑みをひく。
「嫌だと言ったら?」
「このままじゃお前の腕ん中にいても、こいつにずっと気を取られるけど?」
「それは困りますね」
「じゃあ───」
「ベッドとソファとどちらがいいですか?」
そのままふわっと抱き上げられて、そんなことを尋ねてくる。
運痴な癖に、力自体はめちゃくちゃある。
そういう身体をしてる。
軽々と抱き上げてくるその腕に、またときめく。
「っベッドは駄目だ」
「……仕方ないですね。夜まで待ちましょう」
夜まで?
今日もやんのか?
まあ、俺は嬉しいだけだから良いけどさ。
そんな風に言われたら、マジで期待する。
オリバーがその気じゃなくても、俺から誘えばいっか。
俺だけじゃなくて、オリバーだって俺に心底弱いんだもんな。
「そうしてくれ」
「喜んで」
甘やかな時間が流れる。
すげー幸せだ。
「ごめんなさい。アサヒが可愛らしくて、つい」
「………」
アレックス様からの通信を切って、開口一番に文句を言うと、抱きしめられると同時にすぐに謝罪が降ってくる。
理由が理由だけにこれ以上怒れない。
怒ったっていいけど、不本意に怒るのは怒る方が疲れるんだ。
あったかくも頼もしい腕に抱きしめられて、怒りも凪いでいく。
恋愛において、こんなふわふわした感情になるのは、本当に久しい。
それもそうだ。
相当昔、片思いで友人のまま終えた中学時代まで遡っちまう。
まあ、向こうは気が付いてなかっただろうな。
俺はずっと猫を被り続けて、いい子ちゃんで、優等生な自分だけを見せていたし、我が儘も一切見せなかった。
それに、自分の恋心に気が付かれるのを恐れて、こっちからのボディタッチは絶対にしなかった。
まあ、あいつは距離が近かったから、良く肩を回してきたり、ヘッドロックかけてきたりしたっけ。
疎遠になったのは、俺の気持ちがバレたわけじゃないだろう。
クラス替えが一番の理由で、更に俺が生徒会なんぞに入ったから、自然と距離ができた。
裏番長な噂がちょうど裏で回り始めた頃でもあるが。
噂は本当だったわけで、あえて否定も肯定もしなかった。
成績優秀で授業態度も良く、細身で色白で、生徒会役員。
教師たちが本気にするはずもなく、真相すら聞かれたことはなかった。
馬鹿げた話だと思われていただろう。
まあ、ともかく。
初恋だろうそれは、甘酸っぱい思い出として心の底に残ってるからいい。
それ以外はろくな恋愛してなかったからな。
「何を考えているんですか?」
「え?」
「私の腕の中で私以外のことを考えないでください」
そう言って首筋に顔を埋めてくるオリバーは鋭い。
本当に、こういう時だけ鋭いんだ。
いつも重要なとこでへっぽこかましてくる癖に、こういう時だけ。
そして、いつも俺は、そのたびにときめいちまう。
毎日こんなときめいてばかりでいいのか?
それとも俺に経験がなかっただけで、普通は、毎日の日常をこうやって何度もときめいて暮らしてるのか?
「や、なんか、恋人……まあ、もう夫夫なわけだけどさ。付き合ってこんなふわふわした感情になってんのオリバーだけだなって思っただけ」
「私もこんなに心惹かれたのはアサヒだけです」
言い訳がましくも本心を述べると、すぐさま甘い言葉が返ってきた。
拘束が緩むのを合図に、肩越しに振り替えるとすぐに口づけが落ちてくる。
一度触れるだけの口づけ。
唇が離れた後に、鼻先をちょんとつけるのは、オリバーの癖だ。
口付けの時にはぶつからないのに、時折こうやって俺の出方を待つ。
出方っつーか、気持ちを確かめてるっつーか。
たぶん俺が離れたらそのまま終わるんだろうけど。
それはちょっと寂しい。
鼻先を少し離し、オリバーの肩に手をかけてそのままくるりと反転する。
後ろからのキスも好きだけれど、やっぱキスは向き合ってする方がいい。
腕を回すだけで、俺の意図をわかって、すぐに口づけに応じてくれる。
触れるだけの口づけが、啄むような口づけに変わる。
あー……ヤバい、すげー気持ちいい。
こういうキスは、胸がいっぱいになる。
ダイレクトに下半身に来るような、官能的な深い口づけもそれはそれで好きだ。
でも、こうやって気持ちを確かめ合うような、甘い口づけもすげー好き。
俺の腰を支えてくれていたあたたかい腕に促されて、ローサイドボードに乗り上げる。
頑丈なサイドボードは俺が座っても悲鳴をあげはしなかったが、片手をついた拍子に、梟の足に触れて、梟がカタリと音を立てた。
すぐに意識が梟へと移る。
あっぶね。
違う意味でドキドキしちまった。
こんな理由で壊しちまったら、阿呆過ぎるし悲惨過ぎる。
俺等、もういい大人だろうが。
「ふふっ……ごめんなさい」
「すげーびっくりした」
オリバーは笑いながら謝ってきた。
俺のその手を取って、指を絡めて掌を合わせてくる。
梟に当たったことを謝ってるのか、俺の気をそらしちまったことに謝ってるのか。
どっちもか?
「降ろしてくんね?」
俺の足の間にオリバーの身体があるから降りられない。
ってか、こんなふうに言ったって、はい、とすぐに降ろしてはくれねーだろうな。
言葉と気持ちがちぐはぐで、本当は離れたくないってのが、バレバレだ。
案の定、オリバーは楽しそうに綺麗な笑みをひく。
「嫌だと言ったら?」
「このままじゃお前の腕ん中にいても、こいつにずっと気を取られるけど?」
「それは困りますね」
「じゃあ───」
「ベッドとソファとどちらがいいですか?」
そのままふわっと抱き上げられて、そんなことを尋ねてくる。
運痴な癖に、力自体はめちゃくちゃある。
そういう身体をしてる。
軽々と抱き上げてくるその腕に、またときめく。
「っベッドは駄目だ」
「……仕方ないですね。夜まで待ちましょう」
夜まで?
今日もやんのか?
まあ、俺は嬉しいだけだから良いけどさ。
そんな風に言われたら、マジで期待する。
オリバーがその気じゃなくても、俺から誘えばいっか。
俺だけじゃなくて、オリバーだって俺に心底弱いんだもんな。
「そうしてくれ」
「喜んで」
甘やかな時間が流れる。
すげー幸せだ。
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