異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

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本編

-168- 使い道*

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「……おい、いつまでそうしてんだ?」
「何故です?……っ何故、それを手にしてるんです?」
「何故って、見つけたから。自分の部屋のベッドの下にあったら何だろなって思うだろ?」
「ええ、そう……ですよね、はい、です、ね……」


フェラホールを手にした俺に、扉の前で崩れ落ちたままのオリバー。
なんつーか、浮気の証拠でも見つけちまったような感覚が訪れた。
浮気?
や、あながち間違っちゃいないかもしんねえ。
だって、フェラホールだぞ?
使われていないってことに少しだけ安心したが、隠す必要があるって思うくらいには後ろめたいもんなんだろ?

「俺からもいいか?」
「───はい」

すげー溜めたな、“はい”を。
そんな覚悟しなくても、俺はそこまで怒っちゃいない……多分、おそらく。

「このフェラホール、いつのだ?キャンベル商会のだろ?」
「ハンドクリームの契約をした日です。コナーから押し付けられて、捨てに捨てられず。あ、ちゃんと断ったのですよ?でも、最終的に負けてしまいました」
「なるほど」

経緯は大体わかったし、まあ想像から殆ど外れちゃいなかった。
自分で買ったもんじゃないだけ、及第点だ。

俺が商会の見学に行った時間に押し付けられでもしたんだろう。
コナーとオリバーとじゃ、よっぽどのことじゃない限りオリバーが負けるに決まってる。
よっぽどのことって、俺関連な。
あ、ヤバい、またこんなことでときめいちまう。
フェラホール手にときめくってどんな状況だよ、ったく。

って、待て。
コナーとオリバー一対一じゃわかるが、そこにアレックス様もいただろうが。
アレックス様なら、こんな魔道具押し付けられてるオリバーの肩持ってくれるんじゃねえの?

「アレックス様がいただろ?なのに負けたのか?」
「アレックスが折れたので私も同じように持ち帰りました。おそらく本気で嫌気がさしていたように思います」
「うわ、マジか」

アレックス様にも勧めたのか?
コレを?
蓮君がいるのを知ってて?
阿呆だろ、コナーの奴。

相手はコナーだ。
アレックス様にも譲らずグイグイ行くだろう。
アレックス様は、あまりにしつこいから受け取るだけ受け取って、空間にしまい込み、こんなものは最初からなかったことにしたんだろうな、きっと。

オリバーのためにももう少し頑張って欲しかった、などと思いつつ俺はコレをどうするべきか考える。

親指と人差し指で摘んでプランプランと左右に揺らしてると、オリバーが俺の手を抑えた。

「怒ってますか?」
「お前には怒ってねえよ?ただ、ベッドの下って、ガキみたいなことすんだなって呆れてはいる」
「クローゼットの中では、十中八九タイラーに見つかります」
「ははっそりゃそうだ」

両手で顔を覆うオリバーの子供じみた仕草が可笑しくて笑っちまう。
一応考えての、俺のベッドの下だったらしい。

「捨てましょう」

そもそも受け取るべきではありませんでした、と抱きしめながらも謝ってくるオリバーに満足してる俺がいる。

「や、捨てんのは勿体ないだろ」
「使いませんし、使わせませんよ?」
「分かってるって」
「なら?」

「返そうぜ?」
「え……」
「安心しろ、俺の名前で返す」

作動するかを確かめはしたが未使用品だ。
ならば、別の必要な誰かに譲った方が良いだろう。

「ですが、一度渡したものをコナーが受け取るでしょうか?運送ギルドを通しても、また戻ってくるのでは?」
「大丈夫だ。俺がこの商品の利益を出す方法をいくつか添えて突っ返してやるから、任せろ」

コレをコナーがオリバーに寄越したのは、嫌がらせじゃなく、本当に自信を持っているからだろう。
ならば、実際に使用せずとも、感想や売り方をきっちり添えれば突っ返しても受け取るはずだ。
その場の損得勘定だけじゃねえ奴だけど、仕事に関しちゃ根っこは損得勘定だ。
総合的に、数年先に、と考えたら、結局は、なんだよな、きっと。
常に自分が不利にはならない方法を取るだろう。

その上をいくのは、悪くない選択だ。
多く与えたら、それだけ後で返ってくる奴だってことも知ってる。
テイカーと思わせて、バランスのいいマッチャータイプな奴だ。

オリバーなんか、典型的なギバーだよなあ。
まあ、もう俺がいる限り、仕事上ではそうさせないけどな。
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