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本編
-169- お返し
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今日はシリルの家に最後の往診だ。
今日も先に手土産の店によって、それから医者んところによって、シリルの家に行くっつー予定だ。
今から向かうは、プリンの店。
場所はこの間のカップケーキの三軒隣だというから、客層も似たり寄ったりのはずだ。
テイクアウトだけの店らしいが、種類は豊富で人気だとマクシムが言っていた。
瓶詰めで売られていて、付属で木製のスプーンがついているらしい。
マクシムの奥さんとお嬢さんはたくさんの候補の中から、色々と考慮して今回の店を選んでくれたみたいだ。
瓶詰なら冷やせばお土産にも渡せるだろう。
今日は天気がいいし、この時期にしてはとても暖かいな。
月日や四季に関しちゃ、元の世界の日本とそう変わりはない。
一年十二カ月で、ひと月が等しく三十日と近いものがあるし、卒業は三月、新年度は四月だ。
太陽は太陽だし、一つだけだ。
月も同じく一つだし、ちゃんと満ち欠けする。
夜は星がこれでもかと散りばめられて見えるし、空を移動する。
ただまあよくよく聞けば、球体じゃなく平面だったり、空にも陸があったり、地下深くにも都市があったりするらしいから色々聞くとそもそもの概念が全く異なるのがわかる。
けれど、暮らしていく上ではそう困ることでもない。
日本と変わらない四季があって、誕生日や年末年始を祝う風習があって、物の売り買いがあって、食うものにも困っていない。
不自由がないどころか快適過ぎる暮らしだ。
豪邸に住んで、三食おやつ付きで、自由気ままに愛する人と一緒に過ごせているんだもんな。
欲を言えば、移動手段が馬車というのが、時間がかかるしいつの時代だよ、とツッコミを入れたくなる。
けど、こっちで暮らしていると、そもそも移動時間も惜しいほど多忙に追われるような暮らしじゃない。
だから、オリバーと共にのんびりぱっかぱっかと馬車で移動するのも、まあいいかなと思えてくる。
魔法というファンタジーな生活習慣にもようやく慣れてきた。
結局、あれから魔法の付与は中断された。
髪飾りはまだ出来ていない。
あの後、俺はコナーにレポートという名の手紙を書くのを優先した。
あんときのおはぎの目が、笑えるくらいオリバーを睨んでいた。
おはぎがにらんだところで、顔が可愛いから可愛いだけだ。
今回も『オリバーが悪い!』と言っていたが、まあ今回も確かにオリバーが悪いよな。
けれど、おはぎとタイラーとソフィアの三人のお守りは成功した。
小さな巾着の中にそれを入れてプレゼントしたところとても喜んでもらえた。
タイラーもソフィアも外出時には必ず持ち歩くと言ってくれた。
魔法の発動がないことを祈るだけだ。
そうそう、それから喜んでもらえただけじゃなくて、次の日にお返しまでもらっちまったんだよな。
ソフィアからは、レースが控えめな刺繍のハンカチだった。
刺繍はソフィアのお手製だ。
お守りのお礼というより、日ごろのお礼として隙間時間に少しずつ刺繍をしてくれていたようだ。
この世界は、身近な人への贈り物に刺繍のハンカチを渡すのが定番らしくて、オリバーもソフィアの刺繍のハンカチを持っていると聞いた。
定番ってのを聞いてもさ、この刺繍がすげーの。
色とりどりの小さな花や薬草の中心におはぎがちょこんと座ってるっつーめちゃくちゃ可愛い刺繍だった。
ちなみに、ハンカチのレースについては、女性だけじゃなくて男性夫人にも人気があるらしい。
本来は、もっとびらっびらなものが好まれるようだが、俺には抵抗があり過ぎる。
ソフィアはセンスがいい。
こんな可愛いハンカチは使うのが勿体ないくらいだが、汚れたらすぐに浄化すりゃ元通りだから、毎日でも使いたいくらいだ。
タイラーからは、小瓶に入ったドライフルーツを貰った。
レモンにオレンジにパイン、ぶどうやイチゴやリンゴと種類が豊富で、そのまま摘んで食べてもいいし、お茶にして飲んだ後柔らかくなったもんを食べるのも美味しいらしい。
瓶には魔法が効いていて、そのまま放置しても三ヶ月はもつという。
コレ、瓶がすげー高いんじゃないかと思うが、瓶を持っていくと量り売りで購入出来る店らしく、そこは経済的でもあるようだ。
見た目もカラフルで可愛いので、書斎に置いて、おやつ以外にタイラーがお茶を入れてくれる時に摘むことにした。
自然な甘さと酸味が美味しくて、体にも良いらしい。
そして、極めつけにおはぎがくれたのは人に見せられないくらいには、貴重なものだった。
見た目はなんの変哲も価値もあんまりなさそうな真っ黒な輪っか、細い腕輪だった。
俺がおはぎの目に似た石でお守りを作ったので、おはぎも俺に似た黒いものをくれたんだと思った。
今日も先に手土産の店によって、それから医者んところによって、シリルの家に行くっつー予定だ。
今から向かうは、プリンの店。
場所はこの間のカップケーキの三軒隣だというから、客層も似たり寄ったりのはずだ。
テイクアウトだけの店らしいが、種類は豊富で人気だとマクシムが言っていた。
瓶詰めで売られていて、付属で木製のスプーンがついているらしい。
マクシムの奥さんとお嬢さんはたくさんの候補の中から、色々と考慮して今回の店を選んでくれたみたいだ。
瓶詰なら冷やせばお土産にも渡せるだろう。
今日は天気がいいし、この時期にしてはとても暖かいな。
月日や四季に関しちゃ、元の世界の日本とそう変わりはない。
一年十二カ月で、ひと月が等しく三十日と近いものがあるし、卒業は三月、新年度は四月だ。
太陽は太陽だし、一つだけだ。
月も同じく一つだし、ちゃんと満ち欠けする。
夜は星がこれでもかと散りばめられて見えるし、空を移動する。
ただまあよくよく聞けば、球体じゃなく平面だったり、空にも陸があったり、地下深くにも都市があったりするらしいから色々聞くとそもそもの概念が全く異なるのがわかる。
けれど、暮らしていく上ではそう困ることでもない。
日本と変わらない四季があって、誕生日や年末年始を祝う風習があって、物の売り買いがあって、食うものにも困っていない。
不自由がないどころか快適過ぎる暮らしだ。
豪邸に住んで、三食おやつ付きで、自由気ままに愛する人と一緒に過ごせているんだもんな。
欲を言えば、移動手段が馬車というのが、時間がかかるしいつの時代だよ、とツッコミを入れたくなる。
けど、こっちで暮らしていると、そもそも移動時間も惜しいほど多忙に追われるような暮らしじゃない。
だから、オリバーと共にのんびりぱっかぱっかと馬車で移動するのも、まあいいかなと思えてくる。
魔法というファンタジーな生活習慣にもようやく慣れてきた。
結局、あれから魔法の付与は中断された。
髪飾りはまだ出来ていない。
あの後、俺はコナーにレポートという名の手紙を書くのを優先した。
あんときのおはぎの目が、笑えるくらいオリバーを睨んでいた。
おはぎがにらんだところで、顔が可愛いから可愛いだけだ。
今回も『オリバーが悪い!』と言っていたが、まあ今回も確かにオリバーが悪いよな。
けれど、おはぎとタイラーとソフィアの三人のお守りは成功した。
小さな巾着の中にそれを入れてプレゼントしたところとても喜んでもらえた。
タイラーもソフィアも外出時には必ず持ち歩くと言ってくれた。
魔法の発動がないことを祈るだけだ。
そうそう、それから喜んでもらえただけじゃなくて、次の日にお返しまでもらっちまったんだよな。
ソフィアからは、レースが控えめな刺繍のハンカチだった。
刺繍はソフィアのお手製だ。
お守りのお礼というより、日ごろのお礼として隙間時間に少しずつ刺繍をしてくれていたようだ。
この世界は、身近な人への贈り物に刺繍のハンカチを渡すのが定番らしくて、オリバーもソフィアの刺繍のハンカチを持っていると聞いた。
定番ってのを聞いてもさ、この刺繍がすげーの。
色とりどりの小さな花や薬草の中心におはぎがちょこんと座ってるっつーめちゃくちゃ可愛い刺繍だった。
ちなみに、ハンカチのレースについては、女性だけじゃなくて男性夫人にも人気があるらしい。
本来は、もっとびらっびらなものが好まれるようだが、俺には抵抗があり過ぎる。
ソフィアはセンスがいい。
こんな可愛いハンカチは使うのが勿体ないくらいだが、汚れたらすぐに浄化すりゃ元通りだから、毎日でも使いたいくらいだ。
タイラーからは、小瓶に入ったドライフルーツを貰った。
レモンにオレンジにパイン、ぶどうやイチゴやリンゴと種類が豊富で、そのまま摘んで食べてもいいし、お茶にして飲んだ後柔らかくなったもんを食べるのも美味しいらしい。
瓶には魔法が効いていて、そのまま放置しても三ヶ月はもつという。
コレ、瓶がすげー高いんじゃないかと思うが、瓶を持っていくと量り売りで購入出来る店らしく、そこは経済的でもあるようだ。
見た目もカラフルで可愛いので、書斎に置いて、おやつ以外にタイラーがお茶を入れてくれる時に摘むことにした。
自然な甘さと酸味が美味しくて、体にも良いらしい。
そして、極めつけにおはぎがくれたのは人に見せられないくらいには、貴重なものだった。
見た目はなんの変哲も価値もあんまりなさそうな真っ黒な輪っか、細い腕輪だった。
俺がおはぎの目に似た石でお守りを作ったので、おはぎも俺に似た黒いものをくれたんだと思った。
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