転生男装令嬢クリスティーナのお見合い結婚~女性恐怖症の公爵令息に“唯一の例外”として求婚されました~

日夏

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男装令嬢の専属従者リーヴァイの場合

-6- 風変りな縁談

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「これは、逃げられないわね……」

フィオリーナ様は、公爵様から寄こされた手紙に目を通された後、呆れ声混じりに呟かれ、その手紙をピンッと指で弾かれました。
そんなフィオリーナ様のご様子を見て、旦那様と奥様はふたりとも真剣な面持ちで一度頷かれ、旦那様が恐る恐るという面持ちで口を開かれました。

「その───どう思う?フィオリーナ」
「お父様も、色々と宮廷でクリスの縁談についてはお話しされたのよね?」
「ああ、勿論だとも。文官長殿と、それから文官長殿が懇意にされているという第二騎士団の副団長殿にお声をかけていただき、その足で魔法省にも顔を出したくらいだからね。私としては頑張ったと思うんだが」
「けれど、来たのはこれ一通なのね?」
「……そうなるね」

なんと、旦那様は随分と手広くお話を持ち掛けていらっしゃいました。
旦那様は、仕事にも家庭にも誠実であられますから、周りに好かれていらっしゃることは耳にしておりましたが。

今までは、本当にクリス様のしたいようにされておいでだったのでしょう。
あのような……前奥様が企てられた事件があったからこそ、今後のクリス様についてはとても慎重であったに違いありません。
今まで苦労を掛けてしまった、望むものは何でも叶えてやりたい、と。
だからこそ、淑女教育は最低限の、表向き体裁が整えられる程でお許しになり、クリス様が望まれている勉学や剣術には良い講師を、それこそご自身の後継者を育てるほどの教育を注がれておいででした。
ドレスや宝石を一切欲しがらないクリス様ですが、上のお嬢様方と同等の、もしくはそれ以上のものをかけられているのです。

「で、お母様はカミラ様にクリスの婚約者を探していることを相談されたのね?」
「ええ」
「クリスのなりと性格とその他諸々包み隠さずに正直に」
「そうよ」
「クリスの良いところを」
「あの子はとてもいい子だわ、そうでしょう?」
「…そうね」

フィオリーナ様が嬉しそうに頷くのは、奥様が本心から仰っているのがわかるからであられましょう。
フィオリーナ様もまたクリス様を可愛がっておいでですが、奥様ほど『とてもいい子』と純粋に言葉にされるのは難しいかもしれません。
それは、単に、フィオリーナ様のご性格とも言えますが。

「なら、尚更カミラ様が采配されてるわね。これ、ブルーノ様の了承すら得てないと思うの」
「え?」
「ブルーノ様は女性嫌いと有名だし、今だにご結婚どころかご婚約もされていないから、裏では同性愛者なのではとお噂になるほど。
だから、お父様もお母様も心配されて当然だと思うわ。
それに、こんな……正式の縁談に使うような仰々しい手紙のわりに、中身はとてもそうとは言い難いような内容だもの。
こちらが断れないのを知っていて、時間と場所を指定して呼びだしているあたり、何か裏があるんじゃないかと穿ってしまってる、そうでしょう?」
「ああ……そうだ。リーヴァイは、そうではないと感じるらしいが、どうしても、ね」
「あの宰相閣下から寄こされたんじゃ仕方ないわ。
でもね、ブルーノ様が学生のころと未だに同じであれば、クリスならもしかしたら良いご縁になるんじゃないかしらって思うのよ。
ブルーノ様は、正しくいうと、女性嫌いとは少し違うの。
カミラ様と宰相閣下のいいとこどりをしたあの見た目でしょう?
あの美しさは異常よ。彼と偶然目が合っただけで倒れたり、少し生徒会の業務で必要事項を確認されただけで本気になって、婚約者と別れたりした女生徒たちがいたのよ」

美しさで右を出さないフィオリーナ様が美しさを語られるのもいかがなものかと思いますが、だからこそ説得力があるのは事実。
旦那様と奥様の表情が、驚いたものに変わられました。

「それに、婚約者がいないのは事実としても、候補はいたのよ、数人。だってそうでしょう?殿下のお傍にいらっしゃるのだもの。
殿下に見初められずとも、その次は、と考える家もあれば、殿下が決められる前に早く、と焦っていた家もあるでしょう。
あの頃、殿下もはっきりと決めていらっしゃらなかったからこそ、まだ彼の周りは落ち着いていたのかもしれない。
殿下はお優しい方だから、ブルーノ様を思ってそうされていた、私はそう感じてるわ。
それに……あのお馬鹿さんの言った通りであれば、ブルーノ様は幼い頃に数回メイドに襲われかけて、高等部に上がられてすぐの頃は、お茶会で媚薬を盛られたり、断った腹いせに毒を盛られかけたこともあるそうなの」

「それは……」
「怖いわね」
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