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<第五章 第4話:愛人の是非>
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<第五章 第4話:愛人の是非>
クマートの屋敷に、着いた。
広々としたリビングルームの中央には、五人掛けのロングソファーが四脚、ロの字型に置かれている。
各ソファーの前には、ローテーブルがある。
玄関のほうが南側で、リビングルームの奥側が、北側だ。
ソファーには、数名の黒髪少女が座っていた。
西側のソファーには、南側から順に、エルナ、ベアーナ、ウォルナだ。
南側と北側のソファーには、黒髪少女が一人ずつ、腰かけている。
「おかえり。クマート」
「お帰りなさいませ。クマート様」
「若様、お帰り!」
ソファーに腰かけた少女たちが、口々に声をかけた。
クマートは返事をしつつ、東側のソファーに向かうと、マリアンヌに席を勧めた。
座った。東側のソファーに。北から順に、マリアンヌ、クマート、アメリアだ。
クマートが、声をかけた。
「シーナ先生、帝国大学の授業は、どうでしたか?」
「まあ、まだ始まったばかりだからね。各科目の授業紹介、的な」
突然、大きな声を出した。クマートが。
「シーナ先生、今から飲んでいるんですか! 飲み過ぎは、脳に悪いですよ。今は、十五歳の肉体なんですから」
南側ソファーの黒髪少女シーナは、銀製のグラスを手にしていた。グラスの中身は、赤ワインだ。
「だいじょうぶだ。頭の中は、大人だから」
「記憶は、そうかもしれませんが……」
ふたたび、大きな声を出した。クマートが。
「ニーナさんまで、飲んでるんですか?」
北側ソファーの黒髪少女が、銀製グラスをかかげた。
「少しだけです。まだ、酔っては、いませんわ」
「そういう問題じゃないんですが」
シーナが、ガハハと笑った。
「ケチケチすんな。地下倉庫には、赤ワインの樽が、まだいくつもあったぞ」
「だから、そういう問題じゃ、ないんです。先生の健康を、心配しているんです」
「健康、健康。すごく健康。おまえの黒魔術の秘薬のおかげで。老眼も近眼も、腰痛も五十肩も、もう直った」
ニーナが、口を開いた。
「あらシーナ、あなた五十肩だったの?」
「年取れば、誰でもなるだろ」
「あたしは腰痛と関節痛はあったけれど、五十肩には、なっていなかったわよ」
「なに言ってんだ。若さ自慢か? あたしと同学年のくせに」
ガハハと、また笑った。
キョトンと、していた。マリアンヌは。
シーナとニーナの会話を、理解できないからだろう。
クマートが、紹介した。右手で指し示しながら。
「マリアンヌさん、こちらの女性が、私の母校の校長先生だったシーナ先生で、そちらが、領主城のメイド長だったニーナさんです」
マリアンヌは、状況を理解できなかった。
なぜなら、シーナもニーナも、十五歳前後の少女だからだ。
訝しげな表情で、マリアンヌが尋ねた。
「お若くして、出世されたんですね」
ガハハと大笑いした。シーナが。
クマートが、ニヤつきながら尋ねた。
「シーナ先生とニーナさん、何歳だと思います?」
「おいおい、やめろよ、クマート」
「十五歳くらいに見えますけど、実際には十八歳くらいなのですか?」
ガハハと、また笑った。シーナが。
「五十五歳です」
クマートが答えた。笑いをかみ殺して。
絶句しているマリアンヌを見つめながら、クマートが言葉を続けた。
「シーナ先生とニーナさんには、黒魔術の秘薬、若返りの薬を飲んでもらったんです」
若返りの秘薬は、クマートの血を混ぜたものだ。クマートの血は、ケガ人以外が飲めば、若返りするのではないかと思い、実験してみたのだ。
シーナが、言葉をはさんだ。
「若返りすぎたけどな」
「分量の調整が、難しいですね」
そう答えてから、クマートは、マリアンヌの紹介を始めた。
「シーナ先生、ニーナさん。彼女は、魔法特待生のマリアンヌさんです」
「魔法特待生か。すごい魔法を使うのか? ちょっと見せてくれ」
「それは、別の機会にしましょう。マリアンヌさんは今、疲れているんです。たいへんなことがあって」
「たいへんなことって、なんだ?」
クマートが、説明を始めた。王子の取り巻きに襲われたことや、別の不良貴族たちに、平民寮の前で、待ち伏せされたことなどを。
説明が終わった直後、メイドのメリッサが現れた。
「お帰りなさいませ、ご主人様。なにか、お飲み物をお出ししましょうか?」
「ハーブティーを。アメリアは、なににする?」
「クマート様と同じものを」
「じゃあ、ハーブティーを三つ。ベアーナたちは、なにを飲んでる?」
「レモネード」
「なんですか、それは?」
マリアンヌのその質問に、アメリアが、すかさず答えた。
「知らないのは、当然ですわ。なぜなら、クマート様が発明した飲み物ですから。クマート様は天才で、次から次に、素晴らしいものを発明するのよ」
クマートが、説明を始めた。少しばかり、照れながら。
「レモネードは、レモン果汁に、蜂蜜を入れて水で薄めたものです」
そう言ってから、メリッサに頼んだ。
「レモネードも、一つ追加で」
その直後だった。
シーナが、口を開いた。
「それで、クマート。その女、マリアンヌを、愛人にするつもりなのか?」
ニーナが、きっぱりと言い切った。
「反対です。その女を、愛人にするのは」
クマートの屋敷に、着いた。
広々としたリビングルームの中央には、五人掛けのロングソファーが四脚、ロの字型に置かれている。
各ソファーの前には、ローテーブルがある。
玄関のほうが南側で、リビングルームの奥側が、北側だ。
ソファーには、数名の黒髪少女が座っていた。
西側のソファーには、南側から順に、エルナ、ベアーナ、ウォルナだ。
南側と北側のソファーには、黒髪少女が一人ずつ、腰かけている。
「おかえり。クマート」
「お帰りなさいませ。クマート様」
「若様、お帰り!」
ソファーに腰かけた少女たちが、口々に声をかけた。
クマートは返事をしつつ、東側のソファーに向かうと、マリアンヌに席を勧めた。
座った。東側のソファーに。北から順に、マリアンヌ、クマート、アメリアだ。
クマートが、声をかけた。
「シーナ先生、帝国大学の授業は、どうでしたか?」
「まあ、まだ始まったばかりだからね。各科目の授業紹介、的な」
突然、大きな声を出した。クマートが。
「シーナ先生、今から飲んでいるんですか! 飲み過ぎは、脳に悪いですよ。今は、十五歳の肉体なんですから」
南側ソファーの黒髪少女シーナは、銀製のグラスを手にしていた。グラスの中身は、赤ワインだ。
「だいじょうぶだ。頭の中は、大人だから」
「記憶は、そうかもしれませんが……」
ふたたび、大きな声を出した。クマートが。
「ニーナさんまで、飲んでるんですか?」
北側ソファーの黒髪少女が、銀製グラスをかかげた。
「少しだけです。まだ、酔っては、いませんわ」
「そういう問題じゃないんですが」
シーナが、ガハハと笑った。
「ケチケチすんな。地下倉庫には、赤ワインの樽が、まだいくつもあったぞ」
「だから、そういう問題じゃ、ないんです。先生の健康を、心配しているんです」
「健康、健康。すごく健康。おまえの黒魔術の秘薬のおかげで。老眼も近眼も、腰痛も五十肩も、もう直った」
ニーナが、口を開いた。
「あらシーナ、あなた五十肩だったの?」
「年取れば、誰でもなるだろ」
「あたしは腰痛と関節痛はあったけれど、五十肩には、なっていなかったわよ」
「なに言ってんだ。若さ自慢か? あたしと同学年のくせに」
ガハハと、また笑った。
キョトンと、していた。マリアンヌは。
シーナとニーナの会話を、理解できないからだろう。
クマートが、紹介した。右手で指し示しながら。
「マリアンヌさん、こちらの女性が、私の母校の校長先生だったシーナ先生で、そちらが、領主城のメイド長だったニーナさんです」
マリアンヌは、状況を理解できなかった。
なぜなら、シーナもニーナも、十五歳前後の少女だからだ。
訝しげな表情で、マリアンヌが尋ねた。
「お若くして、出世されたんですね」
ガハハと大笑いした。シーナが。
クマートが、ニヤつきながら尋ねた。
「シーナ先生とニーナさん、何歳だと思います?」
「おいおい、やめろよ、クマート」
「十五歳くらいに見えますけど、実際には十八歳くらいなのですか?」
ガハハと、また笑った。シーナが。
「五十五歳です」
クマートが答えた。笑いをかみ殺して。
絶句しているマリアンヌを見つめながら、クマートが言葉を続けた。
「シーナ先生とニーナさんには、黒魔術の秘薬、若返りの薬を飲んでもらったんです」
若返りの秘薬は、クマートの血を混ぜたものだ。クマートの血は、ケガ人以外が飲めば、若返りするのではないかと思い、実験してみたのだ。
シーナが、言葉をはさんだ。
「若返りすぎたけどな」
「分量の調整が、難しいですね」
そう答えてから、クマートは、マリアンヌの紹介を始めた。
「シーナ先生、ニーナさん。彼女は、魔法特待生のマリアンヌさんです」
「魔法特待生か。すごい魔法を使うのか? ちょっと見せてくれ」
「それは、別の機会にしましょう。マリアンヌさんは今、疲れているんです。たいへんなことがあって」
「たいへんなことって、なんだ?」
クマートが、説明を始めた。王子の取り巻きに襲われたことや、別の不良貴族たちに、平民寮の前で、待ち伏せされたことなどを。
説明が終わった直後、メイドのメリッサが現れた。
「お帰りなさいませ、ご主人様。なにか、お飲み物をお出ししましょうか?」
「ハーブティーを。アメリアは、なににする?」
「クマート様と同じものを」
「じゃあ、ハーブティーを三つ。ベアーナたちは、なにを飲んでる?」
「レモネード」
「なんですか、それは?」
マリアンヌのその質問に、アメリアが、すかさず答えた。
「知らないのは、当然ですわ。なぜなら、クマート様が発明した飲み物ですから。クマート様は天才で、次から次に、素晴らしいものを発明するのよ」
クマートが、説明を始めた。少しばかり、照れながら。
「レモネードは、レモン果汁に、蜂蜜を入れて水で薄めたものです」
そう言ってから、メリッサに頼んだ。
「レモネードも、一つ追加で」
その直後だった。
シーナが、口を開いた。
「それで、クマート。その女、マリアンヌを、愛人にするつもりなのか?」
ニーナが、きっぱりと言い切った。
「反対です。その女を、愛人にするのは」
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