絶体絶命ルビー・クールの逆襲<革命編>

蛇崩 通

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<第十四章 第3話>

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  <第十四章 第3話>
 小型の手斧を持った男十名が、一斉いっせいに突撃してきた。この男たちは、強そうだ。身長も、百五十五センチメートルから百六十センチくらいある。無産者革命党の中では、比較的高い方だ。筋肉量も、ほかの党員より多そうだ。包囲されると、危険だ。
 突然、ルビー・クールは、彼らに背を向けた。そして、全速力で走り出した。反対側の壁に向かって。
 ルビー・クールは、走りながら、チラリと、ステージ側に目を向けた。単発式歩兵銃を持ったテロリストたちとの距離は、遠ければ遠いほど、安全になる。ステージから離れるように、ななめに会場を走った。
 反対側の壁に、着いた。会場内をななめに走ったため、百メートル以上の距離を走った。ステージからも、だいぶ離れた。歩兵銃を持ったテロリストとの距離は、最も距離の近い者でも、四十メートルはある。
 ルビー・クールは、まったく息切れをしていなかった。四ヶ月前とは、スタミナが違う。毎朝早朝、ランニングをしているからだ。
 後ろを振り返った。
 手斧男たちは、息切れしていた。しかも、走る速度もスタミナも個人差が大きいため、集団は長く伸びていた。
 これで、十名による同時攻撃を防げる。そのうえ、壁を背に戦うことができる。たとえ包囲されても、三方向だけだ。
 左手のリボルバーを、ショルダーバッグの中に入れた。バッグから左手を出したときには、指と指の間には、釘が四本はさまっていた。
 先頭の手斧男が、三メートルの距離まで接近したときに、魔法詠唱をしながら、釘を投げつけた。
 三名の手斧男が、絶叫した。三メートルから八メートルの距離にいた手斧男三名の両目に、魔法の釘が刺さったのだ。
 これで、七秒から八秒、視力を奪うことができる。
 先頭の手斧男の手首に、日傘の一撃を加えた。手斧を、床にたたき落とした。
 その直後、その男の脳天に、日傘を振り下ろした。一撃で、失神させた。
 二人目、三人目も、同様に倒した。
 四人目と五人目が、息を切らせながら、突進してきた。だが、まだ五メートルほどの距離がある。
 魔法詠唱しながら、釘を投げた。
 四人目と五人目も、両目に魔法の釘が刺さった。彼らが絶叫した。二人とも、手斧をたたき落としてから、脳天に一撃を加えて倒した。
 六人目から八人目が接近してきた。息が上がっている。そのうえ、すでに五名も倒されているため、警戒している。十メートルほど手前で、足を止めた。
 「包囲だ!」
 一人が、ほかの二人に怒鳴った。
 ルビー・クールは早足で前進した。八メートルまで接近すると、魔法詠唱しつつ釘を投げた。三名とも、絶叫した。両目を手でおおって。
 正面中央、右側、左側、の順に倒した。
 九人目と十人目が到着した。魔法詠唱しながら釘を投げ、同様に倒した。
 ジョン=ポールが怒鳴るのが聞こえた。部下への命令だ。
 ジョン=ポール自身が、ナイフを持った二十名を引き連れ、駆け足でやってきた。ほかに、伝令役の少年十名も、あとに付き従っている。
 合計三十一名だ。人数が多いため、やっかいだ。
 ジョン=ポールは、ルビー・クールから十五メートル以上離れた距離で立ち止まると、部下に命令を出し始めた。ルビー・クールを包囲した上で、一斉攻撃を仕掛けるつもりのようだ。
 ルビー・クールは、背後に回られないように、壁際かべぎわまで後退した。
 ジョン=ポールの指示で、二十名のナイフ男たちが、半円形を描くように、ルビー・クールを包囲した。
 包囲といっても、まだ距離は十メートルほどある。この距離を、少しずつ詰めていくつもりだろう。
 二十名のナイフ男たちが、ゆっくりと、前進してきた。半円形の形を保ったまま。よく見ると、彼らのうち、右側の十名は刃渡り二十五センチメートルくらいのキッチンナイフで、左側の十名は刃渡り十五センチくらいの果物ナイフだ。
 距離が、七メートルまで詰まった。魔法攻撃の有効射程距離内だ。
 ルビー・クールは、魔法詠唱した。左手を、左から右へと振りながら。左側のナイフ男たちの足下に向かって。八名のズボンの左裾が、発火した。しかもその炎は、蛇が這い上るように燃えあがった。
 ナイフ男たちが、慌てふためいた。
 すぐさま、右側のナイフ男たちにも、魔法詠唱した。八名のズボンの右裾が、発火した。
 ズボンが魔法の炎で燃えていないのは、右端みぎはしの二名と、左端ひだりはしの二名だけだ。
 ルビー・クールは、左端の二名に向けて、突撃した。魔法詠唱しながら。左手で釘を投げた。
 左端の二名を含めた左側八名が、絶叫した。左目に、魔法の釘が刺さったからだ。
 ルビー・クールは、日傘を次々に振り下ろした。
 ルビー・クールの魔法持続力は、小さな魔法ならば、八秒前後だ。左側の八名を倒したときには、魔法の炎の持続時間は切れていた。炎が消えたため、右側のナイフ男たちは、気を取り直していた。
 ジョン=ポールの号令で、一斉に襲ってきた。
 魔法詠唱しながら、釘を二回投げた。最初に八名、続いて四名の右目に、魔法の釘が刺さった。激痛で絶叫するナイフ男たちに、突進した。次々に、日傘の一撃を加えた。
 八名を倒したところで、魔法の針が消えた四名が襲いかかってきた。一歩後退しつつ、ナイフを突き出す手首に、日傘を振り下ろした。
 絶叫した。先頭の男が。感触から、手首の骨が完全に折れたようだ。ルビー・クールは、次々と、残り三名の手首にも日傘を打ち下ろし、骨をへし折った。どうやらナイフ男たちは、手斧男たちよりも、骨が弱いらしい。たしかに、身長も、手斧男たちよりも、一回りとまでは言わないが、半回りほど低い。筋肉量も少ないようだ。
 ナイフをたたき落としてから、その四名の脳天にも日傘の一撃を加え、失神させた。
 ナイフ男二十名全員を、失神昏倒させた。
 取り巻きの少年の一人が、悲痛な声をあげた。ジョン=ポールを、すがるような目で見つめながら。
 「同志ジョン=ポール! 次の作戦の命令を!」
 彼だけではない。ほかの少年たちも、すがるような視線をジョン=ポールに向けている。
 テロリストにすがるほど、少年たちの生まれ育った境遇は、悲惨なのだろう。
 ジョン=ポールは、ルビー・クールをにらみつけた。苦虫をかみつぶしたよう顔で。
 その少年の肩に、左手を置いた。
 「我々にはまだ、奥の手がある」

    第十五章に続く
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