絶体絶命ルビー・クールの逆襲<奪還編>

蛇崩 通

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第四章 多勢に無勢で絶体絶命 <第1話>

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   <第四章 第1話>
 まずい状況を、作ってしまった。自分の不用意な言動が、原因で。
 ダリアとエルザは、一人でも危険だが、二人を混ぜると、もっと危険だ。
 二人の関心を、敵に集中させなければ。
 ルビー・クールは、二人に声をかけた。
 「敵との戦いに、集中しましょ」
 そのまま、言葉を続けた。
 「あたしたちの共通の敵は、無産者革命党よ。彼らから、あたしたちの街を奪還する。それが、あたしたちの共通の目的よ」
 「そんなこと、分かってるわよ」
 不機嫌そうな顔で、ダリアがさらに、言葉を続けようとしたときだった。
 銃声直後に、怒鳴る声が聞こえた。自由革命党戦闘員の一人だ。
 「残弾ゼロ! 装填そうてんを開始する!」
 視線を向けると、回転弾倉を開けて、空薬莢からやっきょうを石畳にバラバラと捨てていた。
 敵の一人が、怒鳴った。
 「敵はたま切れだぞ!」
 フランクが怒鳴った。
 「まだ弾は、あるぞ!」
 そう怒鳴った直後、四十五口径を発砲した。
 だが敵は、好機到来とみたのか、しゃがんでいた者や、伏せていた者が、パラパラと立ち上がり始めた。
 次々に、発砲した。自由革命党の戦闘員たちが。
 それにより、次々に弾切れとなった。
 弾切れになると、次々に叫んだ。「残弾ゼロ、装填開始」と。
 仲間たちに知らせて、援護してもらうための言葉なのだろうが、その言葉で、無産者革命党の党員たちが、勢いづいてしまった。
 「まだ一発残ってるぞ! 動いたヤツは、射殺する!」
  フランクが怒鳴った。左手の拳銃の銃口を、左から右へ動かしながら。
 左手のほうで、男が立ち上がった。突撃しようと、一歩踏み出した。
 火を噴いた。四十五口径が。
 頭部を、撃ち抜いた。
 フランクが怒鳴った。
 「残弾ゼロ! 装填を開始する!」
 「あたしの出番のようね」
 ダリアが、前に一歩、踏み出した。
 「あたしたち、でしょ」
 訂正してから、ルビー・クールが言葉を続けた。
 「エルザは、左の前衛をお願い。あたしが右の前衛をするわ。ダリアは中央後衛で、魔法攻撃による支援をしてちょうだい」
 師団長が率いていた正面の中隊と、その左右の中隊には、まだ戦意のある者がいる。
 その三つの中隊は、それぞれ四十八発ずつ、自由革命党の戦闘員から銃撃を受けている。銃弾が身体を貫通し、背後の者にあたったケースもあるだろうから、五十名以上が死傷したはずだ。
 それに加えて、左手の副師団長が率いていた中隊は、エルザが十数名を死傷させている。
 中央の師団長が率いていた中隊は、ルビー・クールとエルザが、二十数名死傷させた。よって、中央の中隊で無傷の者は、二十数名だ。
 一方、右手の中隊は、五十名弱が無傷だ。
 対峙してから、思った。大変なほうを、引き受けてしまった、と。
 だが、心の中で、頭を振った。
 この数なら、戦える。それに、五十名全員を、倒す必要はない。弾丸を込めるための時間を稼げば、いいだけだ。
 何秒だろうか。四丁のリボルバーに、計二十四発の弾丸を込める時間は。
 一発に二秒なら、五十秒ほどか。
 「相手は、女一人だぞ!」
 「師団長を殺した女だ! ぶっ殺せ!」
 男たちが、罵倒の言葉を吐き出しながら、突撃してきた。
 魔法詠唱をしながら、魔法の釘を投げつけた。九メートル以内に入ってから。
 男たちが、絶叫した。左目を押さえながら。
 転んだり、尻もちをついた者もいる。激痛で、しゃがみ込んだ者もいる。立っている者も、身体をくの字に折り、もがき苦しんでいる。
 後方にいた男たちにも、魔法の釘を投げつけた。
 彼らもまた、左目を押さえながら絶叫した。
 「囲め! 囲め!」
 誰かが、そう叫んだ。敵の小隊長だろう。
 十人ほどが、左から回り込んで、突撃してきた。
 魔法の釘を、投げつけた。
 別の十人が、右から回り込んで突撃してきた。
 同様に、魔法の釘を投げつけた。
 これで、魔法攻撃は四回だ。合計三十六名の敵に、打撃を与えた。
 三十六名は、左目を押さえながら絶叫し続けている。
 敵の突撃は、止まった。
 だが、魔法持続時間は、九秒で切れる。同じ相手に、同じ種類の魔法攻撃を繰り返すと、魔法の幻痛が弱まる。
 次は、異なる魔法を使う必要がある。
 そう思ったときだった。
 敵の誰かが、叫んだ。
 「第五中隊は、第四中隊を支援し、中央を突破せよ!」
 少年の声だった。おそらく伝令だ。
 そのとたん、新たな中隊が、突撃してきた。ルビー・クールめがけて。
 労農革命党の戦闘部隊と、対峙していた中隊の一つだ。労農革命党の戦闘部隊は、弾丸の節約のため、「撃つぞ」と脅しながら、実際には、あまり発砲していない。
 よって、その中隊は、数名しか死傷者を出していない。
 合計百五十名は、多すぎる。
 まずいことになった。
 ルビー・クールは、またもや、心の中で、頭を抱えた。
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