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8. また会ってくれる?
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8. また会ってくれる?
カフェでの心地よい時間を過ごした後も、ボクと葵ちゃんのデートは続き、ウィンドウショッピングをしたり、可愛い雑貨屋さんを巡ったりと、充実した時間を過ごすことができた。
最初は、憧れの葵ちゃんを前にして緊張でガチガチになっていたけれど、一緒に色々な場所を巡り、彼女の飾らない笑顔や、ふとした時の仕草を知るうちに緊張も少しずつ解けていき、心から楽しい時間を過ごすことができた。本当に、あっという間に時間が過ぎていった。
そして喉が渇いたので、駅前のベンチに腰を下ろし自動販売機で買った冷たいジュースを飲みながら、今日一日の出来事を振り返ることにする。
「あ~、今日は本当に遊んだね!久しぶりかもこうやって色々な場所に行って楽しく過ごしたの」
葵ちゃんは、満足そうに、そしてどこか感慨深げに、空を見上げながら言った。
「そっ、そうなんだ?」
ボクは、葵ちゃんの言葉に、少し驚きながら問い返す。いつも友達に囲まれているイメージがあったから。
「うん。やっぱり、たまには外に出ないとね。でも、今日雪姫ちゃんと遊べて本当に楽しかったよ」
葵ちゃんは、満面の笑みを浮かべてそう言ってくれた。その笑顔が眩しくてボクの胸を温かくする。ふと、腕時計に目をやると、時刻はすでに17時を回っていた。そろそろ、家に帰らないとな……そう思っていると、葵ちゃんが、まるで独り言のように、ポツリと呟いた。
「……なんか、あっという間だったね。本当に雪姫ちゃんは、不思議な人……」
その言葉に、ドキッとしながらも、ボクは素直な気持ちを伝える。
「そっ、そうかな?でも……私も……今日は、すごく楽しかったよ」
「そっか。じゃあ、そろそろ帰ろうか」
葵ちゃんは、少し名残惜しそうに立ち上がった。
「うん。葵ちゃん、気をつけてね」
ボクはそう言って、自分の家へと帰るためにベンチから立ち上がり歩き出した。二、三歩、歩いたところで……
「雪姫ちゃん!」
背後から、葵ちゃんの声がボクを呼び止めた。驚いて振り返ると、そこには少し寂しそうな、潤んだ瞳の葵ちゃんが立っていた。
「あの……私と……また……会ってくれる?」
……あ。そうだ……今日は、本当に楽しかったけれど、特に、次の約束をしているわけじゃないんだ。
ボクは……また、葵ちゃんに会いたい……
「うん。もちろん。私も……葵ちゃんに、また会いたい」
ボクは、できるだけ明るい笑顔で答えた。すると葵ちゃんは急にその場にしゃがみこんでしまった。一体、どうしちゃったんだろう?
「え!?だっ、大丈夫!?どこか、具合でも悪くなっちゃった!?」
慌てて駆け寄り心配そうに声をかけると、葵ちゃんは顔を上げた。
「……うん……大丈夫……なんだか、一気に、緊張の糸が切れちゃったみたいで……」
「緊張?」
「……うん……だって、初めての二人きりのデートだったし、雪姫ちゃんに嫌われたくないなってずっと緊張してたんだもん……こう見えてもずっと不安だったんだよ?」
葵ちゃんは顔を赤らめながら、恥ずかしそうに本音を打ち明けてくれた。え……あの、学校の人気者で、何でも出来て……そんな葵ちゃんが?
いや……違う。
ボクは葵ちゃんのことを何も知らない。完璧な美少女で、もちろんこういうデートにも慣れていると勝手に思い込んでいたけれど、本当はボクと同じように、いやそれ以上に不安でいっぱいだったんだ……
そう思うと、ボクはいてもたってもいられなくなり、自然と体が動き、葵ちゃんの手をぎゅっと握りしめていた。葵ちゃんは、驚いた表情を浮かべたけれど、すぐにその瞳は優しい眼差しに変わりふわりと微笑んでくれた。そしてゆっくりと立ち上がった。
「良かった……また、雪姫ちゃんと約束できた」
葵ちゃんの、心底安堵したような笑顔を見て、ボクの胸も、温かい気持ちで満たされる。
「そんなの断るわけないよ。本当に……私も今日はすごく楽しかったし、こうやって……誰かとちゃんと遊んだのも、初めてだし……でも彼女とか、よく分かってなくて……葵ちゃんのためになっているか、不安だし……」
「雪姫ちゃんは友達として、私に普通に接してくれればいいよ?そういう約束でしょ?」
「あっ……うん」
「……私は、雪姫ちゃんのこと、彼女だと思って接するけどね?」
そう言っていたずらっぽくウインクをする葵ちゃんは、いつもの明るく元気な葵ちゃんに戻っていた。やっぱり笑顔が一番可愛いよ葵ちゃんは。
「それじゃ……また、近いうちに連絡するね?」
「うん。またね、葵ちゃん」
ボクが手を振ると、葵ちゃんも大きく手を振り返してくれた。駅の改札を通り、人混みの中に消えていく彼女の背中を見送ると、ボクは自分の家へと、ゆっくりと歩き出した。不思議と足取りは、行きよりもずっと軽やかだった。
ふと右手の薬指に嵌められた、お揃いのペアリングに目をやると、茜色の夕陽を浴びてキラキラと輝いている。まるで、葵ちゃんがつけている、ピンクゴールドのペアリングのように見える。それを見ていると、またじわじわと顔が熱くなるのを感じた。
本当に……あの憧れの葵ちゃんと一日デートをしたんだ……信じられないような出来事だけれど、紛れもない現実だ。
そう思いながら、何気なく空を見上げると、夕日が西の空に沈み始めており、もうすぐ、夜が来ることを告げていた。これから葵ちゃんともっともっと仲良くなれるかな?ボクは、胸いっぱいの期待を抱きながら、家路を急ぐのであった。
カフェでの心地よい時間を過ごした後も、ボクと葵ちゃんのデートは続き、ウィンドウショッピングをしたり、可愛い雑貨屋さんを巡ったりと、充実した時間を過ごすことができた。
最初は、憧れの葵ちゃんを前にして緊張でガチガチになっていたけれど、一緒に色々な場所を巡り、彼女の飾らない笑顔や、ふとした時の仕草を知るうちに緊張も少しずつ解けていき、心から楽しい時間を過ごすことができた。本当に、あっという間に時間が過ぎていった。
そして喉が渇いたので、駅前のベンチに腰を下ろし自動販売機で買った冷たいジュースを飲みながら、今日一日の出来事を振り返ることにする。
「あ~、今日は本当に遊んだね!久しぶりかもこうやって色々な場所に行って楽しく過ごしたの」
葵ちゃんは、満足そうに、そしてどこか感慨深げに、空を見上げながら言った。
「そっ、そうなんだ?」
ボクは、葵ちゃんの言葉に、少し驚きながら問い返す。いつも友達に囲まれているイメージがあったから。
「うん。やっぱり、たまには外に出ないとね。でも、今日雪姫ちゃんと遊べて本当に楽しかったよ」
葵ちゃんは、満面の笑みを浮かべてそう言ってくれた。その笑顔が眩しくてボクの胸を温かくする。ふと、腕時計に目をやると、時刻はすでに17時を回っていた。そろそろ、家に帰らないとな……そう思っていると、葵ちゃんが、まるで独り言のように、ポツリと呟いた。
「……なんか、あっという間だったね。本当に雪姫ちゃんは、不思議な人……」
その言葉に、ドキッとしながらも、ボクは素直な気持ちを伝える。
「そっ、そうかな?でも……私も……今日は、すごく楽しかったよ」
「そっか。じゃあ、そろそろ帰ろうか」
葵ちゃんは、少し名残惜しそうに立ち上がった。
「うん。葵ちゃん、気をつけてね」
ボクはそう言って、自分の家へと帰るためにベンチから立ち上がり歩き出した。二、三歩、歩いたところで……
「雪姫ちゃん!」
背後から、葵ちゃんの声がボクを呼び止めた。驚いて振り返ると、そこには少し寂しそうな、潤んだ瞳の葵ちゃんが立っていた。
「あの……私と……また……会ってくれる?」
……あ。そうだ……今日は、本当に楽しかったけれど、特に、次の約束をしているわけじゃないんだ。
ボクは……また、葵ちゃんに会いたい……
「うん。もちろん。私も……葵ちゃんに、また会いたい」
ボクは、できるだけ明るい笑顔で答えた。すると葵ちゃんは急にその場にしゃがみこんでしまった。一体、どうしちゃったんだろう?
「え!?だっ、大丈夫!?どこか、具合でも悪くなっちゃった!?」
慌てて駆け寄り心配そうに声をかけると、葵ちゃんは顔を上げた。
「……うん……大丈夫……なんだか、一気に、緊張の糸が切れちゃったみたいで……」
「緊張?」
「……うん……だって、初めての二人きりのデートだったし、雪姫ちゃんに嫌われたくないなってずっと緊張してたんだもん……こう見えてもずっと不安だったんだよ?」
葵ちゃんは顔を赤らめながら、恥ずかしそうに本音を打ち明けてくれた。え……あの、学校の人気者で、何でも出来て……そんな葵ちゃんが?
いや……違う。
ボクは葵ちゃんのことを何も知らない。完璧な美少女で、もちろんこういうデートにも慣れていると勝手に思い込んでいたけれど、本当はボクと同じように、いやそれ以上に不安でいっぱいだったんだ……
そう思うと、ボクはいてもたってもいられなくなり、自然と体が動き、葵ちゃんの手をぎゅっと握りしめていた。葵ちゃんは、驚いた表情を浮かべたけれど、すぐにその瞳は優しい眼差しに変わりふわりと微笑んでくれた。そしてゆっくりと立ち上がった。
「良かった……また、雪姫ちゃんと約束できた」
葵ちゃんの、心底安堵したような笑顔を見て、ボクの胸も、温かい気持ちで満たされる。
「そんなの断るわけないよ。本当に……私も今日はすごく楽しかったし、こうやって……誰かとちゃんと遊んだのも、初めてだし……でも彼女とか、よく分かってなくて……葵ちゃんのためになっているか、不安だし……」
「雪姫ちゃんは友達として、私に普通に接してくれればいいよ?そういう約束でしょ?」
「あっ……うん」
「……私は、雪姫ちゃんのこと、彼女だと思って接するけどね?」
そう言っていたずらっぽくウインクをする葵ちゃんは、いつもの明るく元気な葵ちゃんに戻っていた。やっぱり笑顔が一番可愛いよ葵ちゃんは。
「それじゃ……また、近いうちに連絡するね?」
「うん。またね、葵ちゃん」
ボクが手を振ると、葵ちゃんも大きく手を振り返してくれた。駅の改札を通り、人混みの中に消えていく彼女の背中を見送ると、ボクは自分の家へと、ゆっくりと歩き出した。不思議と足取りは、行きよりもずっと軽やかだった。
ふと右手の薬指に嵌められた、お揃いのペアリングに目をやると、茜色の夕陽を浴びてキラキラと輝いている。まるで、葵ちゃんがつけている、ピンクゴールドのペアリングのように見える。それを見ていると、またじわじわと顔が熱くなるのを感じた。
本当に……あの憧れの葵ちゃんと一日デートをしたんだ……信じられないような出来事だけれど、紛れもない現実だ。
そう思いながら、何気なく空を見上げると、夕日が西の空に沈み始めており、もうすぐ、夜が来ることを告げていた。これから葵ちゃんともっともっと仲良くなれるかな?ボクは、胸いっぱいの期待を抱きながら、家路を急ぐのであった。
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