7 / 30
7. お揃いは幸せな気持ちに
しおりを挟む
7. お揃いは幸せな気持ちに
レモンタルトの甘酸っぱさをゆっくりと味わいながら、ボクと葵ちゃんは、お互いのことを少しずつ話すことにした。正直なところ、入学してからずっと同じクラスに在籍しているにも関わらず、まともに言葉を交わしたことすらなかったから。
でも今は違う。憧れの葵ちゃんとこうして二人きりで、まるで夢のような時間を過ごしている。ボクは、心臓がドキドキと音を立てるのを感じながらも、勇気を出して葵ちゃんに色々なことを話しかけてみた。
好きな食べ物のこと、家族のこと……本当にどうでもいいような他愛もない話ばかりだったけれど、葵ちゃんは、笑顔で真剣に耳を傾けてくれる。それが、なんだかすごく嬉しくて、つい普段の何倍も饒舌になってしまう。
「雪姫ちゃんは、お姉ちゃんと妹さんがいるんだぁ。じゃあ……三人姉妹ってことだね?」
「え……あっ、うん、そう」
「私は、弟がいるんだよね。いいなぁ~、私も、お姉ちゃんとか、妹が欲しかったなぁ~」
「そっ、そう?」
「うん。だって、洋服の貸し借りとか、一緒にお買い物とか、できるじゃない?」
「え?あっ、うん……そうだね。でも、私は……姉妹で趣味とか全然合わないし、そういうのはあんまり……ない、かな?」
「確かに、そういうこともあるかぁ」
葵ちゃんは納得したように頷いた。そんな会話を続けながら、ボクは、喉の渇きを潤すためにおかわりのアイスティーをゆっくりと飲む。色々なことを話したから、少し喉が渇いていた。でも、あまりたくさん飲むとお手洗いに行きたくなってしまうから気をつけないと……。
その後も会話が途切れることなく、色々な話題で盛り上がり、気づけば、あっという間に2時間ほどの時間が過ぎていた。
「ふわぁぁ……。……あっ、ごめん、雪姫ちゃん!」
「大丈夫だよ。待ち合わせの時間、早かったかな?」
「違うの!その……あのね……はっ、恥ずかしいんだけどさ……私……雪姫ちゃんとデートするのすごく楽しみで、昨日あんまり眠れなかったんだよね……」
「え……?」
まさか葵ちゃんが?なんだか……すごく嬉しい……恥ずかしそうに少し俯いた葵ちゃんの頬は、ほんのりと赤く染まっていた。その普段とのギャップが、とても可愛らしく見えて、ボクは思わず顔が綻んでしまう。
「子どもみたいだよね……」
「そんなことないよ。私も……すごく楽しみだったから……」
ボクが正直な気持ちを伝えると、葵ちゃんはパッと顔を上げて嬉しそうに微笑んだ。
「本当?ふふ……嬉しいなぁ」
それから、私たちはカフェを出て、賑やかな街の通りを特に目的もなく歩き始めた。でも、葵ちゃんには行きたい場所があるらしい。
「ねぇ、雪姫ちゃん!ちょっと、寄り道していこっか?」
「え?……あっ、うん……」
ボクは、言われるがまま葵ちゃんに手を引かれるようにして、人混みの中を進んでいく。そして連れて行かれたのは、可愛らしいアクセサリーが並んだ小さなお店だった。
中に入ると、様々な種類のアクセサリーが、所狭しと並べられている。繊細な輝きを放つネックレス、耳元を飾る可愛らしいイヤリング、指先を彩るリングや、キラキラと光るピアスまで……どれも綺麗で見ているだけで心がときめく。
「雪姫ちゃんって、こういうアクセサリーとか、興味ある?」
「うん。えっと……可愛いと思ったりはするけど……」
「そっかぁ」
葵ちゃんは少し考え込んだ後、何か良いことを思いついたようにパチンと指を鳴らした。そして、にっこりとボクに向かって微笑むと楽しそうな声で言った。
「……ねぇ、雪姫ちゃん!ちょっとつけてみない?私が雪姫ちゃんに似合うものを選んであげるから!」
そう言って、有無を言わさずボクの手を掴むと、店内をあちこち歩き回り始めた。そして、ある小さなショーケースの前で足を止める。
「ねぇ!これとか、どうかな?」
葵ちゃんが、そう言って見せてきたのは華奢なシルバーのリングだった。リングの中央にはまるで本物の雪の結晶のような、繊細で可愛らしいモチーフがキラキラと輝いている。
「確かに、可愛いかも……」
思わず、そう呟くと、葵ちゃんは嬉しそうに頷いた。
「でしょ?じゃあ雪姫ちゃんの指につけてあげるね」
そんな積極的な葵ちゃんの行動に、ボクは少し戸惑いながらも、されるがままにおとなしく従うことにした。ひんやりとしたリングが、そっと指にはめられる。それを見つめた葵ちゃんは、本当に嬉しそうな満面の笑みを浮かべた。
「わぁ、可愛い!雪姫ちゃんの細い指に、すごく似合ってるよ」
「そっ、そうかな?」
照れ臭くて、思わず目を逸らしてしまう。すると葵ちゃんは、自分の指にはめられたもう一つのリングを見せてきた。
「えっと……見て?私も色違いのピンクゴールド!どう?似合うかな?」
それは、雪の結晶の色が優しいピンク色になった可愛らしいリングだった。
「うん、すごく可愛い!葵ちゃんは、ピンクが本当に似合うね!」
「ありがとう。良かったら……このお揃いのリング、ペアで買わない?……ダメ……かな?」
そう言って少し不安そうに、でもどこか期待を込めた瞳で、ボクを見つめる葵ちゃんを見て、胸がドキッとした。
なんだろう……この、今まで感じたことのない甘く切ないような気持ちは……そして、不思議と何の抵抗もなく「可愛い」と、言葉に出ている自分に内心驚いていた。
葵ちゃんとお揃いのペアリングを嵌めている……なんだか、すごく幸せな気分だ。それに、このリングを付けていればいつでも葵ちゃんと一緒にいられるような気がする。そう思うだけで、心が温かくなり、じんわりとした幸福感が全身を包み込んだ。
レモンタルトの甘酸っぱさをゆっくりと味わいながら、ボクと葵ちゃんは、お互いのことを少しずつ話すことにした。正直なところ、入学してからずっと同じクラスに在籍しているにも関わらず、まともに言葉を交わしたことすらなかったから。
でも今は違う。憧れの葵ちゃんとこうして二人きりで、まるで夢のような時間を過ごしている。ボクは、心臓がドキドキと音を立てるのを感じながらも、勇気を出して葵ちゃんに色々なことを話しかけてみた。
好きな食べ物のこと、家族のこと……本当にどうでもいいような他愛もない話ばかりだったけれど、葵ちゃんは、笑顔で真剣に耳を傾けてくれる。それが、なんだかすごく嬉しくて、つい普段の何倍も饒舌になってしまう。
「雪姫ちゃんは、お姉ちゃんと妹さんがいるんだぁ。じゃあ……三人姉妹ってことだね?」
「え……あっ、うん、そう」
「私は、弟がいるんだよね。いいなぁ~、私も、お姉ちゃんとか、妹が欲しかったなぁ~」
「そっ、そう?」
「うん。だって、洋服の貸し借りとか、一緒にお買い物とか、できるじゃない?」
「え?あっ、うん……そうだね。でも、私は……姉妹で趣味とか全然合わないし、そういうのはあんまり……ない、かな?」
「確かに、そういうこともあるかぁ」
葵ちゃんは納得したように頷いた。そんな会話を続けながら、ボクは、喉の渇きを潤すためにおかわりのアイスティーをゆっくりと飲む。色々なことを話したから、少し喉が渇いていた。でも、あまりたくさん飲むとお手洗いに行きたくなってしまうから気をつけないと……。
その後も会話が途切れることなく、色々な話題で盛り上がり、気づけば、あっという間に2時間ほどの時間が過ぎていた。
「ふわぁぁ……。……あっ、ごめん、雪姫ちゃん!」
「大丈夫だよ。待ち合わせの時間、早かったかな?」
「違うの!その……あのね……はっ、恥ずかしいんだけどさ……私……雪姫ちゃんとデートするのすごく楽しみで、昨日あんまり眠れなかったんだよね……」
「え……?」
まさか葵ちゃんが?なんだか……すごく嬉しい……恥ずかしそうに少し俯いた葵ちゃんの頬は、ほんのりと赤く染まっていた。その普段とのギャップが、とても可愛らしく見えて、ボクは思わず顔が綻んでしまう。
「子どもみたいだよね……」
「そんなことないよ。私も……すごく楽しみだったから……」
ボクが正直な気持ちを伝えると、葵ちゃんはパッと顔を上げて嬉しそうに微笑んだ。
「本当?ふふ……嬉しいなぁ」
それから、私たちはカフェを出て、賑やかな街の通りを特に目的もなく歩き始めた。でも、葵ちゃんには行きたい場所があるらしい。
「ねぇ、雪姫ちゃん!ちょっと、寄り道していこっか?」
「え?……あっ、うん……」
ボクは、言われるがまま葵ちゃんに手を引かれるようにして、人混みの中を進んでいく。そして連れて行かれたのは、可愛らしいアクセサリーが並んだ小さなお店だった。
中に入ると、様々な種類のアクセサリーが、所狭しと並べられている。繊細な輝きを放つネックレス、耳元を飾る可愛らしいイヤリング、指先を彩るリングや、キラキラと光るピアスまで……どれも綺麗で見ているだけで心がときめく。
「雪姫ちゃんって、こういうアクセサリーとか、興味ある?」
「うん。えっと……可愛いと思ったりはするけど……」
「そっかぁ」
葵ちゃんは少し考え込んだ後、何か良いことを思いついたようにパチンと指を鳴らした。そして、にっこりとボクに向かって微笑むと楽しそうな声で言った。
「……ねぇ、雪姫ちゃん!ちょっとつけてみない?私が雪姫ちゃんに似合うものを選んであげるから!」
そう言って、有無を言わさずボクの手を掴むと、店内をあちこち歩き回り始めた。そして、ある小さなショーケースの前で足を止める。
「ねぇ!これとか、どうかな?」
葵ちゃんが、そう言って見せてきたのは華奢なシルバーのリングだった。リングの中央にはまるで本物の雪の結晶のような、繊細で可愛らしいモチーフがキラキラと輝いている。
「確かに、可愛いかも……」
思わず、そう呟くと、葵ちゃんは嬉しそうに頷いた。
「でしょ?じゃあ雪姫ちゃんの指につけてあげるね」
そんな積極的な葵ちゃんの行動に、ボクは少し戸惑いながらも、されるがままにおとなしく従うことにした。ひんやりとしたリングが、そっと指にはめられる。それを見つめた葵ちゃんは、本当に嬉しそうな満面の笑みを浮かべた。
「わぁ、可愛い!雪姫ちゃんの細い指に、すごく似合ってるよ」
「そっ、そうかな?」
照れ臭くて、思わず目を逸らしてしまう。すると葵ちゃんは、自分の指にはめられたもう一つのリングを見せてきた。
「えっと……見て?私も色違いのピンクゴールド!どう?似合うかな?」
それは、雪の結晶の色が優しいピンク色になった可愛らしいリングだった。
「うん、すごく可愛い!葵ちゃんは、ピンクが本当に似合うね!」
「ありがとう。良かったら……このお揃いのリング、ペアで買わない?……ダメ……かな?」
そう言って少し不安そうに、でもどこか期待を込めた瞳で、ボクを見つめる葵ちゃんを見て、胸がドキッとした。
なんだろう……この、今まで感じたことのない甘く切ないような気持ちは……そして、不思議と何の抵抗もなく「可愛い」と、言葉に出ている自分に内心驚いていた。
葵ちゃんとお揃いのペアリングを嵌めている……なんだか、すごく幸せな気分だ。それに、このリングを付けていればいつでも葵ちゃんと一緒にいられるような気がする。そう思うだけで、心が温かくなり、じんわりとした幸福感が全身を包み込んだ。
10
あなたにおすすめの小説
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる