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50. 約束
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50. 約束
そしてローゼリア王国に戻ると街には活気がなく、人々は不安な表情を浮かべていた。そして街の中央にある広場には大勢の人たちが集まっていた。
私たちが到着すると、鎮火されているとはいえ、魔物との戦闘の爪痕が生々しく残っている。そしてその中心には騎士団が集まっている。私とフレデリカ姫様はそのまま合流する。
「レイヴン。被害状況を教えなさい」
「フレデリカ姫様。現在、騎士たちで負傷者の治療と街の復旧作業を行っています。幸いにも死者は出ませんでした。」
「そう。それならよかったわ」
「しかし騎士団の負傷者は多数。戦闘に参加できなかった者たちで交代しながら治療にあたっております。それとイデア嬢。急いで治療所に向かってくれ、父上のジークも負傷している」
「イデア早く行ってあげなさい。私は1人でも大丈夫ですわ」
え?……お父様が?私は急いで治療所に駆けつける。そこには負傷した兵士や騎士たちが横になっている。私が近づくと、そこには包帯を巻かれたお父様、そして付き添っているお母様の姿があった。
「お父様!大丈夫ですか?」
「イデアか?フレデリカ姫様の護衛はきちんとこなせたのか?」
「そんなことより……!?」
私はお父様の姿を見て一瞬動きを止める。その身体には右腕が無くなっていたのだ。
「……お父様。その腕は……」
「……心配するな。命があっただけでも幸運だった。それに立派に騎士の仕事をこなしたんだ。悔いはない」
「そんな……どうしてこんなことに……」
私は動揺を隠しきれずにいると、お母様が話し始める。
「イデア。お父様は勇敢に戦ったのよ?最後まで諦めずにね。あなたも騎士の娘ならそれを誇りに思いなさい。」
「……はい」
私は涙を堪えて返事をする。そうだ……今は泣いてる場合じゃない。
「イデア戻りますよ。お父様もゆっくり休みたいでしょうし」
「分かりました……」
そう言ってお母様と共にその場を治療所をあとにする。するとその時お父様に呼び止められる。
「イデア」
「お父様?」
「その深紅のマント似合ってるじゃないか。立派だよお前は。お父様も誇らしいぞ」
「!?」
「ははっ。そんな顔をするな。イデアは笑っていたほうが可愛いんだからな?」
「……ばか。そんなこと言わないでくださいよ……」
私は涙を流しながら笑う。お父様は満足げに微笑む。私は自分の頬を叩き、気合いを入れる。そしてその場をあとにする。
帰り道。隣を歩くお母様は涙を決して見せなかった、もちろん騎士の妻という立場もあるけど、本当に芯の強い聡明な女性だと改めて思う。そんな2人の子供に生まれてきて私は幸せ者だ。
そして家に着き、私はソファーに座りお母様に話す。私のやるべき事。覚悟は決まったから。
「お母様」
「なに?」
「……お話があるんです。大事な話が」
私の真剣な眼差しを見て何かを感じ取ったのか、お母様も姿勢を正す。私は今の思いを全て伝えた。
◇◇◇
そして翌日。私は王立学園の職員室で先生と話し、そのまま扉を出るとそこにオリビアとアルフレッドがいた。
「あ。どうしたの2人共?もう授業始まるけど?」
「イデアさん……その……学園を辞めるんですか?」
「え?うん。まぁ……強くなるために旅に出ようかなって」
「急に辞めて旅に出るなんて、なんなんだよ一体?何があった?」
2人はすごく困惑していた。でもこれは決めたことだ。私は2人に頭を下げる。すると突然の行動に驚いた2人は慌てる。でも私はここで引くわけにはいかない。私は2人を真っ直ぐに見つめて言う。
「私。本当にやりたいことができたの。それはこの王立学園を卒業してからでもできるけど、今は少しでも早く時間が欲しい。だから辞めるの。ごめんなさい」
そう言い切ると、しばらく沈黙が続いた。そしてその静寂を破ったのはアルフレッドだった。
「……ったくしょうがねぇな。でも忘れるなよ?勝ち逃げなんて許さねぇからな?」
「イデアさん。今までありがとうございました。私も頑張ります。いつかイデアさんみたいに強くなって見せますから!」
そうオリビアとアルフレッドは私に笑顔を向ける。私はそれが嬉しくて泣きそうになる。本当にこの2人はこの人生でも大切な仲間だった。私は笑顔のまま別れを告げた。
そして門を出る前に、学園に深く頭を下げてから振り返り歩きだそうとすると、背後から声がかかる。
「イデア!!」
その声の主はフレデリカ姫様だった。彼女は息を切らしながらこちらに向かって走ってくる。
「はぁ……はぁ……やっと追いついたわ……」
「フレデリカ姫様……」
フレデリカ姫様は呼吸を整えるように大きく深呼吸をする。私はその姿を見守る。すると意を決したような表情で口を開く。
「私はあまり待つのは好きじゃないの。そして意外に寂しがりだと思うわ。あと少しメンヘラ気質かもしれませんわね?」
「それ自分で言うんですか?まぁいいですけど」
そして私はフレデリカ姫様の前に片膝をつき宣言をする。これが私の覚悟と信念だから。
「フレデリカ姫様。5年待ってください。必ずあなたを守るために強くなって戻って来ますから」
「……嘘ついたら承知しませんわよ?長く待ちすぎて他の優秀な人物が現れるかもしれませんけどね?」
私はポケットから『金』のステータスカードを取り出し、ヒラヒラッと見せながらフレデリカ姫様にそのまま話を続ける。
「『金』のステータスカードを持つ者は精霊の加護を持つ者。すなわち『勇者』であるでしたっけ?私以上の人物は現れませんから安心してください」
「ふふっ。確かにその通りね。では約束よ?」
「はい。必ず」
そうして私たちはお互いの手を重ねる。これから訪れるであろう過酷な運命に立ち向かうために。そして守るために。
そしてローゼリア王国に戻ると街には活気がなく、人々は不安な表情を浮かべていた。そして街の中央にある広場には大勢の人たちが集まっていた。
私たちが到着すると、鎮火されているとはいえ、魔物との戦闘の爪痕が生々しく残っている。そしてその中心には騎士団が集まっている。私とフレデリカ姫様はそのまま合流する。
「レイヴン。被害状況を教えなさい」
「フレデリカ姫様。現在、騎士たちで負傷者の治療と街の復旧作業を行っています。幸いにも死者は出ませんでした。」
「そう。それならよかったわ」
「しかし騎士団の負傷者は多数。戦闘に参加できなかった者たちで交代しながら治療にあたっております。それとイデア嬢。急いで治療所に向かってくれ、父上のジークも負傷している」
「イデア早く行ってあげなさい。私は1人でも大丈夫ですわ」
え?……お父様が?私は急いで治療所に駆けつける。そこには負傷した兵士や騎士たちが横になっている。私が近づくと、そこには包帯を巻かれたお父様、そして付き添っているお母様の姿があった。
「お父様!大丈夫ですか?」
「イデアか?フレデリカ姫様の護衛はきちんとこなせたのか?」
「そんなことより……!?」
私はお父様の姿を見て一瞬動きを止める。その身体には右腕が無くなっていたのだ。
「……お父様。その腕は……」
「……心配するな。命があっただけでも幸運だった。それに立派に騎士の仕事をこなしたんだ。悔いはない」
「そんな……どうしてこんなことに……」
私は動揺を隠しきれずにいると、お母様が話し始める。
「イデア。お父様は勇敢に戦ったのよ?最後まで諦めずにね。あなたも騎士の娘ならそれを誇りに思いなさい。」
「……はい」
私は涙を堪えて返事をする。そうだ……今は泣いてる場合じゃない。
「イデア戻りますよ。お父様もゆっくり休みたいでしょうし」
「分かりました……」
そう言ってお母様と共にその場を治療所をあとにする。するとその時お父様に呼び止められる。
「イデア」
「お父様?」
「その深紅のマント似合ってるじゃないか。立派だよお前は。お父様も誇らしいぞ」
「!?」
「ははっ。そんな顔をするな。イデアは笑っていたほうが可愛いんだからな?」
「……ばか。そんなこと言わないでくださいよ……」
私は涙を流しながら笑う。お父様は満足げに微笑む。私は自分の頬を叩き、気合いを入れる。そしてその場をあとにする。
帰り道。隣を歩くお母様は涙を決して見せなかった、もちろん騎士の妻という立場もあるけど、本当に芯の強い聡明な女性だと改めて思う。そんな2人の子供に生まれてきて私は幸せ者だ。
そして家に着き、私はソファーに座りお母様に話す。私のやるべき事。覚悟は決まったから。
「お母様」
「なに?」
「……お話があるんです。大事な話が」
私の真剣な眼差しを見て何かを感じ取ったのか、お母様も姿勢を正す。私は今の思いを全て伝えた。
◇◇◇
そして翌日。私は王立学園の職員室で先生と話し、そのまま扉を出るとそこにオリビアとアルフレッドがいた。
「あ。どうしたの2人共?もう授業始まるけど?」
「イデアさん……その……学園を辞めるんですか?」
「え?うん。まぁ……強くなるために旅に出ようかなって」
「急に辞めて旅に出るなんて、なんなんだよ一体?何があった?」
2人はすごく困惑していた。でもこれは決めたことだ。私は2人に頭を下げる。すると突然の行動に驚いた2人は慌てる。でも私はここで引くわけにはいかない。私は2人を真っ直ぐに見つめて言う。
「私。本当にやりたいことができたの。それはこの王立学園を卒業してからでもできるけど、今は少しでも早く時間が欲しい。だから辞めるの。ごめんなさい」
そう言い切ると、しばらく沈黙が続いた。そしてその静寂を破ったのはアルフレッドだった。
「……ったくしょうがねぇな。でも忘れるなよ?勝ち逃げなんて許さねぇからな?」
「イデアさん。今までありがとうございました。私も頑張ります。いつかイデアさんみたいに強くなって見せますから!」
そうオリビアとアルフレッドは私に笑顔を向ける。私はそれが嬉しくて泣きそうになる。本当にこの2人はこの人生でも大切な仲間だった。私は笑顔のまま別れを告げた。
そして門を出る前に、学園に深く頭を下げてから振り返り歩きだそうとすると、背後から声がかかる。
「イデア!!」
その声の主はフレデリカ姫様だった。彼女は息を切らしながらこちらに向かって走ってくる。
「はぁ……はぁ……やっと追いついたわ……」
「フレデリカ姫様……」
フレデリカ姫様は呼吸を整えるように大きく深呼吸をする。私はその姿を見守る。すると意を決したような表情で口を開く。
「私はあまり待つのは好きじゃないの。そして意外に寂しがりだと思うわ。あと少しメンヘラ気質かもしれませんわね?」
「それ自分で言うんですか?まぁいいですけど」
そして私はフレデリカ姫様の前に片膝をつき宣言をする。これが私の覚悟と信念だから。
「フレデリカ姫様。5年待ってください。必ずあなたを守るために強くなって戻って来ますから」
「……嘘ついたら承知しませんわよ?長く待ちすぎて他の優秀な人物が現れるかもしれませんけどね?」
私はポケットから『金』のステータスカードを取り出し、ヒラヒラッと見せながらフレデリカ姫様にそのまま話を続ける。
「『金』のステータスカードを持つ者は精霊の加護を持つ者。すなわち『勇者』であるでしたっけ?私以上の人物は現れませんから安心してください」
「ふふっ。確かにその通りね。では約束よ?」
「はい。必ず」
そうして私たちはお互いの手を重ねる。これから訪れるであろう過酷な運命に立ち向かうために。そして守るために。
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