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226. 青の世界

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 226. 青の世界



 面倒なやり取りはあったが、オレと夏帆は都内にできた新しい水族館『ブループラネット』に来ていた。

「うわー!先輩すごいですね!」

「ああ。そうだな。都内の水族館だけど意外に楽しめそうだな」

 オレたちは今、目の前に広がる幻想的な光景を前に圧倒されていた。ブループラネットというだけあって、館内全体が青を基調としたデザインで統一されており、薄暗い館内に水槽がいくつも並び、色とりどりの魚たちが泳いでいる。

「先輩!見てください!この熱帯魚のコーナーなんてすごく綺麗ですよ!」

 夏帆が目を輝かせながら、子供のように興奮している。その姿を見て、オレは思わずクスッと笑ってしまった。

「どうしたんですか?」

「いや、お前っていつも楽しそうだなって思ってさ?」

「当たり前じゃないですか。先輩と一緒なんだもん。楽しくないわけがないです!」

 そう言って屈託のない笑顔を見せる夏帆を見て、オレも自然と顔が綻んだ。

「とりあえずどこから行こうか……最初はやっぱりメインの大水槽から見て回るか?」

「はい!行きましょう!」

 そうして、オレたちは大水槽のあるフロアへと移動していった。

「おおお……すげえ……」

 大水槽の前に立ってみると、今まで見たことのないようなスケールの大きさに息を呑んでしまった。隣を見ると夏帆も感動していたようで、口をポカーンと開けて水槽の中を見つめていた。

「おい。口開いてるぞ?」

「ふぇ!?……あれ?」

「なんだ?」

「私の顔を見るなんて、もしかして私とキスしたいんですか?いいですよ?」

「そんなこと言ってねえだろ!バカ!」

「もう!恥ずかしがり屋さんですね」

 そう言ってオレの腕に絡みついてくる夏帆。そして、そのまま腕を組むように自分の身体を寄せてきた。

 またかよ歩きづらい。まったく……。しょうがない奴め……まあ、こんな風に甘えられるのも悪くないかと思いつつ、オレたちは水族館を回るのだった。
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