【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!

夕姫

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766. 後輩ちゃんは『またクレープ』が食べたいそうです

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766. 後輩ちゃんは『またクレープ』が食べたいそうです




 そして週末。今日はFmすたーらいぶ春の大型企画の日だ。企画内容は『Fmすたーらいぶ村を救え!チャット人狼』というもので、普通に人狼ゲームをやるのだが、すべてチャットでやるというもの。まぁ似たようなアプリゲームがあるので、内容はそれと同じ。ただ、初心者が多いのでココアちゃんがゲームマスターとして毎回ゲーム中に色々アドバイスをくれながら楽しむらしい。

 オレは朝の定期配信を終え、部屋で一人、夜の企画までの時間を埋めるように雑件を片付けていた。パソコンの画面に向かい、指先をキーボードの上で走らせる。部屋の中は静かで、カチャカチャというキーボードの音だけが響いている。窓の外では、春特有の穏やかな風が木々の葉を揺らしているのが見えた。こういう静かな時間は嫌いじゃない。むしろ集中できてありがたい。

 どれくらいの時間が経っただろうか。作業に没頭していると、部屋のドアが控えめにノックされた。返事をすると、ゆっくりとドアが開いて、彩芽ちゃんが顔を覗かせた。いつもの彼女らしい少しうつむき加減の表情だ。

「お疲れさまです……おはようございます、颯太さん……」

「うん。おはよう、彩芽ちゃん」

 彩芽ちゃんは部屋に入ってくると、ドアのそばに立ったままもじもじとしている。何か言いたげな様子で視線が泳いでいる。こういう時の彩芽ちゃんは、なんだか子動物みたいだよな。

「あの……その……この後……お昼って用事とかありますか?」

「ううん。特に用事はないけど」

「その……く……クレープを一緒に食べに行きませんか?」

「クレープ?なんか昨年も同じように誘われたような気がするけどw」

 クレープ?その言葉を聞いて、脳裏に去年の記憶がふと蘇った。そういえば去年の春も、同じように彩芽ちゃんに誘われてクレープを食べに行ったことがあった気がする。あれからもう一年経ったのか。時間というのはあっという間だ。

「うん。いいよ、行こうか」

 別に断る理由はない。最近は彩芽ちゃんと二人で出かけることもなかったしな。オレの返事を聞いて、彩芽ちゃんの顔にパッと明るい光が灯ったのがわかった。その表情を見られただけでなんだかオレまで嬉しくなった。

 こうして週末の午後は、急遽彩芽ちゃんとクレープを食べに行くことになった。パソコンの画面を閉じ、部屋の片付けし、準備をして部屋を出る。

「お待たせ」

「いえ……大丈夫です」

 今日の天気は本当に気持ちがいい。高く澄んだ青空に白い雲がゆっくりと流れている。春風は優しく頬を撫でてなんだかそれだけで気分が上がる気がした。街路樹の葉はまだ小さくて鮮やかな緑色をしている。道行く人々も軽やかな足取りで歩いているように見えた。

「どこに行く?去年行ったクレープ屋さんでいい?」

「あっ……はい……そこがいいです……」

 駅前の大型ショッピングセンターに到着する。自動ドアをくぐると、一気に人の気配と様々な店舗のBGM、そして空調の音が耳に飛び込んできた。目的地のフードコートは、様々なお店から美味しそうな匂いが漂い、テーブル席は多くの人で埋まっている。ガヤガヤとした話し声や、食器のぶつかる音、店員さんの呼び込みの声などが混ざり合い、独特の活気を生み出している。

「彩芽ちゃんは何にする?」

「えっと……わたしは……いちご……とバナナ」

「いちごとバナナ?」

「……あとツナマヨ」

 ……相変わらずよく食べる子だ。この細い体のどこにそれだけの食べ物が入るのだろうか。

「あの……変……ですか……?」

「いや変じゃないよ!全然!彩芽ちゃんらしいなって思っただけ。オレはどうしようかな……」

 ……そんな顔で見ないでくれ彩芽ちゃん。変なわけないだろう。世界で一番可愛いよ、と言いたくなる衝動を必死で抑える。

 とりあえずオレはチョコバナナを注文し、壁際の四人掛けのテーブルが二つ空いていたのでそこに向かう。少しだけ他の席からは離れているし隣り合って座れそうだ。彩芽ちゃんはそのままオレの隣にちょこんと座る。

「いただきます」

「美味しい?」

「はい……美味しいです」

 そう言って、彩芽ちゃんは少し照れたように笑った。周りの喧騒も、今は気にならない。オレの横には美味しそうにクレープを食べる彩芽ちゃんがいる。本当に美味しそうに食べるよ。でも、その無邪気な食べっぷりを見ていると、なんだか心が和む。

「あの颯太さん。ちょっとだけ……味見してもいいですか……?」

 彩芽ちゃんが、おずおずとオレのチョコバナナクレープを指差した。

「もちろん。はい、どうぞ」

 自分のクレープを少しだけ彼女の方に傾ける。彩芽ちゃんは、小さな口を開けて、そっとオレのクレープにかぶりついた。その距離の近さに、心臓がドクンと跳ねる。彼女がクレープを食べている間、じっと彼女の顔を見つめてしまう。

「美味しいです……」

「うん。良かったね」

 満足そうに頷く彩芽ちゃんにオレも嬉しくなった。フードコートの賑やかな空気の中、オレと彩芽ちゃんは他愛ない話をした。今日のチャット人狼について、少しだけ真面目に話し合ったり、最近あった面白い出来事について笑ったり。

 周りの喧騒とは少し隔絶されたような空間で、彩芽ちゃんと二人きりで過ごす時間。それはオレにとってなんだか特別で心地よいものだった。賑やかなフードコートの真ん中で、オレたちはまるで二人だけの世界にいるみたいに甘酸っぱい午後を過ごしたのだった。
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