【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~

夕姫

文字の大きさ
11 / 36

10. お喋りしてます

しおりを挟む
10. お喋りしてます



 そして準備を済ませ、ミリーナの元に向かう。向かった先は山を下って南にある『リスト』と呼ばれる街の市場だった。私は正直王都以外の場所に行ったことはほとんどない。少し楽しみにしている私がいる。すると気を使ってミリーナが私に伝えてくれる。

「あっそうだ。ここは王都の反対側だから誰とも会わないと思うから安心してアイリーンちゃん。」

「ありがとう。」

 本当に気の利く子だなと思った。それから二人で歩きながら話をしていく。

「それであたしに教えて欲しいことって?」

「いやミリーナはいつも何してるのかなって思って?」

「あたし?あたしは『なんでも屋』の仕事がないときは村の人とお喋りしてるよ。楽しいよね!」

 お喋り?ならお店を手伝って欲しいのだが。でもやることもないか。そんな話をしながら歩いていると市場にたどり着く。ここは凄く賑やかなところだ。色々な露店が並び、人も多く活気がある。そんなことを思いながらミリーナについていくと、彼女は一つの店で足を止める。

「ここだよ。うわあ…相変わらずボロボロだなぁ?仕方ないけど、さっ入ろうアイリーンちゃん!」

「え?ここお店なの!?」

 私は驚いた。そこには今にも崩れ落ちそうな壁があるだけだからだ。こんなところで商売なんて成り立つんだろうか?ミリーナは私の背中を押してそのお店に入る大丈夫ここ?エイミーの言葉を借りるとパプリカみたいなことにならない?

 しかし中に入ると、店内は外装と打って変わって綺麗で小奇麗な内装だ。棚には薬草やハーブ、魔力水などのポーション作りの素材が置かれていた。ここは素材屋かしら?だが良く注意して見てみると、置いてある商品にはどこか雑多さがあり、それが逆にこの店がいかに変かをあらわしているようだった。

「こんにちは!おばちゃん!」

「あら、治癒魔法のお嬢ちゃんじゃないかい。今日は何をお求めだい?ん?ほう……そっちのお嬢さんは初めて見る顔だね?」

「今日は新しい『なんでも屋』のメンバーも一緒なんだ!」

「あ、どうも。初めまして」

 ミリーナは店主らしき老婆に挨拶すると、私を手招きして奥へと進んでいく。そしてカウンターの奥の部屋に入るとそこには大きなテーブルが置かれており、その上に置かれている様々な道具や材料に目を向ける。そこには乾燥させた草花や葉っぱなどが無造作に置かれており、中には本などで見覚えのある物もあった。

「さて。始めようかな!」

「ここで薬を作るの?」

「うん!ここなら余計なものがないから集中できるしね!それに……ここには色々な人が来るんだ。だから色々と勉強になるんだよ!」

 そう言うとミリーナは鞄の中から魔法陣が描かれた調合釜を取り出す。なるほど。あの調合釜を使って調合するのか……でもあれって結構複雑だし、やり方が古いような気もする。

 まぁいいか。私が気にすることでもないし、以前本で読んだことはあるけど、目の前で薬を作るのを見るなんて初めてだし貴重な経験だから。ゆっくり見せてもらおう。

「とりあえず……これとこれと……あとこれも」

 ミリーナは目の前に置かれている乾燥した薬草を取り、慣れた手つきですり鉢に入れてゴリゴリし始める。その光景を見て私は思わず目を丸くした。え?なんか私の知ってる作り方じゃないんだけど!?

 そんなことを思っているうちにどんどんペースト状の物が溜まっていく。それが終わると今度は鍋に水を張り火にかける。沸騰してきたところで先ほどの薬草を入れて煮込む。すると徐々に色が変わり始めてきた。

 しばらくして完成したのか、瓶に移し替えて蓋をする。それを見ていた私は無意識に拍手を送っていた。

「ん?もう大袈裟だなぁアイリーンちゃんは。」

「いや。私が知っているやり方じゃなかったから……単純に感銘を受けたのよ」

 私がそう言うとミリーナは頬を掻きながら照れ笑いを浮かべる。それからミリーナは他にも沢山色々な薬を作っていった。薬を作るその姿はとても楽しそうだった。

「よしっと。これで今日の分は終わりかな!」

「すごいわね。こんなに色々な種類の薬を作るなんて……」

「うーん。確かに手間はかかるけど、この作業自体はそこまで難しくないんだよ?必要なものはここに全部揃っているしさ!わざわざ、自分で用意しなくてもいいし!あっ!これは何の薬草だろう?」

 ミリーナは部屋の隅に置いてあった本を手に取り、パラパラ捲り始める。あれは薬に関する本なのかしら? 私がそんなことを考えていると、ミリーナはあるページを開きこちらに見せてくる。そこには何かの絵が描かれていて、文字の下に説明文が添えられていた。

「これだ!葉っぱの形が同じ!そうだよねアイリーンちゃん?」

「どれ?」

【ヘルイナ草:主にポーションの材料となる植物。種類によって回復量が変わる】

 へぇ。これも薬草なんだ。絵を見ると本当に雑草にしか見えない。これを集めて乾燥させて、更に細かく砕いて水と一緒に煮込めば良いわけね。ふむふむ。

 なんか初めての経験だらけで少し楽しいと思ってしまいた私がいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件

☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。 しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった! 辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。 飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。 「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!? 元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

無能と追放された鑑定士、実は物の情報を書き換える神スキル【神の万年筆】の持ち主だったので、辺境で楽園国家を創ります!

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――勇者パーティーの【鑑定士】リアムは、戦闘能力の低さを理由に、仲間と婚約者から無一文で追放された。全てを失い、流れ着いたのは寂れた辺境の村。そこで彼は自らのスキルの真価に気づく。物の情報を見るだけの【鑑定】は、実は万物の情報を書き換える神のスキル【神の万年筆】だったのだ! 「ただの石」を「最高品質のパン」に、「痩せた土地」を「豊穣な大地」に。奇跡の力で村を豊かにし、心優しい少女リーシャとの絆を育むリアム。やがて彼の村は一つの国家として世界に名を轟かせる。一方、リアムを失った勇者パーティーは転落の一途をたどっていた。今さら戻ってこいと泣きついても、もう遅い! 無能と蔑まれた青年が、世界を創り変える伝説の王となる、痛快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

処理中です...