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父上の言葉
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「失礼します」
王室に入ると国王が背を向けて立っていた。
「紗那、禁断の書が盗まれたというのは本当か?」
「はい、申し訳ありません」
そう言って頭を下げると、「顔を上げよ」と声がする。
「犯人の目星はついているのか?」
「はい。恐らく月の国の者ではないかと」
「なぜ?」
私は相楽から聞いた犯行時の様子を話した。
「国王様もご存知の通り、宇宙図書館の中でもあの部屋は魔法の光のみでロックが解除されます。この世界で同じ光を持った者は存在しません。同じく光の魔法を持ち、私と並ぶ魔力を持っていたとしても光までも同じに出来るはずがありません。ましてやここは光を司る星の国……光を認識し間違えることなど絶対にあり得ません。それではなぜ、あの部屋のロックが開いたのか。それが出来るのは影の魔法しかありません」
「影の魔法に光を同一のものに出来る魔法なんてあったか?」
「いえ、それは少し違います。同じくしたのは光ではなくその人自身です」
そうだ、だから警備員は私がいたと思ったのだ。言えばあの場にいたのは私ではなく、私の影。だから光が同じになるのは当たり前なんだ。
「きっと犯人は鏡の中に入り込み、鏡に映った私の影をコピーしたのでしょう。鏡に映るのは私自身。鏡に映った私はもう一人の私であるわけなのですから」
「確かに。変身魔法では光は変えられぬし……。しかし、それが出来るのはかなり腕のたつ魔法使いと言うことになるぞ」
「ええ。ですから、私は月の国の王家関係者、もしくは月森家ではないかと思っています。あるいは、魔法学院の幹部か」
魔法学院は月の国にある学院で、この世界にある魔法学校の頂点に君臨する。入れただけでエリートとされるところだが、近年よくない噂がたっていてちょうど気にしていたところだ。
「これからどうするつもりだ?」
「私は月の国へ行こうと思います。行って魔法学院の入学試験を受けてきます」
「それはダメだ。星の国は今まで他国との交わりを絶ってきた。今やこの国は幻の国。行くことは許可出来ない」
それでも、と私は国王を見つめた。
「これは私の失態です。今は代々重ねられてきた封印魔法であの書が開けられることはないでしょうが、何百年先の未来で魔法の効力が切れた時世界は破滅します」
私の言葉に国王は何も言わなかった。それでもずっと私を見つめる。
「紗那、こちらからは援軍をつけられない。それでもいいのか?」
「十分承知の上です」
分かった、そう重く頷いた国王はため息をついた。
「お前にはいつも大変な役割を押し付けている。もし柚那にお前ほどの魔力があれば……」
「やめてください。お姉ちゃんはいつも頑張っておられます。私の力はこの国と家族を守るためにあるのです。私がやるのは当然のこと」
誰に似たんだか……、そう言って国王は笑った。
「なあ紗那、これは王命ではなく、一人の父親としての言葉だ」
国王、いや父上は私のもとまできて、その大きな腕で私を抱き締めた。
「必ず無事に帰ってきなさい。お前に何かあったら、この国を挙げて助けに行く」
「そんなことしていいんですか?今まで交わりを絶ってきたのですよね」
「いいさ。娘を助けるためなら何だってする。国民も分かってくれるよ。それだけの信頼関係を築いてきているのだから」
ありがとうございます、その言葉が父上に届いたかどうかは分からないが、溢れそうな涙を見られたくなくて父上の温かな胸に顔を埋めた。そんな私の頭を優しく撫でたあと、父上はアステルを呼んだ。
「アステル、いるか?」
父上の声にアステルは「ここに」と返事をした。
「頼む、紗那を守ってくれ。守れるのはお前しかいない」
もう一度「頼む」と呟いた父上にアステルは「分かってますよ」とだけ言った。
父上にはアステルの姿が見えない。それでも光を司る国の王だ。アステルの持つ光は見えているらしい。
ありがとうと呟いた父上はまるでアステルの声が聞こえているようだった。
: : :
王室に入ると国王が背を向けて立っていた。
「紗那、禁断の書が盗まれたというのは本当か?」
「はい、申し訳ありません」
そう言って頭を下げると、「顔を上げよ」と声がする。
「犯人の目星はついているのか?」
「はい。恐らく月の国の者ではないかと」
「なぜ?」
私は相楽から聞いた犯行時の様子を話した。
「国王様もご存知の通り、宇宙図書館の中でもあの部屋は魔法の光のみでロックが解除されます。この世界で同じ光を持った者は存在しません。同じく光の魔法を持ち、私と並ぶ魔力を持っていたとしても光までも同じに出来るはずがありません。ましてやここは光を司る星の国……光を認識し間違えることなど絶対にあり得ません。それではなぜ、あの部屋のロックが開いたのか。それが出来るのは影の魔法しかありません」
「影の魔法に光を同一のものに出来る魔法なんてあったか?」
「いえ、それは少し違います。同じくしたのは光ではなくその人自身です」
そうだ、だから警備員は私がいたと思ったのだ。言えばあの場にいたのは私ではなく、私の影。だから光が同じになるのは当たり前なんだ。
「きっと犯人は鏡の中に入り込み、鏡に映った私の影をコピーしたのでしょう。鏡に映るのは私自身。鏡に映った私はもう一人の私であるわけなのですから」
「確かに。変身魔法では光は変えられぬし……。しかし、それが出来るのはかなり腕のたつ魔法使いと言うことになるぞ」
「ええ。ですから、私は月の国の王家関係者、もしくは月森家ではないかと思っています。あるいは、魔法学院の幹部か」
魔法学院は月の国にある学院で、この世界にある魔法学校の頂点に君臨する。入れただけでエリートとされるところだが、近年よくない噂がたっていてちょうど気にしていたところだ。
「これからどうするつもりだ?」
「私は月の国へ行こうと思います。行って魔法学院の入学試験を受けてきます」
「それはダメだ。星の国は今まで他国との交わりを絶ってきた。今やこの国は幻の国。行くことは許可出来ない」
それでも、と私は国王を見つめた。
「これは私の失態です。今は代々重ねられてきた封印魔法であの書が開けられることはないでしょうが、何百年先の未来で魔法の効力が切れた時世界は破滅します」
私の言葉に国王は何も言わなかった。それでもずっと私を見つめる。
「紗那、こちらからは援軍をつけられない。それでもいいのか?」
「十分承知の上です」
分かった、そう重く頷いた国王はため息をついた。
「お前にはいつも大変な役割を押し付けている。もし柚那にお前ほどの魔力があれば……」
「やめてください。お姉ちゃんはいつも頑張っておられます。私の力はこの国と家族を守るためにあるのです。私がやるのは当然のこと」
誰に似たんだか……、そう言って国王は笑った。
「なあ紗那、これは王命ではなく、一人の父親としての言葉だ」
国王、いや父上は私のもとまできて、その大きな腕で私を抱き締めた。
「必ず無事に帰ってきなさい。お前に何かあったら、この国を挙げて助けに行く」
「そんなことしていいんですか?今まで交わりを絶ってきたのですよね」
「いいさ。娘を助けるためなら何だってする。国民も分かってくれるよ。それだけの信頼関係を築いてきているのだから」
ありがとうございます、その言葉が父上に届いたかどうかは分からないが、溢れそうな涙を見られたくなくて父上の温かな胸に顔を埋めた。そんな私の頭を優しく撫でたあと、父上はアステルを呼んだ。
「アステル、いるか?」
父上の声にアステルは「ここに」と返事をした。
「頼む、紗那を守ってくれ。守れるのはお前しかいない」
もう一度「頼む」と呟いた父上にアステルは「分かってますよ」とだけ言った。
父上にはアステルの姿が見えない。それでも光を司る国の王だ。アステルの持つ光は見えているらしい。
ありがとうと呟いた父上はまるでアステルの声が聞こえているようだった。
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