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パートナーとはとは
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しおりを挟むとりあえず風呂入って、飯食って。と手の上で部屋のキーを遊ばせながら赤絨毯の上を歩き進んでいく。
ふと、自分の部屋の前に立つ人影を見つけ足をとめた。
綺麗に背筋を伸ばし立つその後ろ姿に、すぐ誰だかわかり「なんでここにいるんだ?」とその人物の名を呼びかけながらかけよった。
「茶々さん!」
名前を呼ばれた彼は、ゆっくりとした動作で振り返る。その手にはクリップで纏められた紙の束が抱えられていた。
「げ、もしかしてそれって……」
すっ、と無言で差し出されたそれに俺は口端を引き攣らせる。
「学園の中と言えどこれは個人情報ですよ。機密文書と同じです。扱いには重々気をつけるように」
責めてるのかわからない程の淡々とした抑揚のない声に「すみません」と返しながら阿蘇さんの所へ忘れてきたプロフィール表を受け取った。
「それでは」
と、用は済んだと言うように素っ気なく踵を返した彼の背に「あの!」と声をかけていた。
「なにか?」
肩だけで振り返った茶々さんの視線に、ハッと身体を揺らす。
バカ、何呼び止めてんだよ。
無意識だった。なんで呼び掛けたのか、自分でもわからず「あ、いや、その」とどもってしまう。
「えっと、茶でも飲んでいきません?」
あはは、とわざとらしい乾いた笑みをもらしながら自室へ指をさす。
「や、別に無理にとは。時間があったらでいーんですけど……」
せっかく届けてもらったんだし、お礼にコーヒー入れますよ、と。
やや間があって。
「では」
と短く答えてこちらへと戻ってきた茶々さん。俺は急いで部屋の鍵をあけると扉を開けて彼を部屋の中へと招き入れた。
適当に座ってて下さい、とだけ伝えて備え付けのコンパクトキッチンへと引っ込む。
えーっと、コーヒー、コーヒー、コーヒーは……。
ガサガサとキッチンの上棚を漁る。確かこないだ母さんが俺が好きだからって近所にある焙煎屋のコーヒー送ってきてくれたのがまだ残ってたはずだ。
そのコーヒー店は、仲の良い老夫婦が営む小さな喫茶店だった。ばあちゃんの同級生が嫁いだ家だとかで、子供の頃よく連れてってもらっていたんだ。
うちのばあちゃんは死んでしまったけど、その友人である奥さんはまだまだ現役で。だから学校帰りにばあちゃんの代わりに俺がその人に会いに行ってばあちゃんが好きだったコーヒーをその人と飲む。それが俺の日課になっていた。
でもルート学園に来てからは流石に遠くて通えなくなって。こないだ母さんと電話してた時に久し振りに飲みたいなって行ったら次の日早速奥さんが送ってくれて。
俺とばあちゃんが好きだったコーヒー。せっかくだし茶々さんに飲んでもらおう。
流石に店で飲む様な入れ方はできないことから、カップにコーヒーフィルターを挟んでお湯をそそぐだけのインスタトになるけど、味はそんなに悪くないはずだ。
「どうぞ」
簡易な茶菓子をそえてソファーに腰掛ける茶々さんへ差し出す。ありがとうございます、と頭をさげ受け取る茶々さん。ちらりと見えた細長い指を男なのに綺麗だななんて思いながら、俺も向かいの椅子へ腰をおろした。
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