6 / 6
さらにおまけのこぼれ話
以下のお話と関連した内容となっています。
冴えない社畜リーマンな俺が、秒で獣人魔王に堕とされたわけ
https://www.alphapolis.co.jp/novel/187289253/296728486/episode/6801349
------------------------------
小高い丘のてっぺんに、その洋館はあった。周りを高い針葉樹に囲まれ、煉瓦造りの赤黒い重厚な壁に、複雑な形状の瓦を敷き詰めた黒々と厚みのある屋根。館のはしっこにはドーム屋根がしつらえてあり、その反対側の屋根からは細長い煙突が突き出ている。
その洋館は、いつのころからかこう呼ばれていた。
魔女クロキの館。
ここには毎日、様々な獣人が訪れる。
彼らはみな、すっきりとした顔と、輝きを増した見た目で出てくるのだった。
今日も一匹、いや、一人と一匹の客が来る。
「へえ、ここが噂の魔女さまとやらの本拠地か。こいつのおかげで、この帝国だけは和睦交渉するしかなかったんだよな」
ふんっと、館を見上げて不満そうに、男が鼻を鳴らす。黒く短い髪にガッシリとした体躯。かつてはぷよぷよだったその身体は、この世界で駆けずり回るうちに、随分と逞しくなった。
「ん、油断なんてしやしませんよ。荒事もしませんって。あくまで俺たちはぶらり万国周遊旅行の身。俺はあなたと楽しく過ごせりゃそれでいい。魔女とやらが俺と同じ存在か少し気になるていどです」
まるで、独りごとのように男が呟き、洋館の扉を押し開く。
ちりちりんと、鈴が鳴る音がした。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
パリっとしたスーツに身を包んだハスキー犬の獣人がうやうやしく頭を下げる。
獣人は、男を見てその鋭い青い瞳をさらに細めた。
ピリッとした殺気を、双方綺麗に押し隠す。
「こちらへどうぞ」
案内された部屋には、優雅に椅子に腰をおろした、長い黒髪の女性。
この世界では珍しい、完全人間体のその姿に男は息をのむ。
「あら珍しい。完全人間形態の方がここに来たのははじめてです。その子はポメラニアン?」
男はちらりと小脇に抱えた白いもふもふに目をやり、そしてこたえた。
「いいえ、くそかわいいアザラシです。ってか、思いっきりヒレがついてるだろ」
おしまい
冴えない社畜リーマンな俺が、秒で獣人魔王に堕とされたわけ
https://www.alphapolis.co.jp/novel/187289253/296728486/episode/6801349
------------------------------
小高い丘のてっぺんに、その洋館はあった。周りを高い針葉樹に囲まれ、煉瓦造りの赤黒い重厚な壁に、複雑な形状の瓦を敷き詰めた黒々と厚みのある屋根。館のはしっこにはドーム屋根がしつらえてあり、その反対側の屋根からは細長い煙突が突き出ている。
その洋館は、いつのころからかこう呼ばれていた。
魔女クロキの館。
ここには毎日、様々な獣人が訪れる。
彼らはみな、すっきりとした顔と、輝きを増した見た目で出てくるのだった。
今日も一匹、いや、一人と一匹の客が来る。
「へえ、ここが噂の魔女さまとやらの本拠地か。こいつのおかげで、この帝国だけは和睦交渉するしかなかったんだよな」
ふんっと、館を見上げて不満そうに、男が鼻を鳴らす。黒く短い髪にガッシリとした体躯。かつてはぷよぷよだったその身体は、この世界で駆けずり回るうちに、随分と逞しくなった。
「ん、油断なんてしやしませんよ。荒事もしませんって。あくまで俺たちはぶらり万国周遊旅行の身。俺はあなたと楽しく過ごせりゃそれでいい。魔女とやらが俺と同じ存在か少し気になるていどです」
まるで、独りごとのように男が呟き、洋館の扉を押し開く。
ちりちりんと、鈴が鳴る音がした。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
パリっとしたスーツに身を包んだハスキー犬の獣人がうやうやしく頭を下げる。
獣人は、男を見てその鋭い青い瞳をさらに細めた。
ピリッとした殺気を、双方綺麗に押し隠す。
「こちらへどうぞ」
案内された部屋には、優雅に椅子に腰をおろした、長い黒髪の女性。
この世界では珍しい、完全人間体のその姿に男は息をのむ。
「あら珍しい。完全人間形態の方がここに来たのははじめてです。その子はポメラニアン?」
男はちらりと小脇に抱えた白いもふもふに目をやり、そしてこたえた。
「いいえ、くそかわいいアザラシです。ってか、思いっきりヒレがついてるだろ」
おしまい
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。
夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。
真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。
そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。
数量は合っている。
だが、なぜか中身の重量だけが減っている。
違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。
そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。
しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。
それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。
「では、正式な監査をお願いいたします」
やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり――
隠されていた不正はすべて暴かれる。
そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。
これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、
“正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。
【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。
――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。
「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」
破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。
重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!?
騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。
これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、
推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。
【完結済】けもみみ悪役令嬢は婚約回避する。~前世の推しを諦める決意をしたのに運命の番なんて~
降魔 鬼灯
恋愛
前世嵌まった乙女ゲーム『あなたに天上の音を』の世界で、もふもふの白い虎耳がご自慢の侯爵令嬢アンドレア・サンダーウッドに生まれ変わった。 しかし、彼女は、ざまあされる悪役令嬢だった。 前世の推しのクロード殿下との婚約を回避して、ざまあされる運命から逃れたい。 でも、獣人に生まれ変わって初めてわかった真実。それは、クロード殿下が自分の運命の番だということで…。 このままでは、クロード殿下が好きすぎてゲーム以上にヤバいキャラになりそう。 アンドレアは煩悩と本能に打ち勝てるのか? もふもふをもふりたいのに、クロード殿下に1日三回ブラッシングされもふりたおされるアンドレア。 アンドレアは気付いていませんがクロード殿下に溺愛されてます。 完結済み。1日二回ずつ更新予定です。
顔も知らない旦那様に間違えて手紙を送ったら、溺愛が返ってきました
ラム猫
恋愛
セシリアは、政略結婚でアシュレイ・ハンベルク侯爵に嫁いで三年になる。しかし夫であるアシュレイは稀代の軍略家として戦争で前線に立ち続けており、二人は一度も顔を合わせたことがなかった。セシリアは孤独な日々を送り、周囲からは「忘れられた花嫁」として扱われていた。
ある日、セシリアは親友宛てに夫への不満と愚痴を書き連ねた手紙を、誤ってアシュレイ侯爵本人宛てで送ってしまう。とんでもない過ちを犯したと震えるセシリアの元へ、数週間後、夫から返信が届いた。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
※全部で四話になります。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。
王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。
教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。
惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。
簡単に裏切る人になんてもう未練はない。
むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。
完結·異世界転生したらアザラシ? でした〜白いモフモフでイケメン騎士たちに拾われましたが、前世の知識で医療チートしています〜
禅
恋愛
ネットでアザラシを見ることが癒しだった主人公。
だが、気が付くと知らない場所で、自分がアザラシになっていた。
自分が誰か分からず、記憶が曖昧な中、個性的なイケメン騎士たちに拾われる。
しかし、騎士たちは冬の女神の愛おし子を探している最中で……
※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています
※完結まで毎日投稿します
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。