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こぼれ話:本当の姿
ある日のこと。
ふと疑問に思って聞いてみた。
「ルーサーさんは、いろんな姿になれますが、大元はどれなんですか?」
んー、とベッドの上で寝そべって頬杖つきながら、ちょっと考えるルーサーさん。いまは、人間に近い犬耳状態だ。ちなみに、裸じゃなくてちゃんと服を着ている。人間に近い格好だと、わたしが男性として意識するからか、二人っきりのときは、ルーサーさんはこの形態を取ることが多い。
「俺達は元々は人間だと伝え聞いている」
「人間!?」
ルーサーさんは、当たり前みたいに頷いた。
私の予想では、獣人が大元の姿かと思っていた。人間というのは意外だった。そもそも、獣力が高まらないと人間にはなれない、つまり人間になるのは他の姿をとるより難しいはずなのだ。
「伝承口伝というものがある」
そう言って、ルーサーさんは、詩のような一節を口ずさんだ。
⸺世界よ、ふわふわであれ
そんな、脳みそどうかと思う一文から始まる文言は、この世界の神によって、人間が作り変えられたという、お伽噺のような内容だった。
一瞬、いぬみみ族の守護神のことが頭に浮かんだが、あれすらも犬だったことから、さらに上位存在の話なのだろう。
「それって……、無理やり獣にされたってことなんですか!?」
「そのときはそうだったかもしれないし、伝承口伝自体が本当だとは限らない。何千年も昔のことで、今では誰も気にしていない。今の状態が、もうあたりまえだからな」
ケロッとしてベッドで寝っ転がるルーサーさん。
私はなんだか納得できない気持ちでうつむいた。
ベッドが軋む音とともに、ぽんぽんと頭が撫でられる感触。
「クロキは何も気にすることはない。伝承口伝が本当だとしても、俺達の運命は変わらないし、すでに誰も変えることは望んでいない。ここは、そういう世界なんだ。さあ、もう寝よう」
促されるままにベッドの上に行くと、ぽむっと軽快な音とともに、目の前に大好きなふわふわが現れる。
「ガチハスキー犬のルーサーさん!」
条件反射で抱きついた。
時々一緒に眠るようになった今でも、ルーサーさんは寝るときは必ずこの犬の姿だった。
あたたかなもふもふに顔を埋めて深呼吸する。
彼らの本来の姿が人間なのだと聞いた以上、こんなに犬形態に飛びついては行けない気もするけど、それでもこのもふもふには抗い難い魅力がある。
この世界にはなにやらいろいろ事情がありそうだが、とりあえず今は、腕の中のもふもふを堪能するのに全力を尽くした。
ふと疑問に思って聞いてみた。
「ルーサーさんは、いろんな姿になれますが、大元はどれなんですか?」
んー、とベッドの上で寝そべって頬杖つきながら、ちょっと考えるルーサーさん。いまは、人間に近い犬耳状態だ。ちなみに、裸じゃなくてちゃんと服を着ている。人間に近い格好だと、わたしが男性として意識するからか、二人っきりのときは、ルーサーさんはこの形態を取ることが多い。
「俺達は元々は人間だと伝え聞いている」
「人間!?」
ルーサーさんは、当たり前みたいに頷いた。
私の予想では、獣人が大元の姿かと思っていた。人間というのは意外だった。そもそも、獣力が高まらないと人間にはなれない、つまり人間になるのは他の姿をとるより難しいはずなのだ。
「伝承口伝というものがある」
そう言って、ルーサーさんは、詩のような一節を口ずさんだ。
⸺世界よ、ふわふわであれ
そんな、脳みそどうかと思う一文から始まる文言は、この世界の神によって、人間が作り変えられたという、お伽噺のような内容だった。
一瞬、いぬみみ族の守護神のことが頭に浮かんだが、あれすらも犬だったことから、さらに上位存在の話なのだろう。
「それって……、無理やり獣にされたってことなんですか!?」
「そのときはそうだったかもしれないし、伝承口伝自体が本当だとは限らない。何千年も昔のことで、今では誰も気にしていない。今の状態が、もうあたりまえだからな」
ケロッとしてベッドで寝っ転がるルーサーさん。
私はなんだか納得できない気持ちでうつむいた。
ベッドが軋む音とともに、ぽんぽんと頭が撫でられる感触。
「クロキは何も気にすることはない。伝承口伝が本当だとしても、俺達の運命は変わらないし、すでに誰も変えることは望んでいない。ここは、そういう世界なんだ。さあ、もう寝よう」
促されるままにベッドの上に行くと、ぽむっと軽快な音とともに、目の前に大好きなふわふわが現れる。
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