【R18】恋を知らない令嬢と死を望む化物のはなし

てへぺろ

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11. 三日目夜③

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 昏倒している二人と、三つの死体をゼンは診察室の隅に運び込む。死体のうちの二つは両腕が吹き飛んでいた。
 ランプの灯りをつけ、シウがすやすや寝ていることを確認する。
 
 生きている二人に猿ぐつわをかませて縛りあげてから、叩き起こした。
 死体三つで即席のベンチをつくってそこに座り、ゼンはフードと顔を覆った布を外し、前髪をかきあげる。懐から黒いバッジを取り出して、男たちに見せた。男二人の瞳に恐怖が浮かぶ。猿ぐつわ越しにもがつく男達に向けて、ゼンは人差し指を口にあてた。
 ゼンが男二人に手を伸ばすと、一人は怯えてもがもが騒ぎ、もう一人は、震えながらも声を発する真似はしなかった。ゼンは騒がなかった方の男の猿ぐつわを外して、ささやく。

「全て話せ」
「断る。どうせ話した後に殺される」
 
 仕方ないので、ゼンはもう一人のモガついてうるさい男の首根っこをむんずと掴む。こっちのほうが喋ってくれそうな気がしたが、猿ぐつわを外したとたん絶叫して、シウを起こしてしまいそうだ。

 ゼンは太ももにつけていたホルダーから、長い針を取り出す。大人の二の腕くらいの長さはあるだろうか。それを指先で半分に折る。切っ先を、騒いでいる男の首筋にあて、一気に打ち込んだ。
 今まで猿ぐつわ越しに喚いていた男が、ピタリと声を出さなくなった。正確には、声を出そうとしても出せない。猿ぐつわを外しても、男の喉から音が出ることは無く、魚のようにパクパクするばかりだ。

「これは、お前だ」
 
 もう一人の男にゼンはそれだけ言うと、声の出ない男の片目をつぶした。歯を一本ずつ折り、耳を削ぎ、両手の指を落とす。ナイフで顎の下に切れ込みを入れ、生きたまま、顔の皮を剥ぐ。剥いだ皮を、もう一人の男の頭に帽子のように被せた。

「話せば、楽に殺してやる」

 ぽとりと、剥いだ皮が床に落ちた。

 結論からいえば、男たちはシウ狙いだったが、大事なことは何も知らなかった。金でなんでもやるゴロツキで、仲介人を何人も挟んでおり、誰に依頼されたのかは巧妙に隠されていた。
 依頼内容は、シウリール・ズコットを生きたまま誘拐すること。
 さきほどのシウの似顔絵が書いてある紙を見せると、その内容を音読してくれた。男の知っている情報も含めて補完しながら。
 
 ズコット家の長女であるシウリール・ズコットの父親は、国家機密を魔族に売り渡した罪で処刑されたらしい。その連座、つまり道連れでシウリールも処罰を受けることとなった。彼女が受けた罰は身分の剥奪。平民から奴隷へと堕とされるという身分刑だった。身分刑を受けた女性は、希望者に無料で下げ渡される。大抵は、奴隷商人に引き取られ、性を売り物にする末路を辿る。
 幸いにも、ある貴族がシウリールの身元引受人を申し出た。しかし、そのことが公知される前に、奴隷商を営むタジルが牢にいるシウリールを気に入り、引取ってしまった。気づいた時には、すでにシウリールはタジルによって、何者かに売り払われており、誰に売ったのか聞き出す前に、タジルは華麗に逃走、身をくらませた。

 貴族は、シウリールの行方を探すために高額な懸賞金をかけた。

「その貴族の名は、アストン・クローディル。シウリール・ズコットの元婚約者だ」
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