【R18】恋を知らない令嬢と死を望む化物のはなし

てへぺろ

文字の大きさ
12 / 50

12. 三日目夜➃

しおりを挟む
 すやすや眠るシウのベッドのすみっこで、ゼンは小さくなって突っ伏していた。

(婚約者がいたとか…………)

 なんとなく、ゼンとの行為が本意ではないとわかってはいた。何回か泣かれたし。
 あんなことをしなくても、素直に全て言ってくれれば、ゼンはいくらでも協力した。きっとそこまで信用されてなかったのだろう。

 ため息をつきながら顔を上げると、シウの綺麗な横顔が見えた。穏やかに眠っており、被せた布が呼吸に合わせて静かに上下している。

 じくじくと、ゼンの身体の奥がうずく。婚約者ショックでだいぶ打ち消されているが、人を殺した後特有の高揚感が胸を占める。

⸺ゼンさん、好きです

 穏やかな陽射しの中で、潤んだ瞳でゼンに告白するシウを、唐突に思い出した。きっとあれも、ゼンを利用するために口にしたのだろう。婚約者のことを想いながら言ったのかもしれない。

 気づけば、寝ているシウに唇を重ねていた。
 胸の奥に、性欲とは別のぐるぐるした熱い想いがわだかまり、気持ち悪い。シウの頬に手を当て、指先で耳に触れる。角度を変えて何度も唇を貪った。

「ん……」

 小さなうめき声とともに、シウの唇が震えて、ゼンのキスに応える。おそるおそるシウの顔を横目で伺うと、穏やかにみつめてくる琥珀色の瞳と目があった。
 唇を離した途端、くすくすと鈴を転がすような笑い声が響く。

「キスで起こすなんて王子様みたい」

 シウの言葉に、ゼンはひどくバツが悪い気分になった。むしろ、王子様とは全く逆である。魔女の手下とかやってそうな部類だ。

(これも、俺を利用するための言い回しかな)

 陰鬱にため息をつくゼンの横で、シウは寝たまま、きょろきょろしている。ベッドの周りは仕切り布で囲まれており、外のランプの灯りがほんのり射し込むくらいで周りの様子はわからない。

「ここ、どこかの診療所です? ゼンさんつれてきてくれたの?」

 半身起き上がったシウが、んーと伸びをして身体を伸ばす。服越しに揺れる胸のふくらみをついつい目で追ってしまうゼンであった。
 そんなゼンにすぐ気づき、シウはちょっと声を落とす。

「なんか、あれですよね。こういうところに二人っきりってちょっと背徳的。こんなことしちゃったりして」

 シウがゼンの手を持ち上げて、自身のおっぱいに押し当てる。布越しに柔らかさが伝わり、つい反射的に揉んだ。
 
(そう、これも、俺を利用するため……)
 
 などと思いつつ、ゼンはいつの間にか両手で揉んでいた。柔らかさが気持ちいいし、揉むうちに乳首が尖ってきて、そこを押すとシウが小さくため息をつくのがまた良い。

「私のほうが、声出さないように気をつけないと。こういう時、無口って便利ですよね」

 シウが、ゼンの寡黙さに謎のメリットを見出してきた。なんというポジティブ思考。つい、おっぱい揉む手に力がこもる。

(そう、これも俺を利用するための……いや、よくわからん)

 ボタンを外して、生で堪能しようとして、ゼンはぎくりとした。散々ゼンがつけた痣や傷跡が、まだくっきり残っている。

「シウ、ごめん」

 唐突に昨日のひどい陵辱を思い出して、一気に欲望がしぼむ。ボタンをはめ直し、胸元もきっちり整え直した。そもそも、これだけ痛い目に合わされて、好意的に接してくるとか、ゼンを利用するためだけなら、すごい演技力だ。
 
「嫌われたわけじゃないみたいで、安心しましたよ。もう一度、キスしましょう。さっきのキス、すっごく素敵でした。ほんと、毎日あれで起きたいくらいです」

 頬に手をあて、顔を赤らめてきゃーとばかりにシウがはしゃいでから、ゼンに手を伸ばす。嬉しそうにゼンの胸に身体を預けてくるシウの重みに、いろんなものがどうでもよくなってきた。抱きついてくるシウを、つい抱きしめかえしてしまう。
 いろいろとシウの事情がわかったくせに、相変わらず流されまくる自分に、ゼンは自己嫌悪を感じた。
 
 シウが嬉しそうに頬を擦りつけている胸元から、かさりと音がして、シウが不思議そうに顔を上げる。

「紙? ゼンさん、これ、なんですか」

 さきほどのシウについての新聞記事を、懐に入れっぱなしにしていたことをゼンは思い出した。シウが取り出そうとするのを遮って、ゼンは服の上から懐を押さえる。

「シウ」

 きょとんと見あげてくる琥珀色の瞳にたじろぎつつ、ゼンは深呼吸する。婚約者が探していることをシウが知る前に、シウとの関係をちゃんと定義しておきたかった。そうすれば、婚約者のことをシウが知っても、しばらくはシウの側にいることができるだろう。
 
「俺を雇え。護衛がいるだろう」
「でも、私には支払えるものが無いですよ?」
「前払いで、支払い済みだ」

 ゼンは、つっとシウの身体を撫でた。顎を持ち上げて、親指で唇を撫でる。

「さっきのキスは、あの誘拐犯を退治した報酬」

 しゃっと勢い良くカーテンをあけると、窓際に山積みにされた何かが見えた。白いシーツがかけられており、ところどころ赤く滲んでいる。シーツの端から、色の悪い手がのぞく。
 息を呑み小さく震える身体を、ゼンは強く抱きしめた。しばらく無言で震えていたシウは、深呼吸して気持ちを落ち着け、ぽそりと呟く。

「私のキスの相場、高すぎません?」

(どちらかというと、俺の殺しの相場が安いのかも)

 いつものように、ゼンは言葉にはせず、黙っておいた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る

ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。 義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。 そこではじめてを経験する。 まゆは三十六年間、男性経験がなかった。 実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。 深海まゆ、一夜を共にした女性だった。 それからまゆの身が危険にさらされる。 「まゆ、お前は俺が守る」 偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。 祐志はまゆを守り切れるのか。 そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。 借金の取り立てをする工藤組若頭。 「俺の女になれ」 工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。 そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。 そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。 果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。

不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する

獅月@体調不良
恋愛
「 御前を幸せにする為に、俺は買ったんだ 」 〜 闇オク花嫁 〜 毒親である母親の為だけに生きてきた彼女は、 借金を得た母の言葉を聞き、 闇オークションへ売られる事になった。 どんな形にしろ借金は返済出来るし、 母の今後の生活面も確保出来る。 そう、彼女自身が生きていなくとも…。  生きる希望を無くし、 闇オークションに出品された彼女は 100億で落札された。 人食を好む大富豪か、 それとも肉体を求めてか…。 どちらにしろ、借金返済に、 安堵した彼女だが…。 いざ、落札した大富豪に引き渡されると、 その容姿端麗の美しい男は、 タワマンの最上階から5階部分、全てが自宅であり、 毎日30万のお小遣いですら渡し、 一流シェフによる三食デザート付きの食事、 なにより、彼のいない時間は好きにしていいという自由時間を言い渡した。 何一つ手を出して来ない男に疑問と不満を抱く日々……だが……? 表紙 ニジジャーニーから作成 エブリスタ同時公開

処理中です...