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12. 三日目夜➃
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すやすや眠るシウのベッドのすみっこで、ゼンは小さくなって突っ伏していた。
(婚約者がいたとか…………)
なんとなく、ゼンとの行為が本意ではないとわかってはいた。何回か泣かれたし。
あんなことをしなくても、素直に全て言ってくれれば、ゼンはいくらでも協力した。きっとそこまで信用されてなかったのだろう。
ため息をつきながら顔を上げると、シウの綺麗な横顔が見えた。穏やかに眠っており、被せた布が呼吸に合わせて静かに上下している。
じくじくと、ゼンの身体の奥がうずく。婚約者ショックでだいぶ打ち消されているが、人を殺した後特有の高揚感が胸を占める。
⸺ゼンさん、好きです
穏やかな陽射しの中で、潤んだ瞳でゼンに告白するシウを、唐突に思い出した。きっとあれも、ゼンを利用するために口にしたのだろう。婚約者のことを想いながら言ったのかもしれない。
気づけば、寝ているシウに唇を重ねていた。
胸の奥に、性欲とは別のぐるぐるした熱い想いがわだかまり、気持ち悪い。シウの頬に手を当て、指先で耳に触れる。角度を変えて何度も唇を貪った。
「ん……」
小さなうめき声とともに、シウの唇が震えて、ゼンのキスに応える。おそるおそるシウの顔を横目で伺うと、穏やかにみつめてくる琥珀色の瞳と目があった。
唇を離した途端、くすくすと鈴を転がすような笑い声が響く。
「キスで起こすなんて王子様みたい」
シウの言葉に、ゼンはひどくバツが悪い気分になった。むしろ、王子様とは全く逆である。魔女の手下とかやってそうな部類だ。
(これも、俺を利用するための言い回しかな)
陰鬱にため息をつくゼンの横で、シウは寝たまま、きょろきょろしている。ベッドの周りは仕切り布で囲まれており、外のランプの灯りがほんのり射し込むくらいで周りの様子はわからない。
「ここ、どこかの診療所です? ゼンさんつれてきてくれたの?」
半身起き上がったシウが、んーと伸びをして身体を伸ばす。服越しに揺れる胸のふくらみをついつい目で追ってしまうゼンであった。
そんなゼンにすぐ気づき、シウはちょっと声を落とす。
「なんか、あれですよね。こういうところに二人っきりってちょっと背徳的。こんなことしちゃったりして」
シウがゼンの手を持ち上げて、自身のおっぱいに押し当てる。布越しに柔らかさが伝わり、つい反射的に揉んだ。
(そう、これも、俺を利用するため……)
などと思いつつ、ゼンはいつの間にか両手で揉んでいた。柔らかさが気持ちいいし、揉むうちに乳首が尖ってきて、そこを押すとシウが小さくため息をつくのがまた良い。
「私のほうが、声出さないように気をつけないと。こういう時、無口って便利ですよね」
シウが、ゼンの寡黙さに謎のメリットを見出してきた。なんというポジティブ思考。つい、おっぱい揉む手に力がこもる。
(そう、これも俺を利用するための……いや、よくわからん)
ボタンを外して、生で堪能しようとして、ゼンはぎくりとした。散々ゼンがつけた痣や傷跡が、まだくっきり残っている。
「シウ、ごめん」
唐突に昨日のひどい陵辱を思い出して、一気に欲望がしぼむ。ボタンをはめ直し、胸元もきっちり整え直した。そもそも、これだけ痛い目に合わされて、好意的に接してくるとか、ゼンを利用するためだけなら、すごい演技力だ。
「嫌われたわけじゃないみたいで、安心しましたよ。もう一度、キスしましょう。さっきのキス、すっごく素敵でした。ほんと、毎日あれで起きたいくらいです」
頬に手をあて、顔を赤らめてきゃーとばかりにシウがはしゃいでから、ゼンに手を伸ばす。嬉しそうにゼンの胸に身体を預けてくるシウの重みに、いろんなものがどうでもよくなってきた。抱きついてくるシウを、つい抱きしめかえしてしまう。
いろいろとシウの事情がわかったくせに、相変わらず流されまくる自分に、ゼンは自己嫌悪を感じた。
シウが嬉しそうに頬を擦りつけている胸元から、かさりと音がして、シウが不思議そうに顔を上げる。
「紙? ゼンさん、これ、なんですか」
さきほどのシウについての新聞記事を、懐に入れっぱなしにしていたことをゼンは思い出した。シウが取り出そうとするのを遮って、ゼンは服の上から懐を押さえる。
「シウ」
きょとんと見あげてくる琥珀色の瞳にたじろぎつつ、ゼンは深呼吸する。婚約者が探していることをシウが知る前に、シウとの関係をちゃんと定義しておきたかった。そうすれば、婚約者のことをシウが知っても、しばらくはシウの側にいることができるだろう。
「俺を雇え。護衛がいるだろう」
「でも、私には支払えるものが無いですよ?」
「前払いで、支払い済みだ」
ゼンは、つっとシウの身体を撫でた。顎を持ち上げて、親指で唇を撫でる。
「さっきのキスは、あの誘拐犯を退治した報酬」
しゃっと勢い良くカーテンをあけると、窓際に山積みにされた何かが見えた。白いシーツがかけられており、ところどころ赤く滲んでいる。シーツの端から、色の悪い手がのぞく。
息を呑み小さく震える身体を、ゼンは強く抱きしめた。しばらく無言で震えていたシウは、深呼吸して気持ちを落ち着け、ぽそりと呟く。
「私のキスの相場、高すぎません?」
(どちらかというと、俺の殺しの相場が安いのかも)
いつものように、ゼンは言葉にはせず、黙っておいた。
(婚約者がいたとか…………)
なんとなく、ゼンとの行為が本意ではないとわかってはいた。何回か泣かれたし。
あんなことをしなくても、素直に全て言ってくれれば、ゼンはいくらでも協力した。きっとそこまで信用されてなかったのだろう。
ため息をつきながら顔を上げると、シウの綺麗な横顔が見えた。穏やかに眠っており、被せた布が呼吸に合わせて静かに上下している。
じくじくと、ゼンの身体の奥がうずく。婚約者ショックでだいぶ打ち消されているが、人を殺した後特有の高揚感が胸を占める。
⸺ゼンさん、好きです
穏やかな陽射しの中で、潤んだ瞳でゼンに告白するシウを、唐突に思い出した。きっとあれも、ゼンを利用するために口にしたのだろう。婚約者のことを想いながら言ったのかもしれない。
気づけば、寝ているシウに唇を重ねていた。
胸の奥に、性欲とは別のぐるぐるした熱い想いがわだかまり、気持ち悪い。シウの頬に手を当て、指先で耳に触れる。角度を変えて何度も唇を貪った。
「ん……」
小さなうめき声とともに、シウの唇が震えて、ゼンのキスに応える。おそるおそるシウの顔を横目で伺うと、穏やかにみつめてくる琥珀色の瞳と目があった。
唇を離した途端、くすくすと鈴を転がすような笑い声が響く。
「キスで起こすなんて王子様みたい」
シウの言葉に、ゼンはひどくバツが悪い気分になった。むしろ、王子様とは全く逆である。魔女の手下とかやってそうな部類だ。
(これも、俺を利用するための言い回しかな)
陰鬱にため息をつくゼンの横で、シウは寝たまま、きょろきょろしている。ベッドの周りは仕切り布で囲まれており、外のランプの灯りがほんのり射し込むくらいで周りの様子はわからない。
「ここ、どこかの診療所です? ゼンさんつれてきてくれたの?」
半身起き上がったシウが、んーと伸びをして身体を伸ばす。服越しに揺れる胸のふくらみをついつい目で追ってしまうゼンであった。
そんなゼンにすぐ気づき、シウはちょっと声を落とす。
「なんか、あれですよね。こういうところに二人っきりってちょっと背徳的。こんなことしちゃったりして」
シウがゼンの手を持ち上げて、自身のおっぱいに押し当てる。布越しに柔らかさが伝わり、つい反射的に揉んだ。
(そう、これも、俺を利用するため……)
などと思いつつ、ゼンはいつの間にか両手で揉んでいた。柔らかさが気持ちいいし、揉むうちに乳首が尖ってきて、そこを押すとシウが小さくため息をつくのがまた良い。
「私のほうが、声出さないように気をつけないと。こういう時、無口って便利ですよね」
シウが、ゼンの寡黙さに謎のメリットを見出してきた。なんというポジティブ思考。つい、おっぱい揉む手に力がこもる。
(そう、これも俺を利用するための……いや、よくわからん)
ボタンを外して、生で堪能しようとして、ゼンはぎくりとした。散々ゼンがつけた痣や傷跡が、まだくっきり残っている。
「シウ、ごめん」
唐突に昨日のひどい陵辱を思い出して、一気に欲望がしぼむ。ボタンをはめ直し、胸元もきっちり整え直した。そもそも、これだけ痛い目に合わされて、好意的に接してくるとか、ゼンを利用するためだけなら、すごい演技力だ。
「嫌われたわけじゃないみたいで、安心しましたよ。もう一度、キスしましょう。さっきのキス、すっごく素敵でした。ほんと、毎日あれで起きたいくらいです」
頬に手をあて、顔を赤らめてきゃーとばかりにシウがはしゃいでから、ゼンに手を伸ばす。嬉しそうにゼンの胸に身体を預けてくるシウの重みに、いろんなものがどうでもよくなってきた。抱きついてくるシウを、つい抱きしめかえしてしまう。
いろいろとシウの事情がわかったくせに、相変わらず流されまくる自分に、ゼンは自己嫌悪を感じた。
シウが嬉しそうに頬を擦りつけている胸元から、かさりと音がして、シウが不思議そうに顔を上げる。
「紙? ゼンさん、これ、なんですか」
さきほどのシウについての新聞記事を、懐に入れっぱなしにしていたことをゼンは思い出した。シウが取り出そうとするのを遮って、ゼンは服の上から懐を押さえる。
「シウ」
きょとんと見あげてくる琥珀色の瞳にたじろぎつつ、ゼンは深呼吸する。婚約者が探していることをシウが知る前に、シウとの関係をちゃんと定義しておきたかった。そうすれば、婚約者のことをシウが知っても、しばらくはシウの側にいることができるだろう。
「俺を雇え。護衛がいるだろう」
「でも、私には支払えるものが無いですよ?」
「前払いで、支払い済みだ」
ゼンは、つっとシウの身体を撫でた。顎を持ち上げて、親指で唇を撫でる。
「さっきのキスは、あの誘拐犯を退治した報酬」
しゃっと勢い良くカーテンをあけると、窓際に山積みにされた何かが見えた。白いシーツがかけられており、ところどころ赤く滲んでいる。シーツの端から、色の悪い手がのぞく。
息を呑み小さく震える身体を、ゼンは強く抱きしめた。しばらく無言で震えていたシウは、深呼吸して気持ちを落ち着け、ぽそりと呟く。
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いつものように、ゼンは言葉にはせず、黙っておいた。
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