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32. 六日目⑨※

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 月明かりとともに、魔族の声が森に響く。さきほど、シウとゼンを匿ってくれた魔族だ。

「遅くなってごめ……大丈夫かっ」

 魔族の謎空間から、ようやっと外に出れた頃には、シウの首は赤い痣だらけで、ゼンの腕は噛み跡だらけで血まみれだった。二人ともよく我慢した。とても我慢した。体感で無限に近いくらいの時間、我慢した。
 正直、出るまであんなに時間かかるなら、我慢する必要なかったのではないか。
 中でやってしまえばよかったのではないか。
 二人ともそう思うくらいにきつかった。

 あたりは変わらず魔獣の森。
 二人を出してくれた魔族は、なぜかげっそりやつれている。
 他に魔族や魔獣の気配はない。

「中で何かしてた?」

 深いため息をつきながら聞いてくる魔族に、シウは首を振る。

「ちゃんと、我慢してました。すっごい我慢してました」
「あー……そっか、そういうことか、なるほどな」

 魔族は、とても納得した。
 納得しながら、さっきの部下の言葉を思い出した。

⸺野○ソですかな?

 トイレ我慢したまま、閉じ込めてしまったようだ。つらかっただろう。中で漏らさなくてよかった。漏らされたら、魔族もちょっと辛い。

「俺が見張っててやるから、そのへんでしていいぞ」
「えっ、いや、さすがにそれは!」

 焦るシウとゼンに向かって、魔族はわかってるとばかりに、手の平を向け、彼らの言葉を遮る。皆まで言うな、そう言外に醸し出しながら。

「だすものは、だしたほうが、健康に良い」
「なるほど、その通りだ」

 魔族の言葉に大きく頷くゼン。ぎょっとした顔をしているシウを引き寄せて、抱きしめた。

「感謝する。じゃあ、すこしだけ」
「ゼンさん!?……んっ」

 目の前で、熱烈にキスしだした二人を見て、魔族は気づいた。思わず、口に手を当てる。
 もしかしなくても、これは野グ○ではない。おっぱい揉みながらキスしてる。

「あ、そっちだったか。なるほどな」

 魔族はピンときた。
 おそらく、これは魔術的儀式。
 魔族の女性がキスする時は、大抵、それを対価に相手に呪いをかける。
 仲良しそうな彼らが呪いをかけるとは考えにくいので、似て非なる魔術的儀式なのだろう。

(人間もそんなことするんだなあ)

 感慨深く思いながら、魔族はじっと二人を見守った。好奇心旺盛な彼にとって、人間の文化は興味深いものだった。
 そのうち、ゼンがシウの服の中に手をいれて弄(まさぐ)り始めた。シウが土で汚れないよう、あぐらをかいた膝の上で抱えながら触れている。

「や、ゼンさん……ほんと、ここじゃ、だめ」

 力なく拒むシウの胸をはだけ、ゼンが唇を押し当てる。シウはゼンの頭を抱えて身体を丸めながら、眉を寄せた。
 
(なるほど、そういうやり方をするのか)

 人間、面白いなーなどと思いつつ、魔族はじろじろ見た。魔獣の森の奥に引っ込んで数百年。なかなか生で見る機会は少ない。
 ゼンはシウを背中から抱きすくめると、彼女のズボンを脱がし始めた。
 ちょうど目の前にいた魔族とシウの目が合う。

「ゼンさん、せめて向こう向かせて。って、聞いてる!?」

 シウはゼンの肩をバシバシ叩いているが、ゼンは夢中なのか聞こえている素振りがない。後ろから、シウの頬にキスしながら、自身の股間のものを取り出してシウに押し当てた。無理矢理開いた足の間に、強引に埋めていく。

「やぁっ……やだ、お願い、見ないで……んんっ」

 今まで、まるっとジロジロ見ていた魔族は、涙ながらのシウに言われて、あれ?と思った。

(そういえば、この二人、あんまり魔力ないな)

 シウは魔力ゼロだ。ゼンは、身体は魔族に近い割に、魔力自体はほぼ無い。人間でも魔力を持つものはいるが、この二人は違う。魔力がなければ魔術は使えない。魔術的儀式もできない。
 
 もしかしなくても、これは、魔術的儀式ではない。
 
 ここに至り、ようやく魔族は気づいた。今までガン見していたのは一体なんだったのか、全くわかってなかったことに。

「これ、もしかして、俺が見てちゃだめなやつ?」
「だめ、やっ……あっ……だめ、みない、で……」

 喘ぎ声の合間に、ゆっくり揺さぶられながら、シウが答える。腰を片手でゼンに押さえられながら、もう片手でおっぱいを揉まれている。月明かりの中でも、二人が繋がっている場所がよく見えた。
 
 いろいろと、勘違いしていたらしい。
 魔族はさらに、おそるおそる切り出した。

「ちなみに、これは、何してるか聞いてもいい?」

 今頃すぎる問いかけである。
 かなり早い時期から、ボタンをかけ間違えていたようだ。

「ええっと、……あんっ……ゼンさん、止まっ……やっ」

 少しずつ激しく揺さぶられながら、シウは荒く息を吐きながら、答える。

「愛を、たしかめあってる、かんじ、です」
「な…… なるほどー?」

 想定とまったく違う答えが帰ってきて、魔族は狼狽えた。ちらりと、自分の翼を見る。たしかに、魔族の間でも愛を確かめあう行為はある。そして、人に見せるものではない。

 しかし、これはそれとも少し違う気がした。

 魔族は記憶と知識を掘り起こした。
 二百年以上昔、人の地をうろついたときに得た知識を。
 当時の人間の知り合いに、いろいろ教えてもらったことを。
 ひとつ、思い当たる知識の掘り起こしに成功し、ぽむっと手を打った。

「人間との繁殖行為か! まともに見るのは初めてだな」

 改めてじっくり観察してみる。
 今では滅多に無いが、かつて人の地で同胞が人間と乱交パーティーやっている現場に踏み込んで、その場で解散させたことが何度かある。その時の雰囲気に目の前の光景はよく似ていた。
 疑問が解けてちょっとスッキリした魔族だった。
 
「なるほど、ゼンは身体系のやつに近いんだな」
「身体……系?」
「うん、俺たちはいくつか系統があってね。ゼンみたいなタイプは身体に関する欲望が好物のタイプ。そうか、これの影響を、俺はさっきもろに受けてたのか」
「やだっ、ゼンさん、やあっ」

 魔族があれこれ説明してくれるが、シウはそれどころではない。
 服をほとんどはぎ取られたシウは、後ろからゼンに両足をすくい上げられ、大きく足を左右に開く。今まで、多少なりとも服で隠れていたのが、月光の下に晒された。足を閉じようと身をよじるも、強い力で固定されて動けない。
 魔族が、おっと、みたいな感じで、ちょっと顔を赤らめて口に手を当てつつ見てくるから、シウは余計恥ずかしかった。
 
「ほんと、あっち行ってて」
「ちなみに、これきつそうだけど、痛いの?」

 シウは、ふるふると首を振る。

「気持ちよくて、おかしく、なっちゃいそう」
「へえ。人間の女の子にとっても、悪いもんじゃないんだな」

 魔族はそれ以上は聞かずに、「見張っとくね」と言い残し、すっとその場で掻き消えた。

(やっと、行ってくれたー!)

 シウはもう本当にどうかなりそうだった。
 会ったばかりの、しかも魔族に、恥ずかしいところを全部見られまくるなんて。根掘り葉掘り聞かれるし、無言でじっと見てくるし。あの魔族は、造作が整っていて眼光も鋭いから、見られる圧がすごい。肌がチリチリしそうだった。そんなのが、あられもない姿を見まくってくるのだ。
 おかげで、妙に敏感になってしまって、見られながら何度か達してしまった。

「もう! ゼンさん! ほんと、こんなの、だめ!」

 声をかけるものの、ゼンは完全に暴走状態だ。さっきから、ひたすら痛いほどに奥を抉ってくる。抉られるたびに、シウは快楽で背筋がぞくぞくした。

「ん……シウ、もっと」
 
 シウにキスしながら、ゼンは羽織っていたマントを外すと地面に引いた。そこにシウを仰向けにして押し倒し、上から彼女を貫く。シウは厚い胸板を手で押し返してみるものの、なんの抵抗にもならない。
 今までよりも激しい刺激に、シウの中でまた盛大に快楽が弾ける。無意識に身体の奥を締めつけると、それに反応してさらにきつく抱きしめられた。

「やっ、そんな、本格的に……んっ」

 一応、どこかに行ってくれたとはいえ、さっきの魔族はまだそのへんにいるのだ。しかも、見張りしててくれてるはずだ。
 じっくり時間をかけて楽しんでいる場合では、まったくない。少しだけという話ではなかったのか。

「ゼンさん、もうだめっ、やあっ」

 もがくシウをゼンは抱え込む。騒ぐ口を、唇で封じて、欲望に任せてシウの奥を求める。あたりに激しい水をうつ音が響く。たまらずシウが仰け反るタイミングに合わせて、ゼンは真奥で欲望を放った。

「ん、シウ、シウ」

 夢中でシウの名を呼びながら腰を動かせば、彼女のなかで再び固く熱を持つ。なんとか逃れようとシウは身をよじるも、四つん這いの状態であえなく組み伏せられる。抜けかけた男根が、また奥深くまではいり、今までと違う刺激に、シウは身体に力が入らない。
 押しつぶされそうなほど、後ろから深く嵌め込まれ、たまらずシウの背筋が反る。半ば持ち上げるように、後ろから腰を掴まれ、激しく身体を揺すられた。
 静かな森の中に、身体がぶつかる音と、シウの嬌声が響く。土の匂いと、冷たい夜霧がシウの背徳感を煽る。

「あんっ、だめ、ゼンさん、もう離して」

 シウの肩に、肩甲骨に、赤いあとを刻みながら、ゼンは強く腰を打ちつけた。奥をぐりぐりと刺激した後、二の腕を掴んで衝動のままに、シウを揺さぶる。

 その後、何度シウがだめだと訴えても、ゼンはなかなか離してくれなかった。
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