異世界ハードモード!〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います!〜

ちょっと黒い筆箱

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第2章 決戦“目無しの魔獣”

第30話 マツル、野郎にしかモテないってよ①

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 ギルド舎に戻ってきた一同は、クエストカウンターの横に併設されている酒場”ヨージ“にて祝勝会を行っているのだった。

「――えー、と言う訳でみんな!! お疲れ様でした!! 今日は僕の奢りだから、好きなだけ楽しんでくれ!! 乾杯!!」

「「「乾杯ァーイ!!!!」」」

ギルドマスターの号令と共に皆が酒を酌み交わす。酒の他にも様々な種類の料理が並び、見渡す限り笑顔、笑顔、笑顔だ!

「やっぱり兄ちゃんはすげぇや! 俺達まで吹っ飛んじまうかと思ったぜ!!」

 酒樽を片手にメツセイが肩を組んでくる。

「酒クサッ!! 開始数分でもう酔ってる!」

「バッキャロウ......! まだ2樽半しか飲んでねぇやい!」

 2樽と言うと、大体40L位だろうか? 
ドワーフってこんなにお酒に強いのか......

「マルル~......」

 俺の膝の上に寝転がってきたのはホノラだった。
 なんか声がフワフワして呂律が回ってないし顔トロトロじゃね?

「お前まさか未成年の身で酒を――!」

「いや、嬢ちゃんは酒は飲んでないぞ?   どうしても飲みたいって聞かないもんだからオレンジュースを酒と言って渡したらこうなった」

 メツセイはホノラがこうなった理由を樽3本目を飲み干しながら教えてくれた。
 オレンジジュースと言っても、俺が元の世界で慣れ親しんだオレンジジュースではなく、薄く黄色に発光している飲み物だ。味は元の世界のオレンジジュースと全く変わらない。

「マルルもたりかりすろかっらけろわらひのくろろにいりゃんがいれらもっろかんらんにかれらのに~」

 うん。何言ってるかわからんからそっとしておこう。
 因みに俺もオレンジ(のような果実を使った)ジュースだ。酒の美味さがイマイチ分からんからな。

◇◇◇◇


 みんなが良い感じに酔ってきた所で、俺はある重大な事に気が付いた。

「魔法を使えた! オマケにこの国の危機を救った今なら女の子にモッテモテのウッハウハなのでは!?」

 俺が唐突に立ち上がったせいで肩を組んでいたメツセイは酒樽ごと一回転し、膝の上で寝ていたホノラは床に転がって行った。

「――凄いよね~」

「ね~ホントに! 好きになっちゃいそう」

 俺達から少し離れたテーブルで女性冒険者達が集まって何かを褒める話している!!!!
 これは!? まじにあるのでは?
 早速行ってみるしかあるまい!

「――なんの話してる――――」

「この白い毛もふもふでフワフワ~すごーい!」

「お目目もくりくりでかわいい~好きになっちゃいそう」

「ワンちゃん名前なんて言うの~?」

「我は名も無き只の閃狼よ......えぇ背中にくっつくでない!!」

 俺が連れて来た狼に女性冒険者達は集まっていた。
 背中、お腹、顔。ありとあらゆる所をモフっている。
 狼も嫌がっているように見えてしっかりと尻尾をぶん回している辺り、めちゃくちゃ嬉しそうだ。

「兄ちゃん......漢の魅力ってぇのは、完璧には女に伝わらないモンなのよ......」

 状況を察したメツセイが俺の背中をポンと叩く。なんだろう......すっごい涙が出そうだ。

「ハッ!!!! 兄貴、メツセイ殿の言う通りだ! 俺も先程子猫ちゃん達に話し掛けたら、俺のチャームポイントの下まつ毛を全部抜かれてしまった!」

 パンナが話に割り込んで来た。そういえばいつの間に俺の事”兄貴“って呼んだりし始めたんだ? 今更遅い改心って奴か。

「ハッ!!!! だが俺は兄貴の事を尊敬してるぜ?」

 パンナが渾身のキメ顔で俺の顎をクイッとする。

「キモ死ね」

「パンナ......お前は、今は亡きその下まつ毛と言動と性格をなんとかしたら普通にモテると思うんだがなぁ......」

「全部では無いか!! ハッ!!!!」

 この一言で俺とメツセイとパンナは大爆笑をするのだった。
 酒の気でこっちも酔っているような気分になりつつ、宴はまだまだ続く......
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