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第4章 英雄プレリュード

第45話 どうやらあなたが原因のようで③

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「オーバーサイトマスター、サラバンドギルドマスターと冒険者マツルを連れてきました。失礼します」

 少し緊張したような顔をちょび髭もし始めた。見てるとこっちまで緊張する......

 真っ黒のドアをちょび髭が軽くノックしゆっくりと開ける。
 一体どんなすごい人オーラを纏った人物が出てくるんだ――――

「ああ、良く来たね二人とも......まぁ楽にしてくれ」

 おぉ? 背もたれがこちらを向いているので体が見えない。でも声の感じからして幼いぞ? でもギルドマスターはババアって......

「あの......あなたがオーバーサイトマスター、ですか?」

 俺が問いかけたその時! 椅子から人間が跳び上がった!! 
 俺達の前のテーブルに華麗に着地したのは、ババアとは程遠い幼女だった。

「よくぞ聞いてくれたねマツル君!! 私の名前は! “フリージア・サンスプライト”! 冒険者ギルドの創始者にていっちばん偉い冒険者協会本部統括オーバーサイトマスターなのだ!!」

 フロア全体に幼女の高笑いが響く。
 つまり......この人はアレなのか?

「ロリババ――――」

「おっとマツル君それ以上はいけない!!」

 大慌てで俺の口を塞ぐギルドマスター。あぁ、フリージアさんの前では厳禁なのね。把握。

「あのババア......じゃなくてオーバーサイトマスター殿はユニークスキル【不変】を持っているんだ!! だから見た目が小さい頃のまま変わってないの!!」

「全部聞こえちゃったりしてるわよー“ロージー”」

「ロージー? 誰それ?」

 フリージアさんに睨みつけられて震え上がっているギルドマスターが手を挙げる。
 え、ギルドマスターって名前ロージーって言うの!? 初耳なんですけど!!

「――あー、今日はロージーの話をしに来たんじゃないのよ~? はい! さっさと本題に入っちゃうわよ~今日はなんで呼ばれたかの確認だけだから、弁明は明日の裁判で聞くわね」

 ここでは弁解の余地無しかよ!! てかそれ以上に明日裁判って......どんな特急日程だよ!

――――

 フリージアさん曰く、今回俺達が問われている罪は、先のサラバンド防衛戦にて、目無しの魔獣の大群、総数約100万匹に対して国際条約で禁止されている超魔導兵器を使用した疑いがあるのだと。

 言うまでもなくその100万匹を消し飛ばしたのは俺(のユニークスキル)なので、そんな兵器一切使っていと報告すれば済んだ話なのだが......

 どうやらウチのギルドマスター、ロージーがそこの所を詳しく報告しなかった為に国際評議会で槍玉に挙げられてしまったらしい。

「サラバンド王国は小国なら軽々と消滅させる兵器を所持している」

 と......正直俺は今回何も悪くないと思うのだが、原因を作ってしまったと言う時点で頭が痛い......

 おいロージー、なんでお前は「自分何も知らないですよ?」みたいな顔で頷いれられるんだ? この騒動9割くらいお前のせいだぞ?

「――それで......俺達どうなるんですか?」

「そうだねぇ~。『そんな超魔導兵器使ってないよ~! 私のスキルだよ~』って事を証明する為に裁判が始まったらぶっぱなして見るとか?」

「却下却下!! そんな事したら周りの人全員死んじゃうでしょうが!! 大体、あれは俺の全魔力を使って放った魔法です。もう一度なんて無理ですよ......」

「じゃあ国際条約違反でロージー諸共死刑だね~」

 しっししししし死刑!?!?!? 

「死刑ってそりゃどういう事ですかァ!?」

「あ、方法? 多分大丈夫だよ~? 死の魔法で苦しむこと無くポックリ――――」

「なんで既にポックリな方向で話進めとんねんババアおい!!」

 俺に続きさっきまで素知らぬ顔を貫いていたロージーも切れた。やっぱり死ぬのは嫌らしい。俺だってやだもん。

「だからその辺は明日頑張って弁明してね!! 死にたくないなら死ぬ気で!」

 何を無茶苦茶言ってんだこの見た目幼女......頭のネジぶっ飛んでんじゃねぇの?

「マツル君は今日の宿泊施設に戻っていいよ。お疲れ様!――――――――ロージーは私の事ババアって言った件でちょっと話があるから黙って座ってろよ?」

......アイツ、死んだな。

――――

「ちょび髭、俺が泊まるのってどこなんだ?」

 ずっと部屋の外で直立不動だったちょび髭。汗一つかいてないな......

「ああ、オーバーサイトマスターが特別に用意してくださった。この国の中心に位置するノヴァーリス城の――――」

 まさか客室!? やっぱり俺達が罪人って嘘なんじゃねぇかよ~!

「――地下牢だ」

「ふぇい?」

◇◇◇◇

 ガチャァン!! と漫画でしか見た事ないバカでかい南京錠を掛けられ、絶対に逃げ出せないように結界魔法を施され、陽の光が僅かしか当たらない地下牢へ幽閉されてしまった。

「出せよぉぉぉぉ!! 俺無実なんだよぉぉぉぉ!! こんな......こんなのあんまりだァァァァ!」

 誰にもこの叫びは届かず虚しく反響するのみ。

 暫くして、顔をねりけしのようにしたロージーも俺と同じ牢にぶち込まれた。

 こうして、俺......と全ての元凶ロージーの命日が、明日に迫ったのである。

――――

 ここで話は少し別の視点、少し前へ遡る。
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