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ひとりの男
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「夜景ってさ、いつ撮ってんの? オレと会ってない日とか?」
「うん。バイトの後に、帰る前に寄り道してる。恭兄を送った後に撮りに行ったこともあるよ。あんまり遅くまではできないけど」
「そうだったんだ」
知らない朝陽がまだまだたくさんいるらしい。これからももっとたくさん知りたい、応援したい、とそう思う。
叶うなら、今よりもっと近くで。
「なあ朝陽、オレ、お前のこと応援したい」
「ありがとう」
「だから、さ。これからもいつでも泊まりに来ていいから。終電気にしないで撮りたい時とか、あったりしない? なんならここに住んでもいいし。狭いけど」
カメラに触れたことは一度もないから、アドバイスなんてひとつもできない。それでも朝陽の背中を押す兄でありたい。だが、自分にできることと言えば、そんなことしか思いつかなかった。
「え……え! いいの!?」
「もちろん」
今まで付き合った子たちから、同棲を迫られたことは幾度かあった。相手の望むように、とばかり考えてきた恭生でも、それだけは頷けなかったのだが。
気心知れた幼なじみだからか、はたまた朝陽だからか。そうしたいとすんなり思うことができた。
とは言え、遊んだ帰りに立ち寄ることさえ拒まれてきたのだ。これも断られてしまうだろう、そう思ったのだが。
朝陽は予想外に喜んでくれた。勢いよく体を起こし、目を輝かせ、それからまたしみじみと同じ姿勢に戻る。
「どうしよ。すげー嬉しい。ありがとう恭兄」
「どういたしまして。役に立てるならオレも嬉しいよ」
それにしても、だ。偶然見られてしまったとは言え、先ほど会った女の子は朝陽のカメラのことを知っていたのか、とまた嫉妬心が顔を出す。燻る想いは、拗ねたような口をきいてしまう。
「でもなー、ちょっとショックかも」
「ショック?」
「オレんちに寄ってくれないの、いつも寂しくてさ。その後撮りに行ってたんだな。まだ時間あったんなら、オレも一緒に行きたかった」
「それは……さっきも言ったけど、カメラのこと言いづらかったから」
「うん。だよな、分かってる。分かってるけど言っちゃった。ごめん」
「恭兄、寂しかったんだ」
「……うん。帰ってほしくなかった」
「…………」
「……朝陽?」
再び起き上がった朝陽が、ゆっくりと近づいてくる。動けないでいる恭生の両脇に手をついて、ベッドを背に囲われてしまう。
「今日の分のハグ、していい?」
「え? あー、えっと……」
好きだと自覚してしまった恭生には、今までしてきたハグも大きく意味が変わってしまう。先ほど玄関で擦り寄られた時はどうにか誤魔化せたが、今は逃げ場もない。かと言って、朝陽を拒否することもしたくない。
躊躇っていると、じりじりと距離を詰め、跨れてしまった。見下ろしてくる真剣な顔に、震えた胸がくずれた声をこぼす。
「恭兄が寄ってくかって誘ってくれる度、俺も本当は来たかった」
「朝陽……」
「でも、帰りたくなくなっちゃうから我慢してた。恭兄」
「あ」
体にゆっくりと腕が回り、首元に顔を埋められる。朝陽に触れられているところ全部がぴりぴりと痺れるみたいで、思わずしがみついた。
早鐘を打つ心臓も上がる呼吸も、手に負えない。
「待っ、て、やばい、朝陽」
「……恭兄? 顔赤くなってる」
「ばか、見んな」
「やだ、見たい」
至近距離に朝陽の顔がある。逸らしても追われて、頬に手が宛がわれる。火照っている自分の頬に負けないくらい、朝陽の手も熱い。
「も、無理だって。恥ずかしい、から」
見つめられることに耐えられず、朝陽の肩に顔を埋める。密着することになるが、強い光を一心に注がれるよりは幾分かマシだ。
だがこんな態度を取っては、好きだとバレてしまう。
こんな風に求められては、好かれているのではと期待してしまう。
強くなる抱擁に、熱い吐息が隠せない。
「うん。バイトの後に、帰る前に寄り道してる。恭兄を送った後に撮りに行ったこともあるよ。あんまり遅くまではできないけど」
「そうだったんだ」
知らない朝陽がまだまだたくさんいるらしい。これからももっとたくさん知りたい、応援したい、とそう思う。
叶うなら、今よりもっと近くで。
「なあ朝陽、オレ、お前のこと応援したい」
「ありがとう」
「だから、さ。これからもいつでも泊まりに来ていいから。終電気にしないで撮りたい時とか、あったりしない? なんならここに住んでもいいし。狭いけど」
カメラに触れたことは一度もないから、アドバイスなんてひとつもできない。それでも朝陽の背中を押す兄でありたい。だが、自分にできることと言えば、そんなことしか思いつかなかった。
「え……え! いいの!?」
「もちろん」
今まで付き合った子たちから、同棲を迫られたことは幾度かあった。相手の望むように、とばかり考えてきた恭生でも、それだけは頷けなかったのだが。
気心知れた幼なじみだからか、はたまた朝陽だからか。そうしたいとすんなり思うことができた。
とは言え、遊んだ帰りに立ち寄ることさえ拒まれてきたのだ。これも断られてしまうだろう、そう思ったのだが。
朝陽は予想外に喜んでくれた。勢いよく体を起こし、目を輝かせ、それからまたしみじみと同じ姿勢に戻る。
「どうしよ。すげー嬉しい。ありがとう恭兄」
「どういたしまして。役に立てるならオレも嬉しいよ」
それにしても、だ。偶然見られてしまったとは言え、先ほど会った女の子は朝陽のカメラのことを知っていたのか、とまた嫉妬心が顔を出す。燻る想いは、拗ねたような口をきいてしまう。
「でもなー、ちょっとショックかも」
「ショック?」
「オレんちに寄ってくれないの、いつも寂しくてさ。その後撮りに行ってたんだな。まだ時間あったんなら、オレも一緒に行きたかった」
「それは……さっきも言ったけど、カメラのこと言いづらかったから」
「うん。だよな、分かってる。分かってるけど言っちゃった。ごめん」
「恭兄、寂しかったんだ」
「……うん。帰ってほしくなかった」
「…………」
「……朝陽?」
再び起き上がった朝陽が、ゆっくりと近づいてくる。動けないでいる恭生の両脇に手をついて、ベッドを背に囲われてしまう。
「今日の分のハグ、していい?」
「え? あー、えっと……」
好きだと自覚してしまった恭生には、今までしてきたハグも大きく意味が変わってしまう。先ほど玄関で擦り寄られた時はどうにか誤魔化せたが、今は逃げ場もない。かと言って、朝陽を拒否することもしたくない。
躊躇っていると、じりじりと距離を詰め、跨れてしまった。見下ろしてくる真剣な顔に、震えた胸がくずれた声をこぼす。
「恭兄が寄ってくかって誘ってくれる度、俺も本当は来たかった」
「朝陽……」
「でも、帰りたくなくなっちゃうから我慢してた。恭兄」
「あ」
体にゆっくりと腕が回り、首元に顔を埋められる。朝陽に触れられているところ全部がぴりぴりと痺れるみたいで、思わずしがみついた。
早鐘を打つ心臓も上がる呼吸も、手に負えない。
「待っ、て、やばい、朝陽」
「……恭兄? 顔赤くなってる」
「ばか、見んな」
「やだ、見たい」
至近距離に朝陽の顔がある。逸らしても追われて、頬に手が宛がわれる。火照っている自分の頬に負けないくらい、朝陽の手も熱い。
「も、無理だって。恥ずかしい、から」
見つめられることに耐えられず、朝陽の肩に顔を埋める。密着することになるが、強い光を一心に注がれるよりは幾分かマシだ。
だがこんな態度を取っては、好きだとバレてしまう。
こんな風に求められては、好かれているのではと期待してしまう。
強くなる抱擁に、熱い吐息が隠せない。
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