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待ち焦がれた二学期がはじまった。推しとクラスメイトになるなんて事態に、どうにか慣れた一学期だったけれど。今は桃真への恋を自覚してしまっていて。また振り出しに戻ったみたいに、いやそれ以上に日々が新鮮だ。
加えて、二学期はイベントも多い。直近だと球技大会があり、その後は体育祭に文化祭と続く。ぼっちだと憂鬱なばかりで昨年は全部欠席したけれど、桃真がいるから今年は楽しみだ。
ただ、ひとつ問題が生まれてしまった。桃真に触れられる度、これまでとは段違いにドキドキしてしまうことだ。
「あっちいなー希色」
「そ、そうだね」
四限の音楽が終わり、教室に戻る道のり。オレの背中には桃真がくっついていて、肩に額を擦りつけられている。桃真のスキンシップは以前からだけど、今日はなんだかいつも以上に距離が近いような。声は上擦ってしまうし、触れられている部分が甘く痛むような心地がする。
「望月にくっついてるから余計暑いんだろ?」
「それな。土屋ー、離れてやれ」
心音が耳元で鳴っているみたいな感覚もして、川合くんと佐々木くんのツッコミがどこか遠くに聞こえる。
「なあ希色、俺離れたほうがいい? うざい?」
「へっ……ううん、平気だよ! 桃真がうざいとか、絶対ないし」
「よかった。ほら、うざくねえって」
「俺らもうざいとは言ってないけど!?」
教室に入ると、クーラーの冷気がいくらか頬を冷ましてくれた。火照った心の中までは、あいにく届かないけれど。
帰りのホームルームで、来月頭にある球技大会の競技を決めることになった。桃真がいるから今年は楽しみ、それは確かなのだけれど――見事にどれもチーム競技で、オレは口角をひくつかせた。見学という選択肢があればいいのに。
「希色はどれにする?」
「できればどれにもしたくない……」
「マジかあ。俺は希色と同じのにしたいんだけどな」
「嬉しいけどでもオレ、本当に全部下手だよ……」
うっかりしたら泣いてしまいそうな目で、そっと隣の桃真を見る。桃真と一緒にできるなら、それはすごく魅力的だ。でもそれと同じくらい、足を引っ張ってしまうことが怖い。体育の時間に練習も入ってくるから、情けない姿をたくさん見せることにもなってしまう。
「別に下手でもいいんだよ。でも希色は気になるんだもんな。うーん、じゃあバスケとかは? 希色にボールが回ってきたら、すぐ俺にパスしていいから」
「そんなに上手くいくかな」
「大丈夫。練習の時にパス練たくさんしようぜ」
「桃真……ありがとう。オレ、桃真とバスケやりたい」
「よし、決まりな」
桃真はどうしてこんなに優しいのだろう。あんなに尻ごみしていたのに、決意できる心をもらってしまった。桃真が掲げてくれた手にハイタッチをしていると、川合くんと佐々木くんがこちらにやってきた。どうやらふたりもバスケにするらしい。
「佐々木バスケ部じゃん。出ていいんだっけ」
「チームにひとりはいていいらしいから、オッケーオッケー」
「望月、一緒に頑張ろうな」
「う……ご迷惑をおかけしないように、それを一生懸命頑張ります」
「あっは、気負いすぎ。大丈夫だからな、楽しめばいいんだから」
他のクラスメイトたちも次々と競技が決まって、先生がじゃあ今日はこれで終わりと告げて去っていく。教室内が一気に賑やかになった時。女子たちの話し声が、突然際立って聞こえてきた。
「ねえそう言えばさ、昨日の日比谷翠のインスタ! 見た!?」
「あ! 見た見た! 表紙のヤツでしょ!?」
オレは思わず、びくりと肩を跳ね上げる。
女子たちが話している“日比谷翠の表紙のヤツ”とはつまり、M's modeのことだ。KEYであるオレも共に撮影した、BLをコンセプトにした表紙。出版社の各SNSで、昨日の夕方に公開された。もちろんオレも、“いいお知らせができそうと先日言っていたのは、このことでした”との文章と共にインスタへ投稿している。
膨大な数の写真の中から選ばれたのは、キスしてしまいそうなくらいに顔を近づけた写真だった。翠くんの首に両手を回しカメラを睨むオレと、オレの顎に手を添えながらカメラを鋭く射抜く翠くん。くびったけな感情と独占欲が現れている、との評価で選ばれたと前田さんが言っていた。
「日比谷翠もよかったけどさ、私はもうひとりの……なんだっけ」
「KEYくん!」
「そうそう! KEYだ! 私あの子初めて見たんだけど、あんなかわいい男いなくない?」
「いないいない、余裕で負けた。でも私はやっぱり、日比谷翠だな~」
「てかイケメン同士のボーイズラブ、最高」
「分かる」
加えて、二学期はイベントも多い。直近だと球技大会があり、その後は体育祭に文化祭と続く。ぼっちだと憂鬱なばかりで昨年は全部欠席したけれど、桃真がいるから今年は楽しみだ。
ただ、ひとつ問題が生まれてしまった。桃真に触れられる度、これまでとは段違いにドキドキしてしまうことだ。
「あっちいなー希色」
「そ、そうだね」
四限の音楽が終わり、教室に戻る道のり。オレの背中には桃真がくっついていて、肩に額を擦りつけられている。桃真のスキンシップは以前からだけど、今日はなんだかいつも以上に距離が近いような。声は上擦ってしまうし、触れられている部分が甘く痛むような心地がする。
「望月にくっついてるから余計暑いんだろ?」
「それな。土屋ー、離れてやれ」
心音が耳元で鳴っているみたいな感覚もして、川合くんと佐々木くんのツッコミがどこか遠くに聞こえる。
「なあ希色、俺離れたほうがいい? うざい?」
「へっ……ううん、平気だよ! 桃真がうざいとか、絶対ないし」
「よかった。ほら、うざくねえって」
「俺らもうざいとは言ってないけど!?」
教室に入ると、クーラーの冷気がいくらか頬を冷ましてくれた。火照った心の中までは、あいにく届かないけれど。
帰りのホームルームで、来月頭にある球技大会の競技を決めることになった。桃真がいるから今年は楽しみ、それは確かなのだけれど――見事にどれもチーム競技で、オレは口角をひくつかせた。見学という選択肢があればいいのに。
「希色はどれにする?」
「できればどれにもしたくない……」
「マジかあ。俺は希色と同じのにしたいんだけどな」
「嬉しいけどでもオレ、本当に全部下手だよ……」
うっかりしたら泣いてしまいそうな目で、そっと隣の桃真を見る。桃真と一緒にできるなら、それはすごく魅力的だ。でもそれと同じくらい、足を引っ張ってしまうことが怖い。体育の時間に練習も入ってくるから、情けない姿をたくさん見せることにもなってしまう。
「別に下手でもいいんだよ。でも希色は気になるんだもんな。うーん、じゃあバスケとかは? 希色にボールが回ってきたら、すぐ俺にパスしていいから」
「そんなに上手くいくかな」
「大丈夫。練習の時にパス練たくさんしようぜ」
「桃真……ありがとう。オレ、桃真とバスケやりたい」
「よし、決まりな」
桃真はどうしてこんなに優しいのだろう。あんなに尻ごみしていたのに、決意できる心をもらってしまった。桃真が掲げてくれた手にハイタッチをしていると、川合くんと佐々木くんがこちらにやってきた。どうやらふたりもバスケにするらしい。
「佐々木バスケ部じゃん。出ていいんだっけ」
「チームにひとりはいていいらしいから、オッケーオッケー」
「望月、一緒に頑張ろうな」
「う……ご迷惑をおかけしないように、それを一生懸命頑張ります」
「あっは、気負いすぎ。大丈夫だからな、楽しめばいいんだから」
他のクラスメイトたちも次々と競技が決まって、先生がじゃあ今日はこれで終わりと告げて去っていく。教室内が一気に賑やかになった時。女子たちの話し声が、突然際立って聞こえてきた。
「ねえそう言えばさ、昨日の日比谷翠のインスタ! 見た!?」
「あ! 見た見た! 表紙のヤツでしょ!?」
オレは思わず、びくりと肩を跳ね上げる。
女子たちが話している“日比谷翠の表紙のヤツ”とはつまり、M's modeのことだ。KEYであるオレも共に撮影した、BLをコンセプトにした表紙。出版社の各SNSで、昨日の夕方に公開された。もちろんオレも、“いいお知らせができそうと先日言っていたのは、このことでした”との文章と共にインスタへ投稿している。
膨大な数の写真の中から選ばれたのは、キスしてしまいそうなくらいに顔を近づけた写真だった。翠くんの首に両手を回しカメラを睨むオレと、オレの顎に手を添えながらカメラを鋭く射抜く翠くん。くびったけな感情と独占欲が現れている、との評価で選ばれたと前田さんが言っていた。
「日比谷翠もよかったけどさ、私はもうひとりの……なんだっけ」
「KEYくん!」
「そうそう! KEYだ! 私あの子初めて見たんだけど、あんなかわいい男いなくない?」
「いないいない、余裕で負けた。でも私はやっぱり、日比谷翠だな~」
「てかイケメン同士のボーイズラブ、最高」
「分かる」
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