【完結】君とカラフル〜推しとクラスメイトになったと思ったらスキンシップ過多でドキドキします〜

星寝むぎ

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共犯者でも、盾にだって

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「桃真……」

 名前を呼ぶと、一心不乱にどこかへと進む桃真がこちらを見た。手首から手のひらへと手が移動してきて、大丈夫だとでも言うようにぎゅっと力がこめられる。それだけで本当にほっとできるから不思議だ。


 廊下をぐんぐん歩いて、階段を上がって。ようやく桃真が足を止めたのは、屋上へ続く扉前の踊り場だった。振り返って、頭をぽんと撫でられる。

「平気か?」
「…………」

 その問いに、オレは頷くことができない。高校在学中にKEYだとバレる想定を、全くしていなかった。隠し通せる自信があったからだ。桃真のおかげでさっきは助かったけれど、なにもなかった振りはできそうにない。

「希色はどうしたい?」

 頭を抱えてうんうんと悩んでいると、桃真がそう尋ねてきた。本当に、どうしたらいいのだろう。この状況をどう収束させるべきか。できることなら隠し通したいけれど。

 そこまで考えて、ふとあることが気になった。今の桃真の言葉には、違和感がある。

「桃真……どうしたい、って、どういう意味?」

 望月希色はKEYなのではないか、との疑いをクラスメイトたちからかけられている。この状況をどうしたいか。そう尋ねてくる桃真はまるで、答えを知っているみたいだ。知っている上で、真実を伝えるか隠し通すかの選択を問われているように感じる。なにも知らないなら、実際はどうなのかと確認したり、朝から災難だったなと励ましたりするのが自然なのではないか。

「あー、それは……」

 まさか、まさか――ロボットになってしまったかのように、ギギギと恐る恐る首をもたげる。そこには眉尻を下げ、そっとくちびるを噛む桃真の顔があった。

「俺は……最初から気づいてた。その……希色がKEYだって。声が、店で聞くKEYのと同じだったから」
「……え?」
「そんなつもりじゃなかったけど、だましてたのと同じだよな。ごめん」
「…………っ」

 クラスメイトから突然、KEYじゃないのかと尋ねられた。それだけじゃなく、桃真はすでにオレの正体に気づいていた――なにを最優先に考えるべきなのだろう。頭が混乱する。

 でもやっぱり、桃真に気づかれていた衝撃は大きい。しかも、最初からだなんて。教室でただただ友だちとして会話していた時も、素知らぬ顔でコーヒーショップで注文をしている時も――桃真の中ではオレとKEYがイコールで繋がっていた、ということになる。恥ずかしすぎる。消えてしまいたい。

「う、うわー……」

 両手で顔を覆い、オレはへなへなとしゃがみこむ。すっかり力が抜けてしまって、そのまま床に尻をつけた。

「ちょ、希色? 大丈夫か?」

 慌てた声でオレを気づかいながら、桃真も腰を下ろした。それから、そっと頭を撫でられる。ああ、桃真はまだそうしてくれるんだ――瞳がじわりと熱を持つ。

「……桃真、怒ってないの?」
「え? 怒る? 俺が?」
「うん。だって、だましてたのはどう見たってオレのほうじゃん」

 桃真はさっきごめんと言ってくれたけど、謝ってもらうことなんかなにもない。それはずっと秘密を作ってきた、オレの台詞だ。友だちになろうと言ってくれて、ずっとそばにいてくれた唯一の人なのに。事実を隠し続けてきた。明かそうと思ったことも、正直なかった。

「だまされてんなって思ったことなんて、1回もないけど?」
「……でも、実際はそうでしょ」
「いや、マジでそんなことない。すぐに気づいたけど、隠してるんだろうなってのがなんとなく分かったから。ほら、希色のほうから店で会ってるって話も出なかったし。だから合わせてただけ」
「そんな……桃真は優しすぎる」
「はは、そんなことないって」
「あるよ」
「うーん、希色がそう言ってくれんなら、そういうことにしとくか」
「うん、そうしてください」
「はは。希色、おいで」

 桃真は足を大きく開いて、膝を抱くオレをその間に収めた。背中を抱かれ、もう片手で髪を撫でられる。今まででいちばん、距離が近い。恥ずかしくて堪らないのに、この優しさを手放したくない。肩に額をすりつけると、更にぎゅっと抱きしめてくれた。
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