【完結】君とカラフル〜推しとクラスメイトになったと思ったらスキンシップ過多でドキドキします〜

星寝むぎ

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共犯者でも、盾にだって

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 落ち着かせようとしてくれているのだろう。心地いいリズムで背中をトントンとたたいてくれる。暗闇にひとり放り投げだされたように心が冷えたから、桃真の体温が奥底まで染み渡る。

「……なんかさ」
「んー?」

 ぼそっと小さくつぶやいた声を、桃真は丁寧に拾ってくれた。そのくらい、すぐそばにいるということだ。それが嬉しくて、甘えたくて、小声のまま続ける。

「クラスでバレかけてること、どうするかちゃんと考えなきゃいけないのにさ」
「うん」
「桃真に知られてた、ってのがすごい、恥ずかしくて……」
「恥ずかしい?」
「うん、だって……コーヒー買いに行ってる時、希色が来たなーって思ってたってことでしょ」
「まあ、そうだな」
「でもオレはバレてるなんて知らなくて、ただの客のフリしてたじゃん……」
「まあな。ああ、そう言えば……友だちになってから初めて希色が来た時、うっかり希色として接しないようにって緊張したな」
「そうなの? あ……たしかに桃真の様子がなんか違う気がして、オレなんかしたかなってちょっと悩んだの覚えてる。本当にオレのせいだったんじゃん……うう、ほんと消えたい……」

 クラスでKEYの話をしたことも、ショップで「店員さんを応援してます」だなんて言ったこともある。KEYのインスタ投稿を楽しみにしていると桃真が言えば更新頻度が上がったし、望まれるままに自撮りもあげるようになった。桃真がペンギンくんを描いてくれたカップを、宝ものだと言ったこともあった。

 桃真にとってそれらは全て、ひとりのオレだったということだ。できることなら自ら穴を掘って、全力で隠れてしまいたい。

「希色がそうなんの、分からなくもないけど。俺はさ、嬉しかったよ」
「へ……嬉しい?」

 意外な桃真の言葉に、オレはそろそろと顔を上げた。どこに喜んでもらえる要素があったのだろう。首を傾げるオレの頬を、桃真が両手で包む。

「だって俺、KEYのファンだし」
「……え?」
「そうじゃなくたって……希色のこと、好きだし」
「ひえっ」

 今日はもう何回、驚いたんだっけ。ぐるぐると混乱する頭に手を突っこんで、さらに引っ掻き回されているみたいだ。

 分かっている、桃真はそんな意味で言っているわけじゃない。友だちとして好きだと言ってくれているんだ。それでも、そのワードは恋するオレの胸を甘く痛めてしまう。

 この動揺を悟られてはいけない。もうひとつの桃真の言葉に意識を移す。KEYのファンだなんて、それこそまさかだ。

「いや、桃真は翠くんのファンじゃん!」
「あ、引っかかるのそっち?」
「レアなペンだって持ってるし、オレと翠くんの表紙見て、妬ける……って、言ってたじゃん。それ聞いてオレ、申し訳なくなって」

 桃真に推されたいと思ってきたから、ファンだと言ってもらえるのは念願だ。でも、翠くんのファンだと重々分かっている。そんなお世辞みたいなこと、言わなくたっていいのに。

 ジトリとした目をつい向ける。すると桃真は、なぜかきょとんとした顔をしていた。

「あー、妬けるってそう取るか。まあ、そりゃそうだよな」
「そう取るかって?」
「それは、俺は日比谷翠は……いや、説明するには複雑なんだよな」
「複雑?」
「……なあ希色、俺も隠してることがある」
「え?」
「秘密なら俺にもある、って前に言ったじゃん? 希色にサッカーボールが当たって、保健室行った時」
「あ……うん。そうだったね」

 あの時のことならよく覚えている。友だちなのに顔を隠していることを謝ったら、桃真は言ってくれた。誰にだって秘密のひとつやふたつある、俺にもあるよ、と。

「そのことだけど……」

 先ほどまでとは打って変わって、桃真が真剣な顔をする。桃真の秘密だなんて見当もつかず、オレはごくりと息を飲む。

「いや、やっぱそれはまた改めて言うわ」
「え!? そんな……すごい気になる」
「だよな。でもさ、さすがにそろそろ教室に戻らなきゃマズくね?」
「あ……」
「だからさ、そっちどうするか決めるのが先かなって。俺の話はちょっと長くなるし」

 そうだった。クラスのみんなに今朝のことを説明しなきゃいけないのだった。重たい現実が帰ってきて、オレはがっくりと項垂れる。

「希色はどうしたい?」

 改めて、桃真がそう尋ねてくる。

「できれば、本当のことは言いたくない。でも……それだとただ隠してた今までとは違って、嘘つくことになるんだよね」

 あんな騒動になったのだ、顔を見せなければ事は収まらないように思える。でもそれはひどく怖い。自分の肩を抱くと、桃真もそこに手を添えてくれた。

「希色が隠し通したいなら、俺も共犯者になるよ。もしも言うなら、希色のことは俺が絶対に守る」
「桃真……」

 桃真の言葉は、どうしてこんなにも心強いのだろう。ひとりじゃ到底できないだろうことも、できる気がしてくる。いや、きっとできる。震え始めた手を桃真が両手で包んでくれた。ひとつの決心に顔を上げる。

「桃真、オレ――」
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